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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第1章 アルべリオン大陸編

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52限目「宴の後」

「さっきファミリーは解散したって言ってたが、仲間達はどうなったんだい?」

「ははは、あんたもなかなか節介焼きだな。確かに❝解散❞はしたんだが、他に行き場所なんかないって言うんで、結局俺が丸抱えさ。解散の意味ないだろう?」呆れ顔で豪快に笑うロベルトに釣られて笑ってしまう。


「じゃ、ここで働いているのかい?」

「ああ。ツェン達もそうだが、交代で働いてもらってる。それに空き家を借りてそこを拠点にして運搬業なんかもしてる。中には個別に雇ってもらった奴らもいてな。皆真っ当に働いてるぜ。


 人ってのは変われば変わるもんだな。喧嘩に明け暮れてた昔が嘘のようだ。今はここら辺の見回りや掃除なんかも進んでやってる」日の当たる場所で汗を流して働けている。全員更生できたってことだよな。それは本当によかった。


「そうか。ここに来る時に綺麗な道だと思ったんだが、そういうことだったんだな」清掃が行き届いた空間に住むと心も健康になるという証左なのかもしれない。


「ああ、知り合いの口添えもあって、近々国から援助が出るかもしれねぇ。そうなれば、ちっとは街も変わるかもな」国の援助か。それは一朝一夕ではできないことだ。小さいことからコツコツと。継続は力なりだな!

「それはすごいな!見てる人は見てるってことだ。これは今後も頑張らないといけないんじゃないか?」

「俺ものんびりしたいんだがな。ハハハ!」やり甲斐が見つけられたのはルドルフにとってもこの上ない幸せだろう。この笑顔を見る限り多少の忙しさも苦にはならないって感じだ。



「そういや、晩飯は決まってるのか?どうだ、良ければうちで食べていかないか?」ふふふ、俺に抜かりはない。

「そんなこともあろうかと、今日は晩飯の予定は入れてない。シェステも喜ぶだろう。喜んで一緒させてもらうよ」ちょっと挨拶しに来ただけです、では人として味気ない。久しぶりの再会と新たな出会いの喜びにもう少し浸ろうじゃないか。

「そうか!それはありがたい!」


「実はな、まだ手持ちの肉がまだあるんで、俺達も料理を振る舞いたいと思うんだ。皆で食べようじゃないか」

 猪肉・熊肉の在庫がまだ大量にある。それを使わせてもらおう。子供達もいるからな……甘いものも用意するか。


「よし、ツェン達を借りていいか?食材を調達してくる。カーラは肉料理の準備をお願いできるか?」

「はい!お任せください」そういうと、早速ツェン達に声をかけ買い出しに出かけることにした。


 表に出ると、シェステは習得した魔法を披露して子供達のスターになっていた。調子に乗って派手な魔法を撃たないように釘を刺すと、へへへと笑う。こいつ少し考えてたな。

 シェステはカーラの手伝いを言いつけると、一緒に夕食を食べることができることに大喜びだった。


 今晩のメニューだが、随分と寒くなってきたことだしやはりスープ系は外せない。そこで手はかかるが、ブラウンソースを使った野菜もたっぷりのシチューが一つ目。それとひき肉を使った、子供も大好きハンバーグ。グラタン皿でシチューと合わせて煮込みハンバーグにしてもOKだ。そしていつもの肉の串焼き。酒によく合う。


 贅沢だが、たまにはこういう楽しみもないとな。

 最後に、火加減に少しコツがいるが割と簡単に作れるリンゴ飴をデザートにしようと思う。

 水洗いして水気をふき取ったリンゴに串を指し、後は熱した水飴でコーティングした後冷ますだけなのだが、水飴を作る時は一度熱したら混ぜずに煮詰めること。混ぜて濁ってしまうと固まらなくなってしまうのだ。



 というわけで買い出しから戻った後、料理指導をしながら皆で料理を作る。

 毎度のことで仕方ないことなのだが、やはり美味そうな匂いに釣られて、近くの住民も覗きに来たので振舞いながら皆で食べることにした。予想はしていたので、量は十分である。


 リンゴ飴も最初は失敗していたようだが、上手く作れて何よりだ。水飴の失敗作も飴細工にしてこれはこれで大好評、皆大喜びである。バレンが意外と器用に色んな形に細工するものだから人気者になっていた。


「いや、こういうのも楽しいもんだな。時期を見ながらちょいちょいやっていくか」ルドルフは宴の雰囲気にいたくお気に入りのようだった。経済的な難しさもあるだろうが、可能であればやってほしい。子供達の笑顔で疲れが一気に吹き飛ぶ。


「今日の規模はなかなか難しいだろうが、野菜や魚、肉を焼くだけのものくらいは、皆ワイワイできて楽しいと思うぞ?

 季節ごと、あるいは半年に一度ちょっとした祭りなんかするのもいいかもな。祭りはいいぞ?連帯感も生まれるし、何より計画から片付けまで全てが楽しい!」


「そりゃあいい!周囲の人もこんなに喜んでくれるなら、是非やってみたいな」

「ただあれだぞ?ちゃんとルールを用意して、羽目を外させないこと。皆に楽しんでもらうためには絶対必要だからな?」



「そうだな。ルールは必要だ……」急に表情を曇らせるルドルフ。

「どうかしたのか?」

「済まない。後で部屋まで来てくれるか」そう小声で言うとまた笑顔に戻り、住民達と会話を始めるのであった。



 大盛況の宴も終了し、後片付けを始めるとツェンがやってきて耳打ちをする。

「院長が来てほしいと言ってます。シェステさんのことはあっしが見てますんで行ってきてください」彼はそのままジャンと一緒に片づけを手伝うシェステの所まで行く。

 カーラの方へ視線を遣ると、視線に気付き俺のところまでやってくる。

「ルドルフに呼ばれたんで一緒に来てくれるか?」彼女が頷く。


「ルドルフいるか?カーラも連れてきたが、同席してもいいかな?」院長室の前で一応許可を取る。

「ああ、構わんよ。入ってくれ」入室すると、先程までの笑顔は疾うになく憂いの表情に満ちたルドルフがそこにいた。ソファに座ると、彼も対面に座る。


「祭りの相談ってわけではなさそうだな」俺の言葉で力なく笑うと、こう言葉を続ける。


「俺の勘違いならいいんだが……。あいつら、《バルーカファミリー》が何か企んでやがる」

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