表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/379

3-1「離陸」

プロットはできてるんですがうまく文章化できないので、今後ちょっと更新ペースを落とします


よろしくお願いします

3-1「離陸」


 僕がレイチェル中尉から罰走を言い渡され、倒れるまで走らされた、その翌日。


 僕らが訓練に励むフィエリテ近郊の飛行場、何の飾り気も無く「フィエリテ第2飛行場」と呼ばれている場所の格納庫の前。駐機場となっている場所に、5機の飛行機が引き出され、綺麗に一列に並べられていた。


 その内の4機は、僕らがお世話になっている高等練習機、「エメロード」だ。単発複葉複座の飛行機で、空冷星形14気筒のエンジン、900馬力以上を発揮する「カモミ」シリーズを装着し、3枚のブレードを持つプロペラを備えている。

 それらは、練習機であるため、王立空軍の塗装規定に従って橙色に塗られている。機首上面の、エンジンカウルからキャノピーにかけては防眩のために黒で塗り分けられ、下翼の下面、上翼の上面、そして胴体の左右に国籍識別のための国籍章、4等分に区切った区画を緑と白で塗り分けたカイトシールドの紋章、「王国の盾」が描かれている。垂直尾翼には、機体の製造番号順に341、342、343、344という番号が白で表示され、僕らの所属する組織である第1航空教導連隊の部隊章である、若鷲が描かれている。


 残る1機は、本日、これから行う飛行訓練の教官役、レイチェル中尉の乗機となるものだ。

 現在、王立空軍の主力戦闘機として使用されているもので、単発単葉単座の戦闘機だった。


 その名を、「エメロードⅡ」という。

 というのは、その機体は、複葉機であるエメロードの改良型、というより、再設計したものだからだ。

 1000馬力以上を発揮するようになったカモミシリーズの改良型エンジンを装着し、原形となったエメロードと同じく3枚ブレードのプロペラを備えている。エンジンの強化と、単葉化したおかげでその最大速度は毎時500キロメートル以上を発揮し、機首に2丁の7.7ミリ機関銃と、主翼に12.7ミリ機関砲を両舷に1丁ずつの計2丁搭載している。

 現在、実戦部隊ではさらにエンジンの出力が強化された改良型(エメロードⅡB)が配備されて運用されているが、レイチェル中尉の乗機はその初期生産型(エメロードⅡA)だ。


 王立空軍の塗装規定に従い、王国北部地域に配備される軍用機として、上面を、灰緑の下地に緑をまだらがけにした迷彩で、下面を明るい灰色で塗られている。機首の上面、エンジンカウルからキャノピーにかけては、防眩のため黒で塗り分けられている。主翼の上面と下面、胴体の左右に国籍章である王国の盾が描かれ、垂直尾翼には機体製造番号の272が白で描かれ、第1航空教導連隊の教官機であることを示す鷲の紋章が描かれている。

 練習機と大きく異なるのは、主翼の両端に、白と黒のストライプ柄が描かれていることだった。これは、機体の大きさを錯覚させることを目的に施されている迷彩で、白と黒のストライプ柄であることだけが決められており、その本数や線の幅はその都度適当に塗るという、堅苦しい軍隊組織にしてはちょっとおかしな規定の迷彩になっている。


「ぜーいーんッ! せいれーつっ!! 」


 レイチェル中尉の号令に従い、僕らは素早く一列に並び、直立不動の体勢を取った。

 中尉を正面に、右から、ジャック、アビゲイル、ライカ、僕の順番だ。

 僕らはパイロット用の装備一式に身を包み、背中には小さく折りたたまれたパラシュートを背負っている。

 中尉の背後では、整然と並べられた飛行機たちが、そのキャノピーのガラスで朝日を反射して輝いていた。


「これより、戦闘空中哨戒任務を想定した訓練飛行を実施する。ジャック! 」

「はっ! 」


 中尉に鋭く名前を呼ばれたジャックが、一歩前に進み出、声を張り上げる。


「飛行訓練は、0820時に離陸、空中集合の後、進路を0に取り、巡航速度で高度3000を4機編隊にて、戦闘空中哨戒を想定した飛行訓練を実施、演習空域に到達後0910時より空戦演習を実施します! 演習完了、編隊再終結後、進路を180に取り、巡航速度で高度3000を4機編隊にて飛行、当フィエリテ第2飛行場に帰還、着陸します! 着陸予定は1030! 本日の雲量は3、風速は微風、風向は南西でありまぁす! 」

