婚約破棄されたので政略結婚することにしました
読んでくださると幸いです
「メイオール・クリスタとの婚約破棄をこの場を借りてここで宣言させてもらう」
周囲はざわめきと困惑で満ちた。大々的に婚約破棄宣言したのは本日の茶会の主催者であるドリストン・ラクスマン卿だ。ドリストン侯爵家のご子息であり優秀で次男ではあるが次期当主になると噂されている
「ラクスマン様これはいったいどういうことでしょうか?」
「クリスタよ。幼い頃からの付き合いだったがご苦労だった」
「えっと、どういうことなのですか?そんな言葉だけじゃ納得いきません!せめて理由だけでもお聞きすることはできないのでしょうか?」
はぁ……っと。ラクスマンは溜息を吐きそのまま続けた
「そういうところもだ。おのれで考えようとせずに他人からきくことから始める。少しは自分で考えてみろ」
茶会という場でありながらこういう場面に遭遇すると思わなかった他の貴族たちはどうするべきかを考え皆の思考はある一つの結論に辿り着いた。
貴族たちは颯爽と玄関に足を運びこの場から立ち去ることを決めた
周りに人がいなくなりラクスマンも側近を連れて部屋をあとにした。クリスタはというと思考を巡らせていた
「私に何か不手際があったのかしら」
思い返してもこれといって悪いところはないはず。確かに優柔不断ではあったけれど最終的にはしっかり考え、結論を出していたしラクスマンからの要望にも答えていた。それに……
「優秀と言われているのには私が絡んでいるのに……」
☆______________________☆
ラクスマンとは幼馴染で幼少期は運動も出来ず勉強も不得意で何かあればすぐ泣くような子供で私は、そのラクスマンを慰めることが多かった。とても可愛くて弟みたいだと思っていたけれど、この時は婚約するとは思ってもいなかった。このままでラクスマンは大丈夫なのだろうかと心配していたとき私たちの前に転機が訪れた
私たちが18歳になり身も心も成熟したころ、国王様が病気で亡くなり次期国王のバリスタン・シュメール王子が王位を継承することになったのだ。
そのシュメール新国王は私たちと同じ歳でお若いながらにして民や兵、大臣までをも従わせて改革や変革をし、その中で新たに国王の秘書を募集することになった。
私は、そこを狙いラクスマンを推薦し人脈やコネを使い王直属の秘書となった。その影響によりラクスマンは優秀な人材といわれるようになったのだ。ラクスマンは運動や勉学においては乏しくてもリーダーシップやマナーに関しては一流であるためその悪い部分を知らない一部の貴族の間では敬われている存在となっている
☆______________________☆
「私と婚約破棄するってことは何かしら裏がありそうだけど……まさかね」
噂で他に恋人がいるというのをきいたことがあったけれどその時は対して気にしていなかったけれど調査してみたほうがいいみたいね
「翡翠、ラクスマン様の動向を調べて私に知らせて。それとこの文を陛下に渡して欲しいの。頼むわね」
「御意」
翡翠はシュメール陛下の直属の兵である。シュメール陛下にラクスマン様を推薦できたのも翡翠のおかげだ。翡翠とは、王都に滞在していた時に相談に乗ったり勉学を教えていたのだけれどまさかの見習いの兵士で勉学を教えたことで王直属の兵士になったのだけれどお礼なのか休日は私の下で密かに動いてくれている
♢_______________________♢
「クリスタ様、動向を調べた結果ラクスマン卿は複数の女性との関係があるようです」
「そう……ありがとう」
呆れて何もいえないでいると……
「文を渡した際にシュメール様がクリスタ様に一度会わないかと言伝を頂きました」
「陛下が私に……?」
国王様に無礼をしてしまったと反省しつつも不安で胸がいっぱいになった
「わかりました。明日にでもここを出発して王都に向かいましょう」
陛下が私になんのようかしら……罰せられるのだろうと諦めてその日は就寝に就いた
♢______________________________________♢
翌日、馬車を走らせ王都に半日をかけて向かった。
「やっと着いたわね」
翡翠に連れられてとても綺麗に整理された部屋に招き入れられた
「ここでしばらくお待ちください。シュメール様がここに来てくださるようなので」
