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11 令嬢たちのお茶会2



「…この話は皆様も聞いたことがあるかと思いますが……遥か昔、魔法と呼ばれる力を使えていた時代、聖女、という女性がいましたの。聖女は癒しの力を使い、民や位の高い人々を救ってきましたが、それと同時に人の心を魅了していることが発覚しました」


エリザベスの話にアリエスたちは口を挟むことなく耳を傾ける。

遥か昔の話になるが、この世界には魔法という不思議な力が存在していた。

火や水から始まり、土や雷、風に植物等を操ることが出来た時代、聖女と言われる存在のことも簡単な話ではあるが歴史の授業で習っている。

だが今となっては人々を恐怖に貶めていた魔物という存在もなくなったことで魔法もなくなり、そして聖女も歴史上の人物として語られるだけで、現代を生きる彼らには不要な人物というよりも歴史上の現実離れした人物として存在していた。

エリザベスがこの場で話をするのには、今起きている事態に関連するヒントとなるのだろうと考えたからだ。


「気付いた時には遅く、魅了された人々は何でも聖女のいうことを聞く操り人形にされ、国は崩壊寸前に陥りましたの。そして聖女を処刑した。

神に愛されたといわれる聖女を処刑した罪からか、私達は魔法という力を取り上げられましたが、聖女が亡くなったことで魅了された人々は正気を取り戻した。

王妃様に相談したとき、そんな話をされましたの。

王妃様も半信半疑の様子でしたが、情報収集に向かわせた影の一人がピンクブロンドの令嬢に好意を抱いてしまったことが発覚したことで、王妃様が自体を重く見ていただけました」


「影が惚れこむ…?例の女性と接触したのですか?」


「いいえ。いつもの様に見つかることなく監視していたらしいです」


「それなのにどうして……」


マリアは不思議そうに呟いた。

王族の影となる人物は王族を守るために命を懸けることができる人物たちで構成されている。

そんな影が接触もなく、誰かに好意を寄せるなどあり得ない話だった。


「では今も見張らせている他の影たちも…!」


「それは大丈夫です」


「何故ですか?」


「聖女の魅了は同性には効きません。私達が聖女に好感を抱かないのがその証拠です」


エリザベスの言葉にアリエスたちは自分たちが令嬢に抱く感情を思い出し納得する。

アリエス自身はカリウスに特別な感情を持ってはいない為、婚約者を奪われたという怒りは湧いてこないが、それでも友人たちを傷つけられた怒りがあった。

だが同性である自分たちには、仮にピンクブロンドの令嬢が聖女であったとしても魅了の力はきかないと安堵していると、エリザベスは深刻そうに話を続ける。


「……ですが、男性を奪われた心の傷が大きければ大きいほど、女性側の怒りが大きくなるのです。それも自我が利かなくなる程に……。

ですから、もし殿下がまだ完全に彼女に好意を抱いていない状態なら私たちの話は通じるかと思いますが、それでも側近の近くには彼女がいます。もし令嬢との接触が増え殿下も……となった時、私も次期王妃として相応しくない行動に出てしまうのではないかと思うと、…恐ろしいのです」


震える声で不安を口にしたエリザベスに、話を聞いたマリアたちは思い当たる節があるのか口元に手を当て顔を伏せる。

もしこの怒りの感情が聖女の力の影響ならば、自分は一体どうなってしまうのだろうかと恐ろしく感じていたのだ。

そんな中アリエスが立ち上がる。


「なら私が皆さんの婚約者たちと話をしてみます。

私は婚約者であるカリウス様と令嬢が二人でいるところを見ても何も感じませんでしたので、怒りで我を忘れるといったことはないと思いますの」


自信満々に告げたアリエスに、それはそれでどうなの?と誰もが思ったが、あえてそれを口にはしなかった。

そして「話し合いをする前に、証拠をしっかりと集めなければいけません。実際の現場を見て、そして皆さんの話を聞いた限り、殿方たちに悪い事をしているという感情がないようですから、話す際には集めた証拠を突きつけてやりたいのです」と口にしたアリエスに、「なら最新のカメラを提供しますわ。望遠レンズが付いていて、近づかなくても撮影できますの」とエリザベスが提案する。


「それはいいですわね。なら私は雑音が入り込まない最新ボイスレコーダーを」


「では私は室内の様子が手に取るようにわかる盗聴器をお渡ししますわ」


マリアとキャロリンがエリザベスに続くように提案し、アリエスは三人の友人を頼もしそうに見つけたのだった。





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