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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第2章 海洋国家オルヴァート編

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97限目「陽精樹の申し出」

陽精樹ヨウセイジュ、気高き賢者……。では人を襲うわけではないのですね」

「えぇ、そんな滅相もない。いつも村のことを気にかけて下さる、とても穏やかで優しい方ですじゃ」どうやら意思疎通が十分とれるようだ。

「じゃから、陽精樹様の身に何か起きているのではないかと、それも心配で……」


「ならば陽精樹の様子も確認しましょう。ちなみに、他の方角の聖獣というのはどのような?」


「はい、北の九尾キュウビ、西の多足水精ダゴン、東の猿王エンオウ様です。皆様各方角の守り神として祀られております。普段は結界を張って自分の島と泰都を守ってらっしゃるのです。

 それが、他の方角の状況は把握しておりませぬが、南のラミナ島は結界が消えてしまって……」まぁ確実に何か起きてはいるようだ。すんなり海底神殿には行ける気がしない。陽精樹と一悶着なければよいのだが。


「では今日のところは宿でゆっくりお休み下され。本当にありがとうございました」そう言って村長は村人の元へと戻っていった。一人ひとり声をかけている。

「ねぇ、グレン。村長いい人だね」村長に声をかけられた村人達は一様に笑顔を見せる。とても好かれている様子だ。


「お前もそう思うか。上に立つ者の振る舞いとはあああるべきだ。覚えておくといい」ついつい自分が置かれていた王という身分のことに思いを馳せてしまう。

 ふっ、と一つ溜め息にも似た笑いが漏れる。いかんな、今はやるべきことに集中しなければ、そう思い続きを考えるのをやめた。


 俺達は村長の計らいで宿に泊めてもらうことになり、早朝ラミナ島へ出発するために早めに就寝することにした。



 翌朝。朝食は干物にした魚を焼いたものだったのだが、脂たっぷりで旨味もたっぷり。ショウユをかけた時のあの香り、これが絶品で朝からライスをおかわりしてしまった。実に素晴らしい朝食だった。

「美味しかった~!!ライス2回おかわりしちゃった!」シェステも大満足だったようで何よりである。


「すっかり魚党になったな。肉が恋しくはないかい?」

「肉もいいけど、お魚も色んな料理があって美味しいよ!それにグレンは時々お肉料理もちゃんと作ってくれるから問題なし!」胸を張るシェステだった。

「そうか、作り甲斐があって嬉しいね、全く」食事は諸々を脇に置いて純粋にその時間を楽しめるからありがたい。


「さぁ、今日はいよいよラミナ島に着くだろう。戦闘も覚悟しておくように」

「はい!」


 宿の外に出ると、村長が出迎えをしてくれた。

「ゆっくりお休みになれましたか?船の準備ができましたので、お迎えに上がりました」村長の後をついていくと村の南東にある船着き場に小規模だが帆船が用意されていた。

「今日は波も穏やかですじゃ。おそらく昼過ぎには到着できるでしょう。どうかお気をつけて」


「お心遣い痛み入る。では!」俺達は一礼をして船に乗り込み、出港する。



 波は穏やかだが、海流の関係だろうか。順調に船は進む。

 海上では魔獣の類に襲われることはなく、そのまま昼過ぎ……、14時くらいにはラミナ島に到着した。操船してくれた村人にはこのまま村へ戻るように伝えた。

 危険があるかもしれないし、俺達は飛行魔法や転移魔法が使えるので問題ない。


 船を見送り、周囲を警戒しつつシェステと島の中央にある祭壇へと向かう。道中は特に問題ないと思われたのだが……。2時間ほど経ったところで、異変が起きる。聞いていた道が見当たらない。

