↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
原作開始はちょっと勘弁して下さい!  作者: 猫宮蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/29

惜しい! 季節がずれている



 静まり返る室内。とはいっても、静寂に満ちているわけではない。

 何せここはカラオケボックス。隣の部屋か、その近くかわからないが何やら盛り上がっているらしく楽しげな歌声が響き、何なら合いの手なのかイエーィ! なんて声まで聞こえてくる。

 うっわ楽しそ~、うちらもあれくらいノリにノッていたかった。

 そう思ったのは睦月だけではなかったのか、何となく同時に音が聞こえた方に瑛里と伊織、胡桃の視線が向いていた。


 折角カラオケボックスまでやってきてもやってる事は誰がどんな死に方するかの話だ。気分が上がるどころかどこまでも沈んでいく。勿論そんな展開にしてやるつもりはない。それを回避するためにこうして情報を集めているのだ。

 だがしかし、それはそれ。これはこれ。

 折角の夏休みだというのに……という気分はどうしたって存在する。


 だがしかし、それでも。


 一同の視線が胡桃に集まる。


 ふと時刻を確認すると、結構な時間が経過していたが。

 だが、それも胡桃の話を聞けば終わる。


 話を聞いて終わるというよりは、対策を練るとか警戒するとかやるべき事はそれなりにあるしどちらかというと終わりではなく始まりのようなものではあるが。

 それでも、これ以上誰かが死ぬかもしれない話はここで終わるのだ。


 先程少し聞いた話では胡桃の知っている蒼熱のシュピルというゲームはノベルゲームだと言っていた。

 伊織の言っていたゲームのように推理物でもない。

 謎を解けずに死ぬとか犯人に殺されるとかそういう展開はなさそうだと思っていい。


 だが、蒼熱のシュピルでも睦月達は酷い目に遭うらしい。

 流石に年齢制限がつくような過激な展開にはならないと信じたいが、今までが今までだ。油断はしない方がいいだろう。


「さっきノベルゲームって言ってたけど、話の傾向はどういう感じ? 登場人物が酷い目に遭う話なら、ミステリとかサスペンスかなって思ったけど推理要素はないんでしょ? まさか瑛里と同じような感じでホラー?」

「ホラーといえばまぁ、ホラーだと思う」

 こくりと頷いた胡桃に、一同が「そうか……ホラーか……」とばかりな表情を浮かべているが、やや遅れて胡桃は首を少し傾げた。


「大まかにはホラー、だと思ってるんだけど……本当にホラーかな?」

「いや知らんし」


 そもそも睦月達は蒼熱のシュピルというゲームをプレイしたことがないのだ。何せ自分たちの前世にはなかったゲームなので。

 それなのに、人生とは? みたいな哲学的質問をいきなりぶっこんでこられても困る以外の何ものでもない。

 答えが出るかもわからん問答をしていても仕方がないとばかりに蓮が話を促す。ホラーかどうかは聞いてから決める、そういった意志を感じた。



 ――蒼熱のシュピル。

 それは夏休みが始まって数日後、主人公が友人の頼みを受けるところから話が始まる。


 二学期が始まって学校祭が始まった時、部活で出す展示物に関してちょっと今からコツコツとやってるんだけど。その手伝いをしてくれないか?


 主人公は別にその部活とは全く一切関係がないが、その友人には春に転校してきてから色々と助けてもらった事もあり、二つ返事で引き受ける。それが、とんでもない事になるだなんて知る事もなく。


「はい、質問っす。その部活って?」

「新聞部よ」


「え、ねぇそれ何か大体言われなくてもわかっちゃったんだけど……あの、それ七不思議集めるとか?」

「七不思議に限ったわけじゃないけど」

「そう、なの?」


 睦月の前世でも似たようなゲームがあったので、てっきりタイトルこそ違えど同じゲームなのではないかと思ったのだが、どうやら違うらしい。


 とはいえ、落ち着いて考えてみれば相違点は既にいくつか存在する。


 一つ、睦月が知っているゲームでは夏休み前の話のはずだが、こちらは夏休みに入ってからの話であること。

 一つ、睦月が知っているゲームでは主人公が新聞部だが、こちらは新聞部ですらないこと。


 他にも胡桃が話す内容を聞いていると、違う点はちょこちょこ出てきた。


 まず睦月が知っているゲームのタイトルはさておき、主人公は新聞部で、次に出す新聞の特集で七不思議を扱うという事だった。その手の話に詳しくない主人公の為に先輩がそれらの話に詳しい人物を集め、あとは話を聞いてまとめるだけ、というお膳立てをしてもらうものの、いざ当日になってみれば七人集まっているはずのそこには六人しかいない。

 話しているうちに七人目が来るだろう、という事で話を聞き始めるのだが……


 というのが大まかな流れだったはずだ。

 話を聞く順番で話の内容ががらりとかわり、数多くのシナリオとエンディングで何度遊んでも飽きがこないゲームであったし、前世の睦月もそれなりにやりこんだものだ。


 胡桃が話した内容も、多少違いはあれど概ね似たようなもの、であるように睦月には感じられた。


 主人公は新聞部ではなく、友人が新聞部であり、学校祭の展示物として学校の七不思議に限った話だけではなく、都市伝説や地域に存在する昔話を集めるという事になっていたらしい。

