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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第2章 海洋国家オルヴァート編

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85/108

85限目「海洋国家オルヴァート」

「ザナン国王を見知っているのかい?」

「はい、我らとも交易を許可して下さって、とても寛容で懐深い方でございます」となれば、ザナン国王は敵対よりも共生を重んじるタイプのようだ。是非とも会ってみたいものである。


「そういえば、俺達はオルヴァートについて知識がそう多く無くてな。簡単でいい。知っていることがあれば教えてくれないか?」

「我々は交易をしているといっても、おかのことはあまり見知っているわけではございませぬ。基本的なことしかお教えできませんが、それでも?」


 ああ十分だよと伝えると、ガイエンは語り始めた。

 オルヴァートは主島オルべリア並びに無数の離島によって構成される諸島国家で、行政都市は泰都たいとクジェ。


 魚人族もだが、オルヴァートの民も同様に❝海の民❞と呼ばれ、豊富な海産資源を基に発展してきた国である。独特の生活習慣・文化を持ち、特に食文化はこの世界の中でも特筆すべきものらしい。これは楽しみだ。


 話を聞く限り、穏やかでありつつも生命力にあふれた逞しい民族だという印象だ。

 ただ、最近はハーピーをはじめとした魔獣や、海上を我が物顔で荒らしまわる海賊が増えてきたということで、内心穏やかではないということだった。


 魔獣と海賊か……。治安が悪くなっているのはどういうことだ?どうも現状に関するイメージがちぐはぐな感じで、全体像がつかみにくい。やはり直接確認するしかないか。


「それともう一つ。王には家族がいらっしゃると思うが、それについては何か知っているか?」

「はい、王妃のサーレ様と王女のクシナ様がいらっしゃいます。お二方共この海とそこに生きる民を愛し、聡明でとてもお優しい方ですよ」


 リヴァルダスの話では、『鍵は王女に』ということだった。鍵=竜鱗鉱ということだろうか……。だめだ、悪い方にしか考えが向かないぞ。


「情報ありがとう。紺碧竜のこと、オルヴァートのことに関しては俺達に任してほしい。悪いようにはしない」第三者とはいかないが、割とフラットな情報を獲得できたのはありがたい。難儀しているとあれば助けるのみ!

「こちらこそ多大なる感謝を。あなた方の到来で希望を持つことができました。何卒よろしくお願いいたします」その期待には応えるつもりだ。任せとけ!


「では、先を急ぐので船に戻ることにするよ」もてなしができないことに謝罪をする族長をなだめ、ルダルの案内で船へ帰還した。


 戻った俺は船長に状況を伝えると、彼もただ事ではない雰囲気を感じたらしく、港町クラハへの到着を急ぐために舵を切った。


***********

――港町クラハのとある酒場。

「おい、ハーピー達はどうしてる」荒くれ物のリーダーらしいその男は、睨みつけるように手下を問い質す。

「へ、へいかしら、戻ってきてからそのまんまでさぁ」


「ちっ!使えねぇ。あいつらに発破かけてもう一回向かわせろ!今度失敗したら、てめぇら全員焼き鳥にして食っちまうぞ!って言っとけ!」手に持ったジョッキを机にドンと大きな音を立てて置くと、肉を丸かじりする。


「この分じゃ、例の船ここに着いちゃいますぜ?」別の手下が恐る恐る疑問を口にする。

「それはそれで面倒くせぇが、俺達直々に沈めてやりゃいいだけの話だ。せっかくアルバの旦那のおかげでいい暮らしができてんだ、ここで俺達が役に立つってところをしっかりアピールしとかねぇとな!ハハハ!」そう言うと酒をグビグビと流し込んだ。


***********

 ハーピーの襲撃からさらに数日が経った。その後再度襲撃があったものの、アルスの結界によってこちらは傷一つなく追い返すことができた。

 おかげで順調な船旅である。風雪の激しい冬特有の時化も経験したりするのだが、新しい経験の連続ということもあり、シェステ嬢においてはワクワクが止まらないようである。


 巫女だから?というわけではないのだろうが、三半規管がしっかりしているのか船酔いは全くしないようだ。以前鑑定スキルでシェステを視たが、確かに潜在能力は高かった。本当に成長が楽しみである。

 カーラも漁の手伝いをしていた経験からか、船の揺れも全くものともしない。俺はもちろん大丈夫だ。年の功と言うことにしておいてほしい。


「う~ん、難しいよ~」シェステが顔をしかめながら嘆きの声を上げる。

 現在時化の真っ最中で船が大きく揺れる中、空中を移動する無数の水玉目掛けて命中させるという修練を行っている。以前は動かない的に当てる修練が主だったが、ここ最近は動く的に対しての命中精度を上げる修練を増やしている。


 今回は船が揺れるという姿勢が安定しない状況だ。なかなかそういう状況に出くわすことはないので、貴重な修練が可能になった。


「何事も経験ですよ、シェステ君。これに慣れておくと普段の修練がいかに簡単か身に染みますよ~」過酷な環境での修練は通常に戻った時にギャップで感覚が底上げできるので、今後も時折入れていきたい。


 実際、難しいと嘆いている割には水玉の軌道をコントロールできている。現在は的中率3割と言ったところか。この状況で3割なら通常的中率は6割以上まで上がるだろう。


 カーラは侍へジョブチェンジしたせいか、この状況でもかなり適応できている。その機動力の高さから船の揺れよりも速く動けるからだろう。次々に水玉を正確に斬っていく。もう少し難易度を上げてみるか。


「カーラ、その速度では物足りないだろう。水玉の移動速度を上げるから気を抜くなよ」

「はい、師匠!」カーラの段階が一つ上がったことで、シェステも気合いが入ったようである。真剣な表情で《水球ウォーターボール》を放っていく。


 そして何事もなくさらに数日が経った頃、船長から陸地が見えてきたとの連絡がきた。

 いよいよ港町クラハ、海洋国家オルヴァートへの到着となる。

 が、そう簡単にとはいかない。目前には無数のハーピーの群れ、そして今回はそれに加え十数隻の船団が待ち構えていた。

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