第1話 夜明け
どうもです、京です。
青春アクションファンタジー的な〜なんて思ったら何かいろいろ詰め込んでましたね(ーー;)
そもそも青春アクションファンタジーってなんだよww
そんな感じで進めますが、興味のある方は読んでください。
春、それは出会いと別れの季節。
先月市内の中学校を卒業してから早1週間。合格した高校の制服やカバンを大事そうに部屋においてから、毎日わくわくして高校生活を楽しみにしていた結果、夜ふかしが過ぎて昼前まで寝てしまう生活が続いていた。
普段しっかり者だと言われていても、やっぱり人間だもの。眠たいときは寝てしまう。
ベッドに横たわるのは1人の少女。
クリーム色の強い金髪の腰まで届くストレートの長い髪に、薄っすらと光を受け取るその瞳は翡翠の色をしていた。小柄で華奢な体は、寝返り1つで崩れてしまうのではないかと思わせる様であった。
「可憐で儚い」などとはよく言われるが、妄想と現実は違うものだ。可憐ではあるが儚くは無い。ただ純粋に睡眠欲が少し強いだけ。
枕元のスマホに手をかけて時刻を確認する。
(今10時21分....結局また昼前まで寝てしまいました)
そう思いながらも、体は中々起きようとしてくれない。
起きなければ、でも体が起きようとしない。眠気もあってか、瞼は段々と落ちてくる。このまま2度寝に入ろうかと思っていると、
バンッ!!!
という音と共に誰かが部屋に入ってきて、勢い良くカーテンを開けた。
眩しい朝日が目に染みる。寝起きのこの状況に唐突な日の光、その光から逃げるようにして布団を被りなおす。
「う~...」と唸りながら布団の中でくるまっていると、ぐいぐいと誰かが布団を引っ張った。
誰がそんなことをしているのかはすぐに分かったが、それでも精一杯抵抗するように布団のぬくもりを堪能する。
が、結局掛布団は剝ぎ取られてしまい、ネグリジェ姿の少女が朝日に照らされて目を覚ます。
「いつまで寝てんだよルル姉!!だらけすぎだぞ!」
その声と窓から差し込む太陽の日差しで一気に覚醒する。
「うぅ....ん、おはよう....ございます....涼君」
彼女の名は愛川琉々奈。
年齢15歳、先月市内の中学校を卒業し、この春から同じく市内の高校に進学予定。
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の3枚看板を持ち、正義感の強いその性格や誰にでも優しく接するなど生き方など、人としての評価も非常に高いというまさに完璧超人。
だが少し天然なのがたまにキズ。ちなみに芸能人などに間違われるほどの容姿をしているが、彼氏がいたことはない。
朝日に照らされた彼女の金髪が、透き通るように輝いた。
「朝ご飯....出来てますか?」
眠たい目を擦りながら、弟に尋ねる。
「あぁ。母さんがルル姉の分も作ってくれたよ」
そう答えるのは愛川涼、14歳。
琉々奈の弟であり、しっかり者としてご近所では有名だ。特筆すべき点があるとしたら.....そう、彼は極度のシスコンなのだ。1に姉、2に姉、3・4が勉強、5に姉というレベルのお姉ちゃん大好きっ子。琉々奈に好意を全開に出しているものの、当の琉々奈はそれに気づいていない。
また、今年で中学3年になるのだが、勉強に関してはさすが琉々奈の弟と言うべきか常に学年トップ。先代である琉々奈の後を継いで、中学校にて現生徒会長を務めるほどの秀才である。
そんな涼の横をふらふらと覚束ない足取りで琉々奈は通り過ぎ、階段を下っていく。
階下に降りると、誰かが丁度外に出ようとしている所だった。
「....あれ?お出かけですか....兄さん」
「あ、おはよう琉々奈。うん、今日は朝からバイト。そんなに遅くはならないから」
今出ていったのが愛川蓮也。
この春から大学2年生となる兄。その知的な容姿や優しい言葉に、中学生や小学生から“先生”と呼ばれている。実際に家庭教師の他に塾講師のバイトを掛け持ちしており、大学も教育学部に通っていることからも将来の夢は教師だろう。
行ってきますという言葉に、眠そうながらも「行ってらっしゃい兄さん」と返す。
洗面所で顔を洗い、目が完全に覚めた琉々奈はリビングへと向かった。
