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10 令嬢たちのお茶会




いつもの茶会はいつの間にかピンクブロンドの令嬢に対する報告会へと変わっていた。


マリアとエリザベスの話を聞いたキャロリン・ケンタは、もしやという不安を抱き、自身の婚約者もピンクブロンドの令嬢との交流がないか調査を行っていたのだ。

そしてその不安は解消することはなく、結果として全員の婚約者がピンクブロンドの令嬢と関りを持っていたことが発覚する。


マリアの婚約者であるカルンは一度だけの逢瀬ではなく、何度か二人で会っていたことわかったのだ。

木の陰に隠れるように互いに身を寄せ合い、どこから登場したのか猫を膝の上に乗せた令嬢が優しく撫でながらカルンと談笑する。

そして猫が令嬢の膝から降りたその瞬間、猫のどこに引っ掛かったのかわからないが、短いスカートが捲れ上がりカルンは顔を真っ赤にしながら、自分のブレザーを令嬢の膝の上にかけた。

「気を付けなさい」と照れながら告げるカルンは、令嬢の頭をポンポンと撫でる。

どの小説を参考にしたラブコメだとツッコミをいれたくなったが、これが現実に起きていたのだ。

マリアは震える声で言った。

「私、カルン様にハンカチすら敷いてもらった事ないのに、いつからそんな気遣いが出来る男性になったの?」と。


キャロリン・ケンタの婚約者も同様にピンクブロンドの令嬢と交流していた。


淑女クラスの令嬢たちは授業が終わると各々の行動に移る。

アリエスたちのように茶会をしたり、婚約者の様子を見に行ったりと様々だ。

だから淑女クラス棟の教室は盲点だった。


ある日キャロリンは出された宿題の為に図書室へと向かう為に教室の前を通っていた。

そこで見たらしい。

誰もいない教室で楽し気に話し込む二人の男女の姿を。

二人は机の上に広げられた何かを見ているようで、一見すると勉強をしているようにも見えるが、令嬢が嬉しそうに喜ぶと男性はなにかを取り出し令嬢の口に放り込む。

頬を押さえて口を動かしている令嬢に、まるで親鳥がひな鳥に餌付けをしているようにも見えたが、その後の令嬢の頬に顔を寄せて何かをした男性は微笑みながら指の腹で拭ったという。

令嬢の口の中に食べ物を入れたのに、なんで頬に付くんだというツッコミが話を聞いたアリエスたちの脳内に浮かんだがグッとこらえた。


そして現場を見たキャロリンはあり得ないと思うと同時に、相手の男性が自分の婚約者であることを知った。

信じていた男性が自分を裏切っていたことにキャロリンは涙を浮かべ走り去る。

今となっては逃げないで教室に入ってやればよかったですわ!と声を荒げる程にピンクブロンドの令嬢に怒りを抱いていた。


まだ誰か一人を狙って行動していれば、と思いもするが、ピンクブロンドの令嬢は複数の男性に言い寄っているため、ただの身持ちの軽い女性の行動にしか見えなかったのだ。

そして遠回しに仲良くするようにと婚約者から注意を受けた王太子の婚約者であるエリザベスも、眉間に皺を寄せ怒りを抱いていることを表している。


「彼女は平民の感覚が抜けていないのでしょう。貴族令嬢としてどうあるべきなのかを教えてあげるべきです。そして婚約者がいる令息たちも同様です」


「ですがどのように?私勇気を出して婚約者に伝えましたが、嫉妬深い女だなと呆れた顔で言われたのですよ!?」


「私も婚約者に伝えたところ、まるで何日も徹夜した機嫌の悪い眼差しで令嬢を傷つけるなと言われました!」


エリザベスの言葉にマリアとキャロリンが声をあげる。

既に二人は動き、婚約者に問い詰めようとしたようだが、成果が出ずに終わったらしい。


「エリザベス様、どうか殿下との話の場を設けてはいただけないでしょうか?

殿下から婚約者たちに話がいけば、流石に考えていただけるものと考えています」


アリエスの言葉にエリザベスは口を閉ざして目を伏せる。

エリザベスの反応にアリエスは一度首を傾げるが「まさか」と口にした。


「いえ、殿下は例の女性と会うことはありません。……私から王妃様に頼み、影を使って殿下を守り、報告させておりますのでそこは確実です」


アリエスたちはホッと肩を下した。

次期王位につく立場である王太子殿下が、一人の身持ちの軽い女性にうつつを抜かしているわけではなかったことに安堵したのである。

だが王族を陰から守る影を動員するほどの事かと、そしてよく王妃様も許可を出したと思っていると、エリザベスは静かに話しだした。




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