 話を集めるのはその友人だけではなく他の部員もするために、手分けして行われていたのだが、いざ友人がいくつかの話を集めるためにと先輩から呼び出されていた有志の者との集まりの前日、祖母が倒れ亡くなってしまう。急な訃報ではあったが、有志たちに次の機会に、とは言えない状況でもありやむなく主人公にヘルプがきたというのが蒼熱のシュピルでのオープニングである。


 ちなみに何故他の日だとダメなのかといえば、一人は家族旅行で長期間戻ってこないし、一人は部活の合宿があるため、一人は……と、まぁ、それぞれに事情があり、空いている日がその日しかなかった、というだけの話ではあるものの、主人公が駆り出されるしかない状況としてはまぁ、割と現実的に見えない事もないのではなかろうか。


 これがもっと専門的な知識や技術が必要な事柄であれば主人公に話が回って来る事もなかっただろう。けれども、話を聞いてまとめておくだけであれば主人公でもどうにかなりそうだと思える。


 他の新聞部の者も手分けしてあちこちで情報集めをしているため、同じ部員に助けてもらうのも厳しいという流れにもっていっているあたり、絶対に主人公を巻き込もうとする意志すら感じられる。


 そしてその有志であるのが、睦月達五名であった。


 本来は六名呼んでいたはずが、睦月達しかいないためとりあえず先に彼女らの話を聞く事にした主人公。

 話す順番で変わるシナリオ。

 ここら辺は睦月の知っているゲームの展開とほぼ同じである。


 ただ、睦月が知っているゲームでは七人目は基本的に滅多にこなかったはずではあったが、蒼熱のシュピルではちゃんと六人目が来るらしい。


「話の順番で内容が変わったりするから、流石に全部の内容をここで言えって言われると無理なんだけど。だって全部のシナリオ覚えてるわけじゃないし。六人目の話が終わればエンディングになるんだけど、その前の話でも選択肢次第でバッドエンドっぽいものになったりもするのよね」

「聞けば聞く程私の前世でも似たゲームを思い出すなぁ。あっちは七不思議集めだから基本的に七話目が終わればエンディングなんだけど」

「そう? それじゃある程度対処法とか似てる部分あるかもね」

「う、う~ん、どうだろ……?

 え、だって私の知ってるそのゲームだと場合によっては初っ端から主人公殺されたりするんだけど。最終話で死ぬ回数の方がダントツで多いけどさ。

 ……っていうか、不思議な話やら七不思議だの都市伝説だの地域に根付いた昔話だの、節操なく集める感じだけど、このメンバーで一体どんな話が飛び出るの?

 そんでもって何があって主人公君殺そうとしちゃったりするの? ってか私たちも酷い目に遭うんでしょ? どういう展開で?」


 確かに睦月が知っているゲームでもよく死ぬのは主人公だが、それ以外の話をしてくれる誰かが死ぬ展開もあるにはあった。死ぬっていうか主人公が殺す事もあったけれど。

 けれども、あのゲームは睦月の中ではもう何かそういうもの、として認識してしまっているため別段おかしな事ではない。むしろ殺そうとしない語り部とか殺意低いよどうしたのと言いたくなるレベルだ。


 だが、胡桃が言う蒼熱のシュピルでは語り部としての存在は睦月達である。

 ……何とはなしに睦月は改めて視線を瑛里、伊織、蓮、胡桃へと順々に巡らせてみた。


 ………………到底、怖い話が出てくるようには思えない。

 そりゃあ、先程散々転生先は前世で知ってるこのゲームの世界じゃないかな、だとするとこんなバッドエンド迎えるよ。なんていう話をしていたけれど。それぞれお互いの死にざまとか知りたくなかったけれど。


 しかしそれとは別に、という意味で、睦月は自分を含めてこの場にいる五名が学校の七不思議程度ならともかく、都市伝説だの何かとりあえずそういった系統の話をするとなると違和感しかない。


「いや、ホントに。私含めてこの場の皆、どういう話したの?」

 そもそも睦月たちが通っている神薙高等学校、七不思議らしい話すらない。

 その手のオカルトが最初に爆発的なブームを起こすのは小学校であり、第二次オカルトブームがくるのは小学校の高学年か、ちょっと遅れて中学生までだ。高校に入る頃にはオカルトにどっぷりハマった人以外はそもそも第三次ブームがくるかも危うい。

 高校でその手の話題が出るとするならば、小中学校が別の人とうちらの学校こういう話あったんだけどさー、みたいな流れにでもならない限り話す事もないだろう。その話題だって余程変わった話題でもなければ、わざわざそういう流れになる事もないはずだ。


「どんな話って言われても……ゲームだと皆結構話題豊富だったのよね。……話す順番にもよるけど、何か一人一話はどっかでマニアックな話入れるノルマでもあったのかっていうくらいに……

 かと思えば別の順番だとお前それ本気で言ってる? って言いたくなるくらいふざけた話もあったし」


 胡桃は述べる。至極真面目に。

 確かに怖い話はあったけど、全体的に見ると怖い話よりも変な話の方が多かった気がする、と。

 だからこそ、このゲームをホラーと呼んでいいのかわからない、と。


 そう言われたところで、睦月達に何が言えたのかと問われれば……とりあえず曖昧に相槌を打つくらいが限界であったようだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。