「陛下がここに!?それはいけません!私が向かいます」
ガチャっとドアの音が鳴り響いた
「ははっ、そんなにかしこまらなくていいよ。謁見ではなく個人の集まりだからね」
金髪碧眼で髪はサラサラで失礼だとしても見惚れてしまうほどの美貌だ
「そんなにみられるのは流石に照れてしまうよ。翡翠のいった通りクリスタは綺麗だね」
「も、申し訳ございません……」
焦りと緊張で生きている心地がしなかった
「そろそろ座ってもいいかな?」
「は、はい」
「気楽でいいよ。ただのプライベートなんだから。ところで今日、君を呼んだのはある提案をしようと思ったんだ」
「提案……ですか?」
「君がラクスマンに婚約破棄をされたのは知っている。そしてラクスマンは私の婚約者エメラルドとも付き合っているという情報も入ってきている」
「え!?も、申し訳ございません……」
「何故、君が謝るんだ。私は、怒っているというよりかはむしろこれを機に婚約を解消したかったんだ」
「それは、なぜでしょうか?」
「彼女はね。私の許嫁という立場を使って好き放題暴れていたんだ。侍女にきつく当たったり経費を無断に使ったりとね。そこでこれを機に解消し君と婚約をして手伝ってほしいんだ」
「私とですか!?」
驚きのあまり大きい声を出してしまった
「そうだ。君の文を読ませて貰ったよ。ラクスマンの不正などの密告文をね」
何と返せばいいのか分からないでいると陛下が先程の提案の話を持ち出してきた
「どうだい?君の家は侯爵家でもあるし名門でもある。それに君は賢い、いわば政略結婚だね。答えは今すぐじゃなくてもいい。君の答えを次の夜会で教えてほしい」
私が王妃になるなんて考えられないけれど……
「承知致しました」
♢_______________________♢
夜会当日、出席者は名門貴族や王家の方々に大臣にラクスマン様も出席していた。ラクスマン様と目が合い何故いるんだと言わんばかりの表情を見せて動揺してはいたけれど護衛中ともありすぐに平静を取り戻した
こつんこつんと靴底の音が響き皆の視線が壇上に上がる陛下のもとへと視線が集まった
「皆さん本日はお集まりいただきありがとうございます。豪華な食事や式典を用意いたしましたので存分にお楽しみください」
拍手喝采を浴びながら壇上から降り真っ直ぐに私のもとへと歩いてくる
「君の決断はどうだい?」
「決まりました」
真剣なまなざしを陛下に向け悟ったように微笑み、再び壇上へと足を運ばせた
「お楽しみの中ですがこれより、私から大切なお話をさせていただきます。まずはクリスタ。君も壇上に上がってきなさい」
胸の鼓動が止まない。緊張なのかそれとも楽しいのかわからないが決意を新たに決めて陛下の待つ壇上にあがった
「バリスタン・シュメールはミストン・エメラルドとの婚約を破棄しここにいるメイオール・クリスタと新たに婚約することをここで宣言させてもらう!」
大臣や貴族は驚きのあまりグラスを割ったり腰を抜かしたりしている。だが、ここで声をあげたものが二人いた
「待ってください!なぜ、私との婚約を解消なさるのですか!?」
「そんなこと言わなくてもわかるだろう。あれだけ暴れておいて音沙汰なしとはできないよ。それに、私の秘書とも恋仲という情報も入ってきている。そうだろ?ラクスマン」
「えっと、その。申し訳ございません、陛下」
冷や汗だらだらで見ていて可哀想だけれどデジャブを感じて少し面白いと感じる私がいた。そこで、さらに楽しみたいがゆえに爆弾もおいていくことにした
「ラクスマン様、お好きな方と結婚なさるのならおめでたいです。ですが、私が見かけた女性とはまた違うのですがこれはいったい……?」
周囲の視線は一斉にラクスマン様の方へ向かった。
「どこでそれを……はっ」
しまったといわんばかりの表情で姿勢も崩れ汗もだらだらで秘書失格である。おまけに職務中に逃げ出すとは。やはり、変わらないものだと思った
「思ったより君は強いんだね」
シュメール様は軽く笑いながら耳元でささやいてきた。みるみるうちに耳が赤くなってきた感じがしたけれどきっと気のせいだろう
これが、クリスタの初めての感情だったとはまだ誰も知らない
ここまで読んでくださった方ありがとうございます。ボクオウと申します!まだまだ未熟ですがよろしくお願いいたします