隔離
コロナウィルスが恐ろしいほどの速さで増殖を続け、世界をいとも軽く我が物にしていく。必要以外は自宅待機を命じられて一ヶ月以上、それがあとどのぐらい続くのか未定。私の世界は自然との接触とヴァーチュアルな世界。あたかもサイエンスフィクションの映画が実現したような。テクノロジーがこんなに発達しなければ、これほどまでに菌が世界を旅することは無かったかもしれない。でもこうしてテクノロジーを何よりも使い、喜んで使っている私は何かに、どこかに繋がっている・・繋がっていられる安心感。
オンラインでミーティング、家族や友達の顔を見られ話がライブでできる。そう出来ない人々も世界には多くいるのだと思いながら・・・菌を移さないではなく、移されない為の隔離。
庭の桜が満開で若葉が目を吹き出し、自然はウィルスフリーでその美しさを保ち続けている。
黒と白と別な色そして静かな空間
隔離される
色の全くない世界の静かな空間
四角い大きな窓枠の中の絵を
熱い湯気の上がるコーヒーカップを手に眺める
ゆっくりと一つ一つの絵の前に立つ
昨日から今日、今日から明日
窓枠に切り取られた絵は生き生きと
静かな空間を色鮮やかに埋めていく
隔離される
壁に掛けてある丸い白い顔をした時計が
飽きもせずにチック・タック、チック・タック
静かな空間を刻む
じっと椅子に座りその音を聞く
私の心臓が同じようにドックン、ドックンと
私を刻む
隔離される
雑音も騒音も消えた
全く一人の世界
かろうじて繋がっているのはインターネット
現実とヴァーチュアルを出たり入ったり
ピタリとしまった窓と扉
鍵は私の手の中でしっかりと握られている
音もなく崩れて行く地球を遠目で見ている
冷たいガラス窓の向こうの春が
たわいもなく笑う娘たちのように
艶やかだでキラキラと光っている
平和とか、春だとか!
指先で触れるガラス窓は冷たい