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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第2章 海洋国家オルヴァート編

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98限目「vs.陽精樹」

「随分辛そうな感じがするが……。理由を聞いてもいいだろうか?時間が許す範囲で構わない」❝原因❞についての大体の想像はつくのだが、問題はそこではない。なぜそこに至ったのか。そう、俺の関心は❝過程❞に集中していた。


「うむ、当然の権利だな。それくらいの時間は用意できる。では順に話そう。


 まず、我が身にかけられているのは❝服従❞の呪術魔法である」やはりそうだったか。どす黒いオーラが陽精樹を覆い隠す寸前の状況だった。❝陽精樹❞という名からもわかる通り、恐らく光属性でもあるのだろう。


 呪術魔法はほぼほぼ闇属性だ。反属性である光属性の者には只でさえ抵抗し難いのだが、さすがは❝聖獣❞を名乗るだけはある。

「そして、その呪術魔法を行使したのはアルバレイ。そうなんだな?」


「その通りである。我ら四聖獣を手駒にするために、な。

 国王の座を奸計により簒奪したアルバレイは、オルヴァートを完全に我が物とするために全土に配下を送り管理している。

 しかし、我ら四聖獣は配下程度では手懐けることはできん。そこで自ら乗り出してきた。あ奴の呪術魔法は残念ながら我等の能力の遥か上をいくものであった。


 奴は我らの力を使い、王宮に結界を施しつつ解除を阻む番人として使うつもりであろう。

 わし以外はすでに奴に取り込まれてしまっておる。荒ぶるその姿は実に嘆かわしい。このまま奴の手下に成り下がるくらいならば、どうか引導を渡してほしいのだ。

❝竜神の加護❞を持つそなたらならば、きっと成し遂げることができよう」


 アルバレイ……。いかにもなかたき感がある。ひょっとしたら自覚があるのではないか?

遊惰ゆうだ》の名を持つ惰天四公。その名が示すのは❝遊び耽り怠けること❞だ。そう、全てを❝遊ぶ❞ことに割り振っているとすれば、国盗りもそして俺達が事態の打開に向けて動いていることも遊びのうち。

 敵役ですら楽しんでいる可能性がある。高みの見物ということだろう。ふざけた悪魔だ。


 それはそうと、陽精樹には俺達の緑碧竜の加護が見えているらしい。

「竜神と縁のある者だったか」

「我々は元々紺碧竜リヴァルダス様の眷属である。加護には敏感でな」なるほど。自分の命運を託すとなれば、同様の縁を持つ者にというわけか。


「分かった。海底神殿へはどうやって行くことができるんだ?」

「社の中に魔法陣がある。儂が活性化させたので、中央に立てば転移できよう。クシナのことをどうか頼んだぞ。両親と離れ、一人で苦しんでいることだろう。救ってやって欲しい」クシナのことを心から案じているようだ。その口ぶりだと、何度か会って見知った仲だということが感じられる。


「うむ、後は任せるがいい」そう言うと陽精樹は明らかに苦しみだした。強大な負の力が彼のささやかな抵抗を押し潰そうとしている。

「そろそろ時間のようだな」


「ふふ、気にするな。後を託すものが現れたのだ。これ以上の僥倖があろうか。

忘れておった、もう一つだけ。

 アルバレイ。奴は《魔獣王テイマーロード》だ。あるじである奴を倒せば❝全てが戻る❞。

 ではさらばだ。手加減は要らぬ。娘よ、そのような顔をするな。存在は消えぬ。また生まれ変わるだけのことよ」シェステがしかめっ面をして、今にも泣きだしそうなのを我慢している。


「だって……だって!」どうにもならぬことを彼女なりに理解しているのだろう。

「お前達の旅に幸あらんことを」その言葉を最後に、陽精樹は眠るように慈愛に満ちたまなこを瞑る。


 一呼吸置き、彼が次に目を見開いた時には烈火の如き灼熱の赤き眼の色を宿し、こちらを睨みつける。俺達を敵対者として認識したのか、身体を震わせるほどの咆哮を上げる。

「グレン、どうにもならないの?」微かな希望をシェステが口にする。だが、それは無理な話なのである。


「《魔獣王テイマーロード》の施した❝服従❞の呪術魔法は、当たり前の話だが通常のテイムとは違う。ハーピー達に施したちゃちな魔法とはわけが違う。❝絶対服従❞の強固ガチな魔法だ。四聖獣レベルをテイムするとなれば、解呪は難しい」

「『難しい』ってことは、できないわけではないんだよね?」


「すまん、言い方が悪かったな。もちろん可能性があるかと言うなら❝ある❞んだが、現実的には無理なんだ。すごく危険だしその余裕がない」テイムしたなら、その証である❝奴隷紋❞が刻まれている。しかし奴の、アルバレイの奴隷紋は禁呪《魂隷術こんれいじゅつ》だろう。対象の魂を直接隷属させるという超強力な呪術だ。魂と深く結びついたこの術法は、解除ができないと言った方がよい。


「さぁ、せめて安らかに眠らせてやろう。準備はいいな、シェステ!」

「はい、師匠!」絶対な信頼を寄せる俺に無理だと言われれば、腹を括るしかない。シェステは重い覚悟をもって、この現実に立ち向かうことにしたようだ。


 社を破壊させるわけにはいかない。裏手の開けた場所へ陽精樹を誘導する。陽精樹にとっても広くなった場所での戦いは有利であるようだ。

 眷属のトレントを大量に召喚してこちらへとけしかけてきた。


「シェステ、まずは数を減らす。減らした後のトレントの誘導と対処を頼めるか!」

「任せて!」別にすべて倒す必要はない。俺が陽精樹とタイマン勝負できる状況を維持してくれればそれで万事OKなのだ。


 俺は《大気断裂アトモスラプチャー》を複数展開し、次々とトレントを伐採していく。一度の攻撃でかなりの数を減らし、第二撃を加えると残り1割ほどとなった。


 俺はシェステにアイコンタクトを送ると、ワンドを手にして軽く頷く。

「さぁ、アンタ達の相手は僕がするよ!こっちに来い!」《風刃ウィンドエッジ》を放ちトレントの枝を斬り落とすと、挑発に乗ったトレント達がシェステを追っていく。うむ、うまい誘導だ!


「さぁ、こっからは俺達のタイマン勝負だ。トレントを追加召喚するなんて野暮なことはしてくれるなよ?」俺の言葉を理解できるとは思っていないが、どうやら俺の申し出を受けてくれるらしい。

 太い枝や幹、そして殴られたらとても痛そうな根っこ。全てを打ち鳴らし、気合十分だ。よし!舞台は整った。大一番の勝負、開始だ!

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