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第2話-2

 教室に戻った後は社会、数学と受けて昼休みの時間に。


 ここまでの3教科手応えとしては良い。悪くないと思う。


 残り2教科もこのままのペースで行きたい。


(そのためには昼飯だよな)


 俺はバッグから再び財布を取り出し素早く教室を出る。


 そのままの勢いで廊下をダッシュ。まだ廊下に出てくる生徒が疎らなおかげで一気に加速していく。小学生の頃なら確実に廊下を走るなと注意されるやつ。


 階段も1段飛ばしで通過、体感30秒で1階に到着する。


 目当ては靴箱前の廊下を利用して販売するパン。生徒間では購買と呼ばれている。実際の購買とは違い文具や他の飲食物は販売されていないが。


 毎日昼時には列ができ、並ばないと購入することができない。


 それが今は俺の前に一人だけ。急いで来た甲斐があった。


 テーブルに置かれたケースに袋詰めのパンが種類ごときれいに並んでいる。


「どれにしますか?」

「明太フランスとシュガー揚げパンで」


 お姉さんに注文を頼み財布を取り出す。


 ふとレジを見るとパン以外の売り物が目に入る。


「すみません、これも追加でお願いします」


 レジ横に並べられた袋詰めのクッキー。


 人気の商品らしく、何度か購買を訪れた際も見たことがなかった。


 この機会を逃すまいと追加で購入する。


 味はプレーンとチョコがありプレーンの方を選んだ。


 商品を受け取りレジから離れると、後ろに長蛇の列ができていた。


(やっぱ人気だな。早めに来て良かった)


 購入したパンとクッキーを両手で持ちながらそんなことを思う。


 列を横目に来た道を戻っていく。


(昼飯は買った。あとはどこで誰と食べるか)


 教室に戻りながら次の問題を考える。


 健は今日サッカー部の仲間と集まると言っていた。昨年も何度か集まっていたし珍しいことではない。


 現状では親しい男子は健以外おらず。というより会話すらしていない。


 一瞬中庭のベンチで食べることも考えたが、もう階段をだいぶ上ってしまった。今更引き返すのも面倒なので選択肢から外す。


 他クラスの友人の元へ行くか、それとも新しいクラスメイトと親睦を深めるか。


 前向きに捉えるなら今が関係を深めるチャンス。同じように一人でいる男子を探し声をかけるのがいいかもしれない。


「あれ、西濱だ」


 考えを巡らせていると、3階の廊下へ差し掛かったところで後ろから月野に声をかけられる。


「購買行ってたんだ」

「うん」

「それクッキー?」


 俺の手元を指差しながら聞いてくる。


「そう、これ人気ですぐ売り切れるんよ」

「そうなんだ・・・ねぇ、1枚くれない?」


 少し首を傾げ上目遣いで頼んでくる。


 自分の強みを理解してる動き。流石はモテる女子といったところか。


「いいよ」

「やった」


 狙った動きでもドキドキする。男って単純だよなって我ながらに思う。


 それでも冷静に対応できたあたり、少しは新たな道を進んでいると思いたい。


 彼女に続いて教室に戻ると、一人でお昼を食べている男子を数人見つける。


(誰に声をかけようか)

「西濱食べる相手いないなら私たちと食べる?」


 誰に声をかけようか悩んでいると、思いがけず月野から誘われる。


 彼女が指差す先には穂波と長峰さんの姿が。


「女子三人で楽しんでるとこ俺が入っていいの?」

「大丈夫だよ」


 聞こえていたのか後ろの二人も首を縦に振る。


 せっかくの誘い、断るのも悪いと思い乗ることに。


 長峰さんと俺の机を向かい合わせにし四人で囲む。


 俺の席には月野が座り、俺は近くから椅子を借りてくる


「いただきます」


 四人声が揃うと目の前に座る穂波がおかずを次々と口に入れる。


「いや、穂波口入れすぎじゃね?」

「んももっ」


 何言ってるか分からないけど、多分大丈夫ってことだと思う。


 必死にもぐもぐしているが膨らんだ頬は(しぼ)まない。


「なんかフグみたいだな」

「確かに」


 俺の感想に月野が乗り、長峰さんは必死に笑いを堪えている。


 それに対し穂波が何やら反論しているようだが、口に入れすぎていて全く喋れていない。


 そんな穂波にスマホを向け写真に収める。


「上手く撮れた」

「見せて見せて」

「ほら」

「ホントだ、おもろ」


 穂波にも見せると目を見開いて固まった。その表情も中々に面白い。まさかこんな顔してるとは思わかなったのだろう。


「ハハハ」


 ずっと笑うのを堪えていた長峰さんが声を出して笑い出す。それに釣られるように月野も笑う。


 対する穂波は二人に笑われ頬を少し赤らめている。


 そんな三人の表情をバレないように盗撮。後で各々に送り付けようと思う。


「ふぅ」


 ようやく落ち着いたのか三人揃って息を吐く。穂波も元の姿に戻った。


「あ、川嶋さんごはん粒ついてます」

「え、どこ?」

「えっと、この辺」

「あ、ありがと」


 少し会話がぎこちない二人。お互い月野の友人だが二人に接点はなかったらしい。


 人見知りの二人の距離が縮まるのはもう少し先だろう。


「購買のパンっていくらなの?」

「100円から300円の間だな」

「意外と安い。穂波今度買ってきてよ」

「なんで私。自分で買ってきなよ」

「だって脚長いからすぐに着くでしょ」

「歩幅そんなに変わらないから」


 なぜか言い争っている二人。一緒に行けばいいと思うのだが。


「西濱くんがパンだけなの珍しいね」

「今日は母さんが寝坊して弁当作ってもらえなくて」

「そうだったんだ。私も同じことあったら購買行こうかな」


 せっかくなので個人的にオススメのパンを長峰さんに教える。


 それを聞いてスマホにメモする彼女。


 聞いてくれるだけで良かったのだが、真面目な人だ。


「月野」

「わーありがと」


 二人も話が一旦落ち着いたみたいなので、クッキーの入った袋を近づける。


 感謝を述べ、指を入れ1枚取る彼女。


「ありがと、お礼にミニトマトあげます」

「遠慮します」


 手で持って口に運ぼうとしてくるのを拒む。


「え、私も欲しい」


 まぁ、目の前であげれば当然そうなるわけで。穂波が口を開けて待っている。


「餌待つ雛鳥かよ」


 1枚取って雛鳥の口に運ぶ。入れると嬉しそうに口をパクパク動かす。


「ありがと、うまっ」

「はい、長峰さんも」

「え、私もいいの?」

「うん、ちょうど4枚だし」

「ありがとう」


 三人に渡し最後の1枚を食べる。


「美味しい」


 長峰さんと感想が被る。


 それも当然なほど美味しい。これは人気なのも納得。また機会があれば購入したいと思う。


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