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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第1章 アルべリオン大陸編

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75限目「乾杯」

「皆、国難をよくぞ耐え抜いた!今日は互いを称え、楽しい宴にしよう!乾杯!」準備が終わりルドルフの第一声で宴が始まった。

 料理を堪能する者、お互いを労い涙する者、雪見酒と洒落込む者、歌い踊り歓声を上げる者と皆思い思いの形で宴を楽しんでいる。


 会場の隅に用意された席でカーライルとゴルドー、ジーランドの3名は、感慨深くその様子を眺める。

「夢であった」カーライルはそう言うと、ワインを注いだグラスを一気に飲み干した。


「市井の者とこのように同じ場所で、同じ空気を吸い、平和な時を共有する。何とも心地よい」空になったグラスに、持ち込んだヴィンテージワインを注ぐ。

「我々が身を粉にして働くのも、この光景を目にするためかも知れませんな」ジーランドも残りのワインを飲み干す。

「その通り。でなければ嫌われ役を買っている甲斐もありませぬ!」ゴルドーがワインを勢いよく流し込む様子を見て、2人が笑う。


「明日からはまた忙しくなる。この光景を目に焼き付け、日々の糧としてお互い頑張ろうではないか」カーライルの言葉に3人はグラスを掲げ、捧げる対象を口にする。


「ええ、国に」とゴルドー。

「平和に」とジーランド。

「民に」とカーライル。


「「「乾杯」」」3人は会場の人々にグラスを向けると、一気に中身を飲み干すのであった。



「おい、ルドルフ!」パトリックがルドルフの肩に手を置くが、ルドルフに払いのけられてしまう。

「チッ、馴れ馴れしいぞ。なんだ、もう出来上がってるのか?」あからさまに嫌がるルドルフを全く気にする様子はなく、パトリックは上機嫌であった。


「子供達もいるんだ。その態度は感心しないぞ?それに、今日は互いを称える楽しい宴なんだろう?今日ぐらいは笑顔で付き合え!」自分の言った言葉を引き合いに出され、ルドルフはぐうの音も出ない。


「はぁ~」そう溜め息を一つつくと、諦めた顔つきになった。

「仕方ないな。まぁ、❝今日❞ぐらいは!付き合ってやるよ。

 そういえば、グレンが『お前の喧嘩友達も呼んである』と言ってたんだが、いったい誰のことなんだ?」腕を組んで本気で考え込んでいるルドルフに、パトリックはくすくすと笑いながらその答えを教える。


「それはな、たぶん❝俺❞のことだ」自分のことを指差しながらパトリックがアピールするのだが。

「はぁ?お前?何の冗談だよ!」やめろと言わんばかりに、パトリックの指をつかんで強引に下へ突き放す。


「お前こそ何を言ってんだ!会うたびに俺達は喧嘩してただろうが!」

「喧嘩は分かるが、❝友達❞ってのが気に食わん!」

「分かった分かった、なら喧嘩❝仲間❞に修正しとこう」ハッと2人が周囲を見渡すと、一連のやり取りを聴きながらくすくす笑っていた者達から逃げるように移動をする。


「やめだやめだ!今日はせっかくグレンが美味い料理を用意してくれたんだ。こんなことしてる暇はない」

「そうだな、おい、あっちにエールに合いそうなものがあるぞ!」

「馬鹿やろう!あっちの方がエールに合う!」2人はそうして味勝負に出かけるのであった。



「グレン殿!」ルノーから呼び止められる。ルノーの座るテーブルでは、《聖なる風》の面々が料理を広げ、大いに宴を楽しんでいる様子だった。うん、楽しくて何より。

「皆さん楽しんでらっしゃいますか?」

「いや~、こんなにエールに合うなんて、どの料理も最高ですな!」ルノーは酒がメインのタイプなようだ。


「グレン殿、うちの男共は酒が飲めればなんでもいい馬鹿舌なんで、どうもすいません」済まなさそうにノエルが頭を下げる。

「いえいえ、楽しんで頂ければそれで十分ですよ。それにしても皆さん、❝殿❞付けはやめませんか?」3人が顔を見合わせ、仲良く頷く。


「グレンさんはお料理上手ですね」

「ありがとうございます。長い間旅に出ていたので、自然と慣れてしまいましてね。それに魔法使いだと、色々と学ぶことがありまして」


「それ分かります!段取りとか調味料の配合とか、術式を組むときに役立ちますよね!」実際、魔法と料理はよく似ている。複数の過程や術式を上手く組み合わせ、効率よく調和させなくては、高度な魔法ほど味の不味さが際立ってしまう。


「そういえば、ノエルさん《反逆者への神罰(アンテノーラ)》を使われてましたよね?ということは、他の氷結魔法も?」


「いえ、私はまだ第2円の魔法しか使えていません。師匠から指導を受けはしたのですが……」先日触れたが、最上位の氷結魔法は段階別に4種類ある。第2円とはいえ、この若さでアンテノーラを使える魔法使いはそうはいないだろう。

 アンテノーラのような高度でマニアックな魔法を学ぼうという若者がいること自体、俺は嬉しくて仕方がない。


 だが、あと2つか……。第3円と第4円の氷結魔法も習得できれば、究極魔法《最終凍結地獄コキュートス》への道が開くのだが。


「いえいえ、第3円の《トロメア》と第4円の《ジュデッカ》も基本となる術式は一緒ですよ。実は少し裏技がありましてね?ゴニョゴニョ……」

「え⁉そんな裏技が!」


「グレンさんすげーな。ノエルと話が盛り上がるなんてよ」ノエルは生粋の魔法オタクらしく、なかなか自分と対等に話せる相手がいないことを常々嘆いているそうだ。

 グレンとの魔法談議に花を咲かせ、目をキラキラさせているノエルに2人は気持ちが温かくなるのを感じた。


「全くだ。良い出会いに恵まれて何とも幸せなこと、この上なしだ!」ルノーが並々と注がれたエールジョッキを掲げる。

「だな!乾杯だ、乾杯!良い出会いに!良い酒に!イェーイ!」イザークは腕を交差させルノーと共に勢いよくエールを胃袋へと流し込むのであった。

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