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51 恋人への相談3





アリエスの言葉にユージンはハッとして立ち上がった。


“セドリックだけ”が使用しているとは限らないが、それでもユージンが公爵家で過ごしていたころと違う習慣が出来たことを執事に聞いて知っている。

もしワインではなく、アリエスが言う通りセドリックが使用しているワイングラスに、体に有害な成分のある材料が使用されているのなら……、ワイングラスだけでなくともセドリックが使用している他の物に毒物効果があるなにかが含まれているのなら……、直接口に含み取り込む食材やワイン以外にも可能性が見えたユージンの姿は、アリエスの目には先ほどより表情が明るく見えた。

アリエスはそんなユージンを見て立ちあがると手を握り、そしてユージンを連れていくように歩き出す。


部屋の扉を開けてユージンを連れ出そうとするアリエスにユージンは戸惑った。


「ほら、行って」


「あ、…でも」


「心当たりがあるんでしょ?早く確かめなきゃ!」


ユージンは背中を押すアリエスに口をきゅっと結ぶと、シリウスに視線を向ける。

アリエスの親、ウォータ伯爵がいない屋敷の中では一番立場が上であるシリウスに、ユージンは立場上あいさつをしてから出ていかなければならないが、シリウスは“緊急事態だってことはわかってるんだから挨拶など不要だ。”と短く告げてアリエスと共に送り出した。


「…ありがとうございます!アリスもありがとう!君のおかげで一歩進めた気がするよ!」


「まだわかってないんだからお礼は早いわよ」


「それでも僕の気持ちは軽くなったのは本当だ!なにかわかったら、ううん。わからなくても手紙を送る!」


「ええ、待っているわ。私も知っていることはさっきみたいに何でもいうから、だから些細なことも含めて教えてほしいの」


「わかった!」


急いできたのか馬車ではなく馬に乗ってウォータ邸を出ていったユージンを、遅れて外に出たアリエスは小さくなる後姿を見送った。

進展がありますようにと星空の下で祈っていると、シリウスも「原因がわかればいいな」と口にする。


「うん、そうよね」


もう見えなくなったユージンが駆けていった方向をじっと見つめる妹の姿に、シリウスはぽんっとアリエスの頭に手をのせた。


「それにしてもお前があんな知識を持っていたとは思わなかったよ」


「これでもウォータ家自慢のデザイナーの一人よ。いい商品を作るためには人の安全も考慮しないとって職人もいっていたし、なによりお父様が採算がとかいって承諾しないから、材料のことだって最低限覚えなきゃいけなかったの」


アリエスの言葉にシリウスは嬉しそうに笑った。

小さい頃は子供の仕事である遊びを懸命に実行する姿しか見ていなかった。

学園から卒業し、少しは大人っぽくなった妹と再会したシリウスは、貴族令嬢として成長した姿はみても、一人のデザイナーとして才能を発揮させているということは母からの話でしか知らなかった。

きっと親目線で事実よりも盛って話しているんだなと、そう思っていたが実際はそうではないことを知ったのだ。


「はいはい。そうだな。うちのデザイナーは将来有望だ」


「それは自慢の妹ってほめているってことでいいのよね?」


楽し気に笑う兄に、妹のアリエスは嬉しそうに笑みを浮かべた。

ユージンの父親が危ない状態になっていることは不安だが、それでもいい方向に向かうことを祈り、その祈りが叶うことを期待しながら、アリエスはシリウスと共に屋敷に戻る。


(そうだ。もしワイングラスに毒物となる材料が混ざっているのなら、それも特定しないと……)


アリエスは領地にいるウォータ家お抱えのアクセサリー職人に手紙を送り、知識を借りることを考えた。

もしかすればウォータ家の職人では毒物の特定が出来ないかもしれない。

だけどそれでもユージンのためになにかできることはないかとアリエスは考えた。

そして考えた案をシリウスに行動に移していいか尋ねながら、アリエスはユージンに会えない間過ごしたのだった。







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