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49限目「《声》再び」

「手に取ってみてもいいかい?」ジアスは興味津々である。

「あぁ、思う存分見てください」彼女は手に取ると色んな角度から観察している。


「あの……」初めてみた竜鱗鉱にカーラも同様の関心を持っていた。俺は簡単にだがあれが《竜鱗鉱》であることと入手の経緯を話した。

「あれがですか……。実在するものだったなんて。私も噂程度にしか知らなくって」やはり一般人にとってはその程度のものだったんだな。


「そうだろうよ。私だって実物を見るのはこれが2個目だ。売却目的で持ち込まれたものを鑑定するのが館長の役目でもあるんだが、私が見たものは全て偽物でね。本物だって、鑑定の参考にするために王家所蔵のものを一度見せてもらったきりだ。

 生きてる間にまた本物を見れるなんて、長生きしてみるもんだね」


「ゼトも同じこと言ってましたよ?」

「そうかい、あいつにとっては本物を見る機会なんて本来なかったはずだ。全くあいつも幸せ者だ」


「だがな、納得いかんこともある。これが❝本物❞だと疑わんお前さんのことだよ。

 私は本物を見ている。だからこれが❝本物❞だと分かる。だがあんたは、いやゼトもだ。何故一度も見たこともないものを❝本物❞だと言い切れる?断定できる?


 ゼトからは『竜鱗鉱の実物を見せてもらった。お主も見せてもらうといい』と連絡を受けただけで、詳細は聞いておらん。そこの辺りを聞きたいんだが、教えてもらえるかい?

 事と次第によっちゃあ、王家との接触に力を貸せると思うんだが」うん、少しだけ怖いです。


「あまり大っぴらには聞かせられない話なんで、ゼトも詳細は話せなかったんでしょう。だが、あなたに話しても良いものでしょうか?これははっきり言って国家の枠を超える案件です。ランクを付けるならSSSトリプルエス相当ですよ?」


「馬鹿言っちゃいけないよ。そんな案件聞いたことも見たこともない」それはそうだろう。途方もなさ過ぎて、まぁ十中八九、与太話として認知される。まぁゼトがせっかく推薦状を書いてくれたんだ。教えても問題なかろう。


「ジアス館長、このことについては絶対に秘密にして頂けるなら教えましょう。カーラもそこのところよろしくな」2人とも真剣な顔で頷いたので、ゼトの家で起きたこと。それについての考察も含め2人に話した。


「おいおい、面白い話ではある。あるがその話を信じろと?無茶にもほどがある」ほら見たことか。なのでダメ押しです。

「そういう感想になるということは、こちらも想定してましたので一つ試してみようじゃないですか。

 シェステ、またあれに触ってほしいんだが、頼めるか?」


「うん、いいよ?薄目で触るんだよね?」嫌がるとも思ったがあっさり許可が出た。あの光り方は尋常じゃないからな。注意しないと。


「今からシェステに触れてもらいますが、光り方が凄まじいので目を瞑るか目を開くなら薄目で頼みます」

「了解した」

「分かりました」2人の了解を取ったところで、久しぶりの竜との邂逅だ。


「では頼む」シェステが竜鱗鉱を手に取ると、部屋がまばゆい光に包まれる。

「どういう原理だ。メチャクチャ光るではないか!」想像以上の光り具合にジアスとカーラはびっくりしているようだ。



「(巫女と護り手、それに初顔が2人おるようだ。ほう、旅の同行者とこれはこれは、我が鱗の鑑定人とは!面白い取り合わせだのう。ともあれ、ようやく主都へ到着したのだな)」以前聴いた《声》だ。《緑翠竜》の声。


「あぁ、まだ確定ではないが何とか王城まで行けるかもしれない」

「(ふむ、その件なのだが、肝心の王が今魔法をかけられてしまい、意識がない状態だ。だからお前達と直接会うことが今はできぬのだ)」

「「「「!!」」」」

「俺達と直接会うことができるのか?」それは予想外だ。ほぼほぼ伝説上の存在だ。簡単には会えない、そう思っていた。こちらも聞きたいことさえ聞ければ、直接会う必要もないと思っていたのだ。


「(私に会うには王の力が必要だ。だからお前に王を目覚めさせてほしいと思っている。王を眠らせた者を倒し魔法を解除するのだ……)」ノイズが出てきた、これはヤバイ!

「待て!眠らせたのは誰だ!」

「(……)」あー、ここまでかー。光が弱くなり、《声》も聞こえなくなってしまった。



 4人ともゆっくりと目を開ける。ジアスはソファに身体を預け、目頭を押さえながら上を向いている。カーラは目を開けたまま上を向いて大きな溜息を吐いていた。


「どうです?俺の言ったことは信じてくれますか?」


「信じるより他はあるまい」動かしがたい事実を突きつけられて、ジアスはどうやら観念したらしい。カーラも少し放心気味に頭を縦に振る。

「私だってこの事態を否定できないというだけで、流れに身を任せてるようなもの。だから皆の気持ちはよく分かります」


「いや、済まないね。少し感情的になり過ぎた。だが何というか……、情報量、いや新情報が多すぎてな。知識を追い求める者としてはいささか狭量だった」

「逆の立場なら同じことを言っていたでしょう。気にする必要はありませんよ。どうでしょう。この際水に流して今後のことを話し合った方が、お互い良い関係を築ける気がすると思うんですが」知識を追い求める者にとっては、金や名声より情報を渡すことが何よりの効果がある。知識欲の塊である館長には、何よりのご馳走だっただろう。


「ふっ。いやいやそれはその通りだ!その提案喜んで受け入れようじゃないか。」

「話が分かる人で助かりました。では早速なんですが。

 私達が主都へ来たのは、勿論ギルドの要請を受けてのことです。ただそもそもは、シェステのために事情を聞きたいという理由で王家と接触するため。これが一番優先すべきことなんです。

 何か《竜》もしくは《巫女》についての情報をお持ちではないですか?」


「❝知識❞を扱う者として、それに是非とも協力してやりたいのだがな……。残念ながら私にはそれに関する情報を持ち合わせていない。

 いや待てよ。ひょっとすると禁書庫には何か文献があるかもしれん」


「❝禁書庫❞ですか?ですが禁書庫というぐらいだから、そう簡単には入室できないですよね?」

「その通りだ。この竜鱗鉱に関しては王家、とりわけ公王陛下の専管事項であり、禁書庫もまた完全に王家所管なんだ。しかも禁書庫は城内にある。陛下の許しなしでは入ることもできない」自分も入りたそうな顔をしているな。


 シェステの担う役割を正確に把握したい。でなければシェステを親に会わせることと、俺が元の世界に戻るという2つの目的達成への道が遠のいてしまう。


「だが肝心の陛下は謎の昏睡状態で会えない。それでも接触をしたいということかな?」

「そうです。陛下が狙われた。陛下そのものが狙いなのかどうかは分かりませんが、どちらにしろ陛下を起点として様々なルートで問題が生じています。陛下の目覚めが現時点での最優先事項でしょう。そして、おそらくこの国における問題解決にもつながると私は考えています」

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