リビングには両親がいて、おはようと挨拶をしたあとに席につく。目の前にあるのはトースト、ベーコンエッグ、コーンポタージュといった定番の朝食。
「いただきます」
の言葉とともに朝食を食べ始める。
すると背後をついてきていた涼が、隣に座って琉々奈の顔を覗き込む。
「涼君?どうしました?」
涼は朝食を既に食べ終えている。これ以上この席にいる必要はないはずだが。
「ルル姉さ、今日何か予定ある?」
「え?無いですけど....」
その言葉に、涼の頬が少し緩んだ気がした。
「じゃあさ、今日ちょっと出かけようぜ」
「涼君がそんなこと言うなんて珍しいですね」
ふふっと笑いながらそんな事を言うと、
「相変わらずお姉ちゃんが大好きね涼は」
「ばっ....そんなことないし!暇ならどこかに出かけたいな~って思っただけだし....!」
「私も涼君のこと好きですよ?家族として」
最後の言葉で撃沈する涼。まあ、琉々奈の言葉は当然と言えば当然だろう。
「予定がないならいいんじゃない?たまには姉弟水入らずで遊んで来たら?」
と母親からの勧めもあったので、
「おし!じゃあ準備終わったら玄関集合な!」
そう言って涼は自分の部屋へと戻って行った。その様子を両親がクスクスと笑いながら眺めていた。
およそ1時間語後、琉々奈と涼の2人は家を出て最寄りの駅へ向かった。
この小津という街は、日本でも有数の大規模都市である。
およそ20年ほど前から第2の東京として作られたこの街は、日本産業の中心都市としての機能を果たしており、観光や日本の物産の聖地として今は名を馳せている都市である。
その大きさは東京とほぼ同等広さがあり、“都市”ではあるもののその実態はほぼ1つの県と言っても過言ではない。
およそ20年ほど前に起こった大災害。日本が東と西に分断され、その空白領域に突如現れた巨大な渦。その場所に建てられた人工島の新都市こそが小津市だ。全20区に分かれた巨大な都市は、現在の首都:東京よりも栄えた都市として日本でも一番有名だ。
愛川家の最寄り駅は小津市第12区の駅。そこから4駅隣の小津市第3区の駅で電車から降りる。目的地は改札を出てから案内板に従って南口から出ると目の前にある大型ショッピングモール。
「ルル姉、何か見たいものとかある?」
ウキウキとした表情で涼が尋ねる。
「私は無いですかね。特に必要なものもありませんし」
じゃあ....と涼が言いかけた。その瞬間ーーー
「ねぇ、こんな噂知ってる?」
女子高生と思われる2人が喫茶店で喋っていた内容。妙にはっきりと頭に響いたその会話。
ショッピングモールなんて騒がしい場所で聞こえるはずも無いのだが、なぜかはっきりと聞こえた上に、なぜか不思議と引かれる言葉だった。
彼女達は確かに言ったのだ。
都市伝説“魔法術師”と。
琉々奈は彼女達の方を見る。だが、彼女達は気にした様子も無くおしゃべりに夢中になっていた。
その時の同じ時間、同じ場所で琉々奈と同じ人を見つめる男が一人。
天宮颯という少年が、同じく彼女達を見つめていた。颯はしばらく女子高生たちを眺めていた。
「?何してる颯。行くぞ」
紫がかった黒髪の少年に言われてハッとなり、「悪い悪い」と言ってその少年の後ろを追いかけた。
その瞬間、ふわっと流れるような金髪と、華やかな香りが鼻をくすぐる。
お互いはお互いの存在に気づくことなく、そのまますれ違って歩を進めて行った。
「?ルル姉?」
「え?あっ、涼君。買い物は終わりましたか?」
「いや、ルル姉がボーっとしてたからなんかあったのかなーって....」
涼は不安そうな目で琉々奈を見る。
「大丈夫ですよ、何でもありません」
そう言って琉々奈は涼と共にモール内を歩いた。
気づけば彼女たちの言葉など、琉々奈の頭の中には残っていなかった。
***
それからまた1週間と数日後。
真新しい制服に身を包んだ女子高生。
今日が琉々奈の通うことになる高校の入学式なのだ。
「琉々奈〜準備できた〜?」
母親からの声に元気に答える。
「はい、大丈夫です。変じゃないですよね?」
母親からOKのサインが出ると、
「行ってきます!」
琉々奈は扉を開け、外へと飛び出したのだった。
ストーリーは細かく切って進めます。
短いと思ったら足しますが、何か容貌があればお伝えください。
バトル要素までは長く無いので、もう1話お付き合い下さい。