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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第2章 海洋国家オルヴァート編

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92限目「カーラとシェステ、それぞれの修練①」

「どうだ?報酬としては破格だろう?」アスラの右腕に《高位治癒ハイヒール》をかけたのだが、効果覿面なようである。

「ふん、偉そうに。じゃが、これは感謝しきれんわい。もらい過ぎた分はカーラに強くなってもらうことで返すことにしよう」彼は木刀を右手でブンブンと振って気合十分、いやそれ以上だ。


「あぁ、是非そうしてくれ。カーラ、盗めるものは全部盗むんだぞ!」

「はい!ご期待に応えて見せます!」胸をポンと叩いて答える。


「ならば、すぐにでも出発するとしよう」

「なんじゃ、もう発つのか。いや、クシナ様のことを考えると早い方がいいか。姫のこと、よろしく頼む」

「あぁ、任せておけ。王女もこの国もな。シェステ、行くぞ」俺はシェステの手を取ると転移魔法で姿を消した。


「この国もか……。大層なことを言いおって。だが期待をせずにはいられん。

 ふふふ、全く不思議なやつじゃわい」そう言って空を見つめるアスラだった。



 港への転移が完了し、アスダンのところへまっすぐに向かった。目的は地図だ。

 以前ゼトからもらった地図はアルべリオン大陸の分しかもらっていない。あとは最初から手にしている世界地図のみ。オルヴァートの詳細地図が必要になる。


 アスダンに会うと、アスラと話した一部始終を伝えた。交渉が上手くいったことに加え、重傷で不自由にしていた右腕が完治したことを非常に喜んでいた。

 俺は詳細地図をもらい、いつも通りシェステに渡すと自分の手帳のポケットに大事そうに収納した。


 アスダンに礼を言い、町の人々にも別れを告げると早速次の目的地フェイの村へ向かう。フェイは今いる島の東部にあり、海底神殿へと通じるラミナ島にそこから船で行けるそうだ。


「すまなかったなシェステ。もっと美味しいもの食べたかっただろう?」1泊しかできなかったし、名残惜しかったと思ったのだが。

「うん、でもお姫様を助けるんでしょう?早い方がいいよ。それに料理はまた今度食べるまでの楽しみに取っておくよ!」


「そうか。なら今夜は昨日の料理までとはいかんが、美味しいミソ料理を作ることにしよう!」ミソとショウユをたくさん分けてもらったからな。腕が鳴るぜ!

「わ~い!楽しみにしてる!」



 その頃カーラは、アスラ指導の下ですでに修練を始めていた。

「お前さんは剣術の基礎は十分叩き込まれておるようじゃから、遠慮なく行かせてもらう。まずは儂に一本入れてみぃ」

「はい!よろしくお願いします」木刀を握ると肩の力を抜き、一呼吸すると正眼の構えを取る。


「来い!」かつての力を取り戻した右手で木刀を握り、アスラも構えを取った。

 カーラの身体がゆらりと揺れたかと思うと、物凄いスピードでアスラとの距離を一気に縮め、最初の一撃を与えるべく、木刀を縦に振り抜くが、紙一重で避けられてしまう。


「それがそなたの全力か?違うのなら常に全力で来い!意識を研ぎ澄ませ!」少しだけ頷き、カーラは再び木刀を打ち込んでいく。


「全力とは力を込めることではない。己の能力全てを注ぐということじゃ。つま先から頭のてっぺんまで全神経を使って相手の隙を探せ、そしてその一点の隙を突け!」針の穴を通すような、しかし命を削られるような切っ先が時折喉元に向けられる。


《侍》として実力が上がっていることは自覚していたつもりだ。だが、目の前にいるアスラという人物は、動きにまるで隙が無い。いや動きを追うのも精一杯だ。

 改めて上には上がいるという実感を得た。それに天地ほどの開きがある格上の剣士とこうして修練に励むというこの好機、逃すわけにはいかない。1秒も無駄にはできない。そう、グレンの期待に応えるためにも。


 カーラはいったん立ち止まると、パン!と両頬を思い切り叩き、一つ大きく深呼吸する。

「参る!!」

(ほう、気合いが入ったようじゃな。こやつ❝目❞が良い。後は身体がついてくるかじゃが、この分じゃと儂の想像通り大化けするかもしれぬ)


「ほらほら、まだまだそんなもんじゃ一本取れんぞ!」パン!パン!パン!カーラの木刀を叩き、姿勢や感覚を矯正していく。本人も知ってか知らずか、動きが滑らかになるのを感じているようだ。

 今までの修練とは違い、対人の激しい打ち込み稽古。しかし、イメージはできていた。


 グレンの作り出す動く水玉は、ある時期から1個の集団として統制をもって動くようになっていた。おそらく人体や魔獣の要所を模した動きだとカーラは気づいた。それからというものの、個々の水玉と言うよりは、生物をイメージした斬撃訓練と自然に移行できたのである。


 おかげで、対象の動きを点で追える癖がついていた彼女は、無駄な情報を視界に入れることなく立ち合いができるようになっていた。彼女の❝目❞の良さには理由があったのである。


 アスラもカーラの動きに合わせつつも、徐々に、本人が気づかぬくらい徐々にそのスピードを釣り上げていき、身体をその速度に慣れさせて行った。

 思いの外それが功を奏し、ついに4日目には……。

 わずかだがアスラの袖に切れ込みが入る。


「うむ、よくやった!おめでとう、これでお主は《侍大将サムライロード》にジョブアップしたぞ」

「えっ……。えぇ~~~!!!」

「何を驚いておる!まだまだ途中じゃからな、こんなもんで驚いておったら困る!では次じゃ」アスラは左手❝にも❞木刀を持つ。

「ここからが本番じゃ。儂は本来❝二刀流❞なのでな、儂の隙を突くのは至難の業じゃ!さぁ来い!」打ち込み稽古はさらに激しさを増していった。



 その頃、まだ俺とシェステはフェイへ向かう途中であった。

 朝食を食べた後、俺は今日もシェステの修練に付き合っていた。

 カーラがアスラとの修練に励むということで、シェステも姉弟子として負けるわけにはいかない、そう思ったのだろう。いつもより熱心に修練に励むようになっていた。


「ねぇ、グレン。私もそろそろすごい魔法使えるようになりたいな~」

「くすぐったい声出してお願いするんじゃないよ、全く。

 でも、やはりカーラのことが気になるか」

「違うもん、全然そんなんじゃないもん!」分かりやすいやつだな。


「まぁ、仕方ない。と言いたいところだがお前には必要ない」

「えぇ~!!なんで~!!」今にも泣きだしそうなシェステに俺は説明するのであった。

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