この世界は
地球に良く似たこの星は、まさに産業革命全盛へと突入していた。
モノが機械により大量生産が出来る時代、蒸気により馬の代わりに機関車が走りだし、短時間大量輸送の実現。職人による手作業から、誰でも作れる労働者層の増加。
郵便で数日、遅いと数か月かかるものが電信により飛躍的に情報の流れが加速し、一地方の事件が瞬く間に全国に知れ渡る技術が出来るようになる。
兵器も同じで、旧式の大砲や火縄銃、マスケット銃より遥かに装填速度が早く、精度の高い銃火砲が開発され、戦列歩兵という密集した戦法から少人数の兵士がばらけて戦う戦法も採用され始めた時代。
そんな世界ではある流れも加速していた・・・。
王国、貴族制度からの民主化へ・・・
職人制度から機械化が進み、家族単位の会社が大企業の資本家が生まれるようになり、王国、貴族制度に反発する富裕層の増加、そしてそれ以上に今まで使役される側だった労働者層の貴族たちへの不満が大きく増加、労働者を中心とした革命が多発した。
そんな世界で最大の国にして王国である、ブレンツィア王国も例外でなかった。
王国は産業革命を最初期から早く行い、その優れた生産力、資本力で他国を併合、最大の国になったまでは良いが、多数の兵力と資金を提供した貴族連中にかなりの領地と自由を与えてしまったため、王国が管理出来ないほどに地方では好き勝手してしまい、革命の流れも大きく起こってしまった。王室がさすがにまずいと感じ、貴族への自治権の制限と臣民に対しての議会制度を大きく改良しようとすると、貴族連中は猛反発、貴族連合として内戦の危機になる。
また諸外国も力をつけて旧領土を奪還すべしと戦争を仕掛け、数年に一度は他国と戦争の危機、もしくは戦争という、国内国外めちゃくちゃな惨状である。
そんな国の中でも最も可哀そうな有名人と言えば・・・と問われれば、それはタニシア侯爵家の若領主と答える人が多いだろう。
この混沌とした世界で最も時代の流れに飲み込まれてる国で最高に最悪に踊る領主、ハーネスト・タニシアの物語。