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ある日の任務で

 --見下ろす街並みは壮観だ。

 ジェットブースターを取り付け空を突き進む最中、プラネルはそう感じた。

 

 500m級の超高層ビル群が地平線の果てまで伸びてゆき、沈みゆく太陽に繋がる。

 人類の繁栄を象徴するかのような巨大な都市であるが、建物の中には人は全くいない。


「プラネル。もうすぐ目的地に到着する。これから下降するぞ」


 街を眺めることをやめ、慌てて前方を飛んでいる隊長に通信を入れ、了解の旨を伝える。

 並んで飛んでいる部隊員はよそ見をしていることに気付いたようで、少し笑っている。

 

 これから、僕たちは戦いに行くのに。

 こんな調子じゃだめだなぁ。


 自嘲している間にも作戦を実行する時間が迫っている。

 地平線の奥の方から場違いな建造物が出てきた。

 西洋風の、周りのビルよりも巨大な城である。


 あれこそが憎むべき敵、『異世界人』たちの根城の一つである。

 これから復讐ができると思うと心が高鳴る。

 

 待ってろよ悪の魔法使い達よ、この僕が退治してやる!





「くそ! なんでだよ!!!」


 戦闘開始から1時間も経たないうちにもう負けそうだ。

 

「今、アリゲーター隊と連絡ができなくなった。今、交信ができるのはたった3隊しかない。これは非常に本当にまずい。生きて帰れるのか......ああ、もう嫌だぁぁああ!!??」


「ええ、本当に不利ですね」


 隊長がそろそろダメになりそうだ。

 武器はたんまりとあるのだが、使い切る前に次々と隊員が死んでいる。

 俺たちは奇跡的に防御の薄い場所にたどり着いたおかげで、まだ致命的な事態には至っていないが時間の問題だろう。


「ん、2時の方角に異世界人がいるぞ!」


 チャージ弾は現在3発分しか充電できていない。

 銃は使わないようにしよう。


 隠れていた瓦礫から飛ぶように飛び出し、超振動ナイフを腰から引き抜き接敵する。

 そのままの勢いで敵の胸に差し込もうとするが......


「プロテクト!」


 ちっ、やっぱり弾かれたか。


「忌々しき蛮族どもめ......ファイアボール!」


 くそっ、超高温度の炎が迫ってくる。

 ただの火の玉に見えるが魔術的な力が宿っているのか威力は見た目以上だ。

 

 耐火シールドを展開......成功。

 なんとか間に合った。


「ふぅ.......耐え切ったかこの糞蛮族が!」


 蛮族蛮族うるさいな。

 敵が無駄口を叩いている間に味方からも支援が入った。

 魔術師様は無様に吹き飛んでいった。


「ざまぁねえな、異世界人め!」


 あいつらいっつも見下してくるんだよなぁ。


「喜んでる暇があったら体を動かせ!」

「うっす」


 言われた通りだ。

 さっさと動こう。


 今の隊の人数は4人で突入前の13人から大きく数を減らした。

 これでもマシなんだと言うから今回の戦いの熾烈さが分かると言うものだ。


「他の隊員はかなりが殉職したようだが、それ相応の成果があったようだ。どうやら、本部からの報せによると敵、ポータル付近の魔術師は一掃できたようだ。そして、私たちにポータルの破壊を指令された」

「すごい大役ですね」


 ポータルとは向こうの世界とこちらの世界を繋ぐ装置だ。

 仕組みは現在、急ピッチで調べている。

 まあ、それは俺らの仕事ではない。

 命令通りに壊しに行こう。


 生き残った隊員達と共に城内を駆け回る。

 無駄に広いので移動するだけでも時間がかかる。

 金銀で装飾された扉を蹴り開け、ポータル部屋に突入する。


「っ!? まずい、ポータルを守れ!」


 部屋には5人ほどの魔術師がいた。

 全員、歳は若いようで動きは大したことがない。


「へへっ。こりゃ報告の通りだな。よし、お前ら! 一斉射撃だ!」


 待ってました。

 背中の電力供給装置からチャージライフルを取り出し、一斉に構える。


「構え! てー!!!」


 各々が持ってるライフルが光弾を吐き出す。

 防御呪文を唱えるまもなく、不幸な若輩魔術師達は射抜かれ、地に倒れる。


「制圧完了。後ろにある無駄に豪華なポータルに爆弾仕掛けとくから、帰る準備でもしといてくれよ」

「りょーかい」


 さて、仲間が爆破準備をしている間にさっさとジェットブースターのシステムを起動しよう。

 この飛行装備って機動力はあるんだけれども、他の武器が使えないのが欠点なんだよなぁ。


 ジェットシステムが完全に起動する直前に仲間から設置は完了したから伏せろと警告された。

 

 3、2、1、ドカン。


「よっしゃあ! 完全爆破! お家に帰るぞー!」


 頭を上げるとみるも無残な瓦礫が転がっていた。

 隊長の指示のもと、任務は終了したので帰還する。

 ジェットを点火し、近くにあった大きな窓を勢いで叩き割り、外に向かって飛んでいく。



 帰路の途中、ふと西の方角を見る。

 陽は完全に沈み、夜の帳が世界を覆う。

 光一つない大都会を下に見据えながら、少し感傷的になる。

 

 人が戻ってくるといいな。

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