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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第1章 アルべリオン大陸編

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69限目「クヴァルの最期」

 しかし、俺の防御結界は❝自動展開オート❞である。いくら溶かそうが剝がそうが次から次へと展開されるので、特に問題はない。

 それを見ていた武器なし悪魔が動きを見せる。身体から無数の針を飛ばして攻撃する。もちろん直接ダメージはないのだが、こちらもなかなか特殊な攻撃である。針が触れた場所が金属的な光沢を帯びていく。いや実際金属化しているのだろう。


 槍の悪魔が雷撃を放つと、金属化した部分が激しく光り、様々な方向から伝ってきた雷撃がこちらまで襲い掛かる。それは結界も例外ではない。針に触れた部分が金属化していく。ダメージはないが視界が遮られるので、地味に嫌だ。


 なるほど、近接悪魔がこちらの防御を無力化し、武器なし悪魔が攻撃に有利なフィールドを作り出し、槍の悪魔が雷撃でとどめを刺すということのようだ。理にかなった連携攻撃である。


「フッフッフ、手も足も出まい!このままじわじわと死の恐怖を味わうがよい!」確かに良い連携攻撃なのだが、それだけに残念だ。

 俺が両手を突き出すと、近接・武器なし双方とも両端の壁に吹き飛ばされる。


「まずは一人。《石化ペトリフィケーション》」一気に移動してそう言うと武器なし悪魔の身体が一瞬で灰色の石像と化す。槍の悪魔が俺に向けて雷撃を放つが、意に介さず次の獲物へと距離を詰める。


「二人目」爪で反撃してきた悪魔の腕を、風魔法で鋭利な刃物と化した左手で払いのけると、悪魔の腕は肘から切り飛ばされていく。すかさず2人目も一瞬で石像へ変化した。


 槍の悪魔が連続で雷撃を放つ。が、もはや避ける必要もない。俺の周囲に展開される防御結界が雷撃を全て受け流していく。

 完成された連携攻撃ほど、一角が崩れた時の反動は大きい。対策が施されてなければ、効果は半分以下となる。

 それを知ってか知らずか、俺が一歩また一歩と近づく度に槍の悪魔は怯えの色をもって後ずさりしていく。


「貴様!」最後の抵抗として槍の本来の使い方として刺突を繰り出すが、それこそ愚策である。全てを結界に遮られる。

「連携は高評価ですが、私と遊びたいならもう少し工夫が必要ですね」と俺が囁くと、最後の一人も石像と化した。


「さて、寄り道するのもあんまり良くないな」俺は足取り軽く次の階へと急いだ。



――都内某所。《バルーカファミリー》の本拠地ホーム

「クヴァル!やめろ、こっちに戻ってこい!」下がれとパトリックに言われたにもかかわらず、パトリックとカーラを押しのけルドルフは手を差し伸べ続けるが、クヴァル本人はもはやその気はないようだ。


「この欲は俺のものだ。罪も俺のものだ。俺があの世に全部持ってくぞ!さぁ、止められるものなら止めて見せろ!」彼が纏う黒い靄がクヴァルを飲み込み、一気に人ならざる者に形を変えていく。


 4本の腕それぞれに刀を持った亡者。それが変異した新たなるクヴァルの姿、魔人クヴァルの誕生であった。


「ああなってしまってはもはやクヴァルはこっちには戻ってこれん。お前の気持ちを酌んで、せめて安らかに眠らせてやる」パトリックがそう言うと、差し伸べていた手を下ろし、後方へと黙って下がっていく。

「頼む」そう一言呟くルドルフ。


 その言葉を合図にパトリックとカーラが攻撃を仕掛ける。パトリックが左中段から、カーラが右上段から斬撃を叩きつけるが、左右2本の刀でそれぞれの刀を受け止める。


 すると直後に魔人クヴァルは両サイドのうち1本の刀で切りつける。しばらくはそのような打ち合いが続く。二刀流の剣士を2人同時に相手するようなものだ。頭は1つなのに器用に刀を捌いている。


「こやつ、なかなかの実力だ。カーラ君、行けるか?」

「はい!先程の魔人よりは強いですが、パワーは我々の方が上だと思います。目がついていくならば、ゴリ押しでも構わぬかと!」

「なかなか豪胆な作戦だ。気に入った!一気に行くぞ!」


「おお~~!!」「はぁ~~!!」2人はそれぞれの獲物に力を込める。

魔人クヴァルは2人の気合いに反応するように、初めて構えを取る。

 右半身を少し後方にずらし、左半身の2本の腕を前方へ向ける。


 最初にカーラが切り込む。魔人クヴァルは右側2本の腕を左右に開くと交差させ上段からの攻撃を受け止める。すると力を抜き素早く下へと受け流し、カーラの体を崩しにかかる。


 カーラの動きから一拍ずらしパトリックが攻撃を開始する。ブロードソードによる渾身の左下段からの切り上げに魔人クヴァルは左側の刀を2本揃えさらに下段から打ち上げ、こちらもパトリックの体を崩しにかかる。


 カーラは体を崩されやや前傾姿勢になるのだが、右足に力を込め踏ん張るとそのまま刀を切り返しVの字の形に切り上げる。剣先を躱すために大きく軌道を変えた魔人クヴァルの2刀の隙間に刺突を繰り出し、そのままぐるりと円を描くように刀を回転させる。


 魔人クヴァルの腕がねじれ刀を手放す。その隙にカーラは右上への逆袈裟切りを仕掛けるのだが、魔人クヴァルはねじれた腕のまま瞬時に獲物を逆手に持ち替えていた。ガキンという音と共に刃から火花が飛び散る。

「くっ、よくやる!」カーラはなかなか押し切れぬ悔しさを滲ませる。


 パトリックは、左下からの体崩しを見越していたのか力任せに切り上げの軌道を変え、下段に振り下ろす。ザンと床に刀が刺さり、パトリックは左足で上から踏みつける。抜けなくなった刀を手放した瞬間、魔人クヴァルの体が崩れる。


「カーラ君!今だ!」2人はアイコンタクトをすると、カーラは左上へ、パトリックは右上へと切り上げる。交差した斬撃により、黒い血液をまき散らすと魔人クヴァルはとどめを刺される。すると全身から黒い靄が激しく吹き出し、元のクヴァルへと戻る。


「ちっ、負けちまったか。全く、つまらん人生だったぜ……」力なく舌打ちをすると、豪華な意匠の天井を見ながらクヴァルが呟く。

「クヴァル!後のことは心配するな!俺は、俺は生きるからな」後方から駆け寄ってきたルドルフが彼を抱き起し言葉をかける。


「当たり前だ。約束は守れよ。じゃないと化けて……出てやる……」そう言ってクヴァルは息を引き取った。

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