「ヨォシ! 下がってヨォシッ! 」


 中尉は、ジャックの返答に満足そうに頷いた。


 簡単に言うと、僕らは4機で編隊を組んで北へ向かい、実戦を想定しながら哨戒し、空戦の演習を行った後、進路を南にとって帰還するということだ。

 雲量3ということだから、空のうちの3割くらいは雲で覆われていることになる。風は南西からの微風だから、進路を流されたりする心配はあまりしなくていい。

 素晴らしい飛行日和と言ったところだ。

 訓練後の予定は、午後には本日の訓練内容の講評が行われ、それから、翌日の訓練内容が言い渡されることになっている。


「やることは以上、教官はいつも通り私が務める! 貴様らはまだまだひよっこだが、パイロットコースの訓練課程は半ばを過ぎた。完了までもう1年も無い! 今日は離陸から着陸まで、ジャックを筆頭に自力でやってもらうからな。私はそれをじっくりと見物させてもらう。口出しはしない! では、何か質問は無いか! 」


 僕らは直立不動のまま、誰も口を開かない。


「念のため確認しておくが、体調不良な者はいるか!? 」


 気のせいか、中尉が僕の方を見た様な気がしたが、僕は直立不動の体勢を崩さず、真っ直ぐ前を見ていた。


「よろしい。それでは、かかれっ! 」


 中尉のその言葉で、僕らは一斉に、それぞれの乗機へ向かって駆け出した。

 ジャックがエメロード341号機、アビゲイルが同342号機、ライカが同343号機、僕が同344号機だ。


 エンジンの始動から、各種の機器類の確認。今まで何度も繰り返して来た動作を、僕らは滞りなく進めていった。

 今まで何度も教官殿に怒鳴られながら身に着けて来た動作だ。今更間違えようも無かった。

 エンジンの試運転、暖機も終わり、機体の機器や計器類も正しく動作している。今日の機体の状態は万全な様だった。


 それらの確認が終わると、無線で管制塔に連絡を取り、正式な手続きと確認を済ますと、僕らはいよいよ滑走路へと向かう。

いちいち管制塔に連絡を取るのは少し面倒にも思えたが、フィエリテ第2飛行場は常設のきちんとした飛行場であり、周辺の空域は航空機の安全な航行と防空のために管制塔によって厳格に管理されている。従わないわけにはいかないし、間違いや齟齬が生じない様に十分注意しなければならない。


 空を見上げると、今日は快晴だ。真っ青な空に、太陽が白く輝いている。

 僕は、その空に少しでも早く舞い上がりたいという気持ちを抑えながら、ゴーグルを着用した。


 滑走路の手前で一旦停止した後、僕らは管制塔の指示に従い、順番に滑走路へと入り、離陸を開始する。


 エンジンスロットルを上げると、エメロードは力強く加速し、操縦桿を引くと、ぐんぐんと上昇していった。


 地上を離れ、重力から解き放たれる瞬間だ。

 何度経験しても、たまらない!


 一定の高度を取り、十分な速度を得ると、僕は車輪を格納し、ジャックの機体を先頭に編隊を組んだ。

 いつものように、ジャックが編隊の1番機、アビゲイルが2番機、ライカが3番機、僕が4番機だ。4機編隊(シュバルムと呼ばれる)を組む。王立空軍の戦闘機隊ではこの4機編隊が最小の部隊単位で、小隊として扱われている。

 空戦の際は、ジャックとアビゲイル、ライカと僕で、2機編隊(ロッテと呼ばれる)を作り、お互いに支援し合いながら戦うという手筈になっている。このロッテは、王立空軍では一般に分隊と呼ばれている。この場合、ジャックとアビゲイルが第1分隊、ライカと僕が第2分隊で、第1分隊長をジャック、第2分隊長をライカが担当する。

 他の班との演習では2つの分隊が協力し合うが、今日は、お互いに腕を競い合う関係だ。


 編隊は進路を0、真北に取ると、高度を稼ぎながら、初春を迎えたフィエリテの空へと向かっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