 聞いていた話では、中央の祭壇までは一本道で道なりに進めば辿り着けるはずなのだ。


「人の子よ。これ以上は進むこと罷りならぬ。どうしても進むと言うのなら、命の保証はないぞ?」突然声が聞こえてきた。少し弱々しい。それに苦しそうでもあった。


「俺達はどうしても海底神殿へ行かねばならない!危害を加える意思はないんだ、ここを通してくれないか!」

「何故海底神殿へ行く?何が目的なのだ?」

「クシナ姫を助けるために」

「!!」


「そうか。ならばそこにいる者達を蹴散らして祭壇まで辿り着くのだ。話はそれからだ」

 ガサガサ……。周囲の気配が突如として慌ただしくなる。


「シェステ、お客さんだ。ひとまずこいつらを片づけるぞ!」樹木の姿をした魔物トレント達が道を塞いでいたせいで道が見えなくなっていたのだ。それに群がるように昆虫型の魔獣も多数集結していた。

 

「❝炎❞は使わない方がいいよね?森が燃えちゃうかも……」

「そうだな。特にトレントはよく燃えそうだ。炎もだが、❝相性❞は考えて魔法を構築するように」

「はい!」トレントは大地の加護を受ける土属性の魔物だ。水属性の魔法は最悪吸収される可能性があるので注意が必要なのだ。しかし、❝氷❞ならば別だ。


「まずは取り巻きを片づけるぞ!《氷嵐ブリザード》!」気温が下がり見る見るうちに動きが鈍り昆虫型魔獣は凍り付いていく。

「いっけぇ~!!《岩石投槍ロックジャベリン》!」シェステが地面から岩石を精製した無数の鋭い槍を飛ばす。凍り付いた部分にヒットすると部位破壊が起き、魔獣達は次々と戦闘不能になっていく。


「よし!後はあのトレントだ。俺が足止めする。とどめはシェステに任せる!」俺は《氷嵐ブリザード》の力を強める。だがトレントはまだ動けるようだ。種子をマシンガンのように飛ばし攻撃をしてくる。


「「《氷壁アイスウォール》!!」」二人は息を合わせ、自身の前方に氷の壁を作り乱射攻撃を防ぐ。《氷壁》の利点は向こうが透けて見えるから、次の行動につなげやすい点にある。


 俺は《氷嵐ブリザード》から《氷結拘束フロストバインド》に切り替える。トレントの足元を全凍結させ完全に動きを封じる。そして、《氷壁》を解除し、《乱気流タービュランス》を発動。空気の流れを掻き乱したおかげで乱射攻撃はこちらまで届かない。


「よし今だ!」イメージを収束して魔法を練っていたシェステが、風の大魔法を放つ。


「《大気断裂アトモスラプチャー》!!!」全てを切り裂く大気の刃が乱気流ごと切り裂き、トレントを見事縦に真っ二つにする。

「よくやった!風の上級魔法、完璧だったぞ!」とはいえ、まだ集中力がかなり必要なのだろう。一発撃って少し疲れてしまったようだ。

「ありがとう……。でもまだまだ修練頑張らなきゃ。一発撃つのがやっとだよ~」


「イメージが定着すればもっと数も増やせるだろう。ははは、精進しなさい」そう言って頭を撫でてやると、もっと褒めてと言わんばかりこちらに頭を向けてくるシェステであった。


「よし。ではひとまず試練もクリアしたことだし、祭壇へ向かおう」

「うん」俺達はそれから障害になる魔獣に出会うこともなく、一本道を先へと進む。すると森を抜け、開けたところへ出た。これは❝やしろ❞だろうか。

 ここが❝陽精樹❞を祀った場所なのだろう。だが、肝心の陽精樹はどこだ?


「心配せずともここにおる」社の後ろに一際大きい樹木が鎮座していた。まさかこれほどの大きさとは。社の3倍はあるかという巨木。それが陽精樹だった。


「よくぞ魔獣達を征してくれた。礼を言う。

 ただ、今の儂ではお主達の願いを聞き入れることはできんのだ。済まぬが、もう一つ儂の申し出を受けてはくれぬか」何か嫌な予感がする。

「構わないが、何をすれば?」陽精樹は淡々と答える。


「儂を倒してくれぬか」

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