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47限目「ゼトからの手紙」

「ほぉ豚肉料理か!これは珍しい」豚は、猪を家畜化するために品種改良したものだ。より食用に適しているし、旨味・甘み・柔らかさ、いずれも猪肉とは別の美味しさがある。この味を覚えるとシェステが豚肉にハマってしまうんじゃないか?

 やばいな、どんどんシェステさんがグルメになってしまいます。

 とはいえ禁止する理由はないし、諦めるか。豚肉もしっかり仕入れなくちゃいけないんでしょうね。ははは、レシピも思い出しとかないとな。


 ここの屋台は、豚の角煮まんを提供している。豚肉をひき肉にして野菜や薬味と一緒に練り、饅頭のあんとして包んで蒸し上げるものが一般的だが、ここは豚の角煮が中身だ。豚のブロック肉を調味料と一緒に甘く煮込んだもので、脂身の旨味が絶品である。人によってはマスタードをつけて食べる。


 いきなりこれを食べるんかい!豚肉料理のハードルが上がってしまうことを危惧する俺でした。


「はふ、はふ、ぱくっ!うっ」

「うっ?」

「うま~~い!!そしてやわらか~~い!!ね、これすごいよ、グレン!」俺の身体がシェステに思いっきり揺さぶられる。

「分かってる、分かってま~す~。今度作りま~す~」この味は悪魔的な魅力があるよな。カーラは笑いを一生懸命堪えていた。


 肉の角煮まん大戦の後、やれ飴菓子だ、苺ジュースだと付き合わされました。飲食ばっかりだな、オイ!

 まぁ初日だし、明日はもうちょっと他のものも見て回れるはずだ。


「さてと、今日はひとまずここまでにしておこう。シェステ、晩御飯もあるんだからもう我慢しなきゃだめですよ?じゃないと、超びっくりなご馳走が食べれなくなっちゃいますぞ?」今日一日でシェステの味覚が驚きで爆発しちゃうかもな!


「ええ~、何それ!!わかった、我慢する!」料理の力は偉大だな。シェステの頭の中の優先順位ってどうなってるのやら。

 確かに、料理というのは味覚・視覚・嗅覚はもちろん、触覚・聴覚の五感が一度で刺激される。優先順位が1位になっても仕方ないかもな。娯楽が決して多いとは言えない世の中だ。思いっきり楽しめるものがあるというのは幸せかもしれない。


 というわけで、今日は3人とも宿に戻った。



「お帰りなさいませ。ギルドの方から伝言を預かっております。『マジックボックスを確認してほしい。ゼトより』だそうです」伝言を聞いた後、部屋へと向かう。


「さて、マジックボックスはと」伝言からすると、手紙が届いているはずだ。亜空間からボックスを取り出す。何か分かったのだろうか。不穏なものでなければいいのだが。

 ボックスを開けると、書状が2通入っていた。1通はゼトからの手紙だった。


***********

「グレン、シェステ。久方ぶりじゃな。お前さん達のことだ。シェステ含めてきっと元気いっぱいじゃろう。

 ジェイドから連絡をもらって、話は聞いた。お前さん行く先々で大活躍だな!

 リーナに続きジェイドも救ってもらって本当に感謝する。これで完全に頭が上がらんようになってしまったな。ははは、困ったもんじゃ。


 さて。もらった恩を少しでも返さねばならん。前に言った通り、王立図書館長には話を通しておいた。名をジアス=アグレトという。わしからの推薦状を用意した。これを見せてくれれば喜んで会ってくれるじゃろう。


 あと、王家への謁見じゃがギルドの方で根回しをしとるらしい。詳細はそこで聞くといい。


 今主都はきな臭いことになっておる。町中であっても注意した方がいい。


 では、また会えるのを楽しみにしとる。  ゼトより」


***********

 もう1通はゼトからの推薦状ってことだな。明日は図書館へ行ってみよう。文献から何か情報が得られないか、非常に気になる。

 あとは……。孤児院にも行きたいところだ。心配がないわけではないが何とかなるか。よし、明日の訪問先はこれで決まりだな。


「2人とも、明日の訪問先だが……」シェステとカーラに明日の予定を伝える。シェステはジャン達に会えるのが楽しみなようだ。カーラは図書館に興味があるらしい。意外だというと怒られそうなので黙っておこう。


 その夜、晩飯はこっそり肉料理をオーダーしておいた。様々なジャンルの料理が並ぶ。見たことのない料理にシェステはあーだこーだ騒ぎながら、ほっぺを押さえるのに暇がない。ともあれ念願のご馳走(肉料理)食べれて良かったな!


 シェステは大満足の様子で、早々にベッドで休んでいる。が、夢の中で食事の続きでもしているのか、手を動かしてはほっぺを押さえている。


「ふふふ、本当に楽しそうに食べてましたよね」ほっぺを押さえるシェステを眺めながら、カーラも幸せをお裾分けしてもらっている。

「幸せいっぱいって感じだったもんな。美味しい料理、特に肉料理を食べていれば機嫌も極上になるし苦労しなくていいから、ほんと助かるわ~。反抗期来ても負ける気がしない!」カーラと2人で静かに笑い合う。


「そっちは何か連絡来たかい?」カーラにも届いていたらしい。

「はい、スタンレーさんから。私達が出発してから数日経って馬車の行列とすれ違ったじゃないですか?あれがやはり支援物資だったそうです。無事に届いたそうですよ」ゴルドーが言っていた物資か。護衛はいたようだが、よく襲撃を受けなかったもんだ。いや、中身を知ってるからか?いや、勘繰るのは今はやめておこう。


「それは良かった。あの量だと物資面はひとまず大丈夫そうだな」

「はい、第2王子ロベルト様からの強い要請だったらしく、皆感謝していたと」若干アピールが強い気はするが、住民に対して役に立つかどうか。それ以外はあまり関係ない話だ。とにかく復興が進むことを期待しよう。


「さて、次に必要なのは❝人❞なんだが、そっちについてはどうなっているか分かるかい?」物資は大切だ。だが、それを活かせる人材もまた復興には欠かせない❝資源❞なのだ。


「実はグレンのおかげでそこそこ物資は補充されて、少し供給過剰気味だそうです。余剰分は災害用の準備物資として保管するようですので、有効活用されると思います。ただおっしゃる通り、人手が足りていないようです」


 災害初期は何が必要なのかの見通しが立たないことが多い。だからとにかく送れ!ということになる。不足するよりはいいのだが、余剰分が多すぎるとそれの整理に人手がとられる。食料だと腐らせてしまうこともある。そこには注意が必要だ。


「こういう時はマッチングが難しい。すぐに人手の手配を急いだほうがいいと思うぞ?」

「そうですね。スタンレーさんに伝えておきます」メイゼルの復興についてカーラも心配しているに違いない。だが、状況が許すなら心から楽しむべきだと思う。今はまさにその時だろう。


「すまんな、ちょっと真面目な話になってしまった。明日は明日でゆっくり街を巡ろう。興味があるんだろう?図書館。楽しみにしようじゃないか」

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