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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第1章 アルべリオン大陸編

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64限目「革新者《聖なる風》」

――都内某所。

「この光は……、来た!合図だ!」軍の兵士が口にする。

「グハッ」それと同時に、あれだけ好戦的な様子だった男が、胸を押さえて苦しみだした。白い光が強くなるにつれ、足がもつれ膝と手を地面に突き、苦しそうに大きく荒く呼吸をする。


「いいか、制圧まで気を許すなよ!」男は光の強さがある程度高まったところでとうとう力尽きる。すると身体から、黒い靄が吹き出し消失した。

 憑りついた悪魔が下級だったらしく、《魔人化デモナイズ》に至らなかったようである。

「よし、今だ!錠をかけろ!」手錠をかけ拘束する。他の場所でも次々に暴徒が拘束されていった。


 そして、それを物陰から観ていた《バルーカファミリー》の構成員もギルドによって拘束される。

「俺が何をしたって言うんだ!」拘束されても全く大人しくなる様子がない。

「お前らがあいつを連れてきたんだろうが!悪事を働くのも大概にしろ!」見かねて、ツェンが声を荒げる。


 辺りを見回し、声のする方を見ると見知った顔を見つけて、大声を張り上げる。

「ツェン、貴様か!覚えてろよ!絶対にタダじゃ済まねぇからな!」唾を吐き、捨て台詞を言いながら連行されていった。



――主都西部の平原。

 悪魔の軍勢が大挙して迫っていた平原に《聖なる風》は転移していた。

 すると、少しして主都での異変に気が付き後ろを向く3人。

「おいおい、あれって……」《斥候スカウト》の上級職である《特務兵レンジャー》のイザークが呟く。


「間違いない、《聖域サンクチュアリ》だな。主都まるごととは恐れ入る。あそこまでの結界は師匠でも難しいと思う」《高位魔導師ハイウィザード》ノエルが淡々と感想を言う。

「《大魔導師グランウィザード》と言われるクラウディア様でもか?あのおっさん、メチャクチャだ……」イザークが口あんぐりといった様子で呆れている。


「ははは、今更って言う話だ。寝室の結界の件でもう分かってたことじゃないか。つまり、我々はまだまだ世界を知らぬ蛙ということさ。

 どちらにしろ久々の大仕事だ。我らは今できることを全力でやろうじゃないか!」《盾役タンク》兼《攻撃役アタッカー》のリーダー、《要塞フォートレス》の二つ名を持つルノーが大らかに笑う。


「しかし、この状況だと偵察もへったくれもないぜ。レンジャーの名が泣いちまう」押し寄せる悪魔の数が尋常じゃない。だが幸いというか平原で隠れる場所もないので、偵察いらずなのだ。


「そう腐るな。お前は《弓兵アーチャー》としても超一流なんだ。敵を確実に減らせる仲間がいると心強いんだがな」

「分かった、分かった!お前ら後で泣いて感謝させるからな!ちきしょう!」イザークが弓の準備をする。


「後方に対する憂いは全くない。まずは数を一気に減らすぞ!みんな、準備はいいか!」

「「OK!」」


 イザークが矢を番えると、ノエルが氷結魔法《氷柱撃アイシクル》を矢に付与する。

「まずは俺から行くぞ!《氷柱乱雨アイシクルレイン》!」イザークが手にしている魔弓には《分身オルターエゴ》の能力があり、使用者の意思で放った矢が無数に分裂し広範囲攻撃を可能とする。氷結魔法を帯びた矢は無数の氷柱の雨と化し敵に襲い掛かる。


「次は私ね。国に仇なす不届き者に、魂魄氷溺こんぱくひょうできの神罰を!《反逆者への神罰(アンテノーラ)》!」背丈以上の長さの長杖スタッフを天に掲げ、ノエルが詠唱する。


 地獄第九圏《氷結地獄コキュートス》には、様々な裏切者に対する裁きの円形域が4つ存在するという。その外側から2番目の区域アンテノーラに由来する最上級の広範囲氷結魔法である、魂さえ凍らせるという冷酷無比の凍結を、一瞬にして大地共々悪魔にもたらす。


「イザーク、ノエルよくやった!最後は私だ」

 イザークとノエルの連携攻撃で数百の悪魔を行動不能にすると、最後に身体を半身にかつブロードソードを右手で後方に構えていたルノーが、全霊の一撃を地面に叩きつける。


「《大地崩壊グラウンドブレイク》!!」氷の大地となった平原は大きな地割れを起こし、氷河が崩壊するかのように巨大なクレバスが口を開き、身動きのとれぬ悪魔達を次々と飲み込んでいく。


「うむ、減ったは減ったが、まだまだいるな。私は地上部隊を叩こう。2人は飛行部隊を頼む!」そう指示をするとルノーは前方へ駆け出す。彼の獲物は、赤く波打つ刀身が美しい《炎の魔剣(フランベルジュ)》。着火イグニッションの掛け声と共に刀身が真っ赤な業火に包まれる。


 彼のジョブは《魔装騎士マジックナイト》。魔剣を利用した剣技で敵を圧倒する。単独で1個大隊に匹敵するその戦闘力はとてもタンクとは思えないほどである。


「うぉ~!!」足に力を込め悪魔達の頭上を飛び越えると、着地の際に地面に魔剣を突き立てる。その瞬間、周囲から複数の火柱が吹き出していく。ルノーを中心に灼熱の海となり、悪魔達は次々に消し炭となっていく。

 さらにその場で回転しながら次々に炎の斬撃を飛ばしていく。ルノーの周囲は悪魔にとってまさに❝地獄❞と化していた。


「リーダー、いつにも増して張り切ってんな。こいつは負けられねぇ!ノエル!」

「ふふふ、そうだね。《気流破壊ウィンドブレイク》」矢に再び魔法を込めると、イザークが上空目掛けて力を込めて放つ。

「喰らいやがれ!《乱気流タービュランス》!!」分裂した矢がそれぞれ激しい気流を纏い、空気の流れをかき乱す。激しい乱気流で制御の利かなくなった飛行部隊は次々と火の海へと墜落していく。

 3人の連携で悪魔達は次々と掃討されていくのであった。



――城内、公王寝室。

 黒い靄とともに現れる影が一つ。将軍パトリックがアルバート、ロベルト、シェステ3人の前に立ち剣を構える。

「貴様、何奴!」パトリックが素性を問うが、当の相手は部屋の中の状況に戸惑いを見せ、耳に入ってない様子だ。

「うむ、これは少々辛い状況ですね……」シェステには聞き覚えのある声。

「あ~!あんたはあの時の!」


「おや?ラザックではお世話になりましたね。お嬢さん」本来ならば《聖域》の中で悪魔が存在することは許されぬはずなのに……。寝室に現れたのは、究極退魔結界の中で不敵に笑みを浮かべるエルガデルであった。

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