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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第1章 アルべリオン大陸編

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45限目「シェステ vs. カーラ」

「その前段階としてのそれぞれの目標だが、まずシェステ」

「はい!」ノリノリでピシッと手を挙げる。完全に機嫌は良くなったようだ。


「今やってる風魔法の修練だが、的の中心に当てられるようになること。そしてその次は的を動かす。的はアルスだ。アルスには防御結界を張ってもらうからダメージは気にせずガンガンやんなさい。アルスを捉えることができるようになれば合格だ」

「分かりました、先生!」俺に敬礼するシェステ。どこで覚えたんだ?


「次はカーラだが、一度に斬れる水玉を今の倍に増やすこと。そして次に、シェステ同様的を動かす。動かすことで水玉の形状も変わるし、真芯も捉えるのが難しくなる。一気に難易度が上がるから心して臨むように」

「分かりました、師匠!」カーラも俺に敬礼する。教師というより、軍の上官だな。やる気になっているから気にしないようにしよう。


「では2人とも朝食後に早速今日の修練を開始するから、頑張りなさい」

「「はい!」」2人とも息ぴったりだ。


 1人でやる修練も大切だが、競う相手がいるとまた刺激になる場合がある。その点2人はお互い良き仲間でありライバルとして、いい関係になったようである。

 朝食の準備と後片付けの間、お互いのメニューについて意見交換をしている。そういうことができるのも2人での修練だからこそだ。


 年齢はシェステの方が若いのだが、一応姉弟子ってことになるのか。これまた可愛らしい先輩だな。



 さらに日数が経過した。あの夜以来、我々への襲撃はない。どうやら警戒されてしまったらしい。襲撃者が誰一人として戻らないのだ。仕方ないことではある。また夜中の襲撃となると、シェステの機嫌が悪くなる。想定内の話ではあるので、気にせず主都へと歩を進める。

 修練も大詰めだ。いよいよ旅の終わりも近い。主都まであと2日といった場所までやってきたからだ。


「さぁお二方。もうすぐサフィールに到着する。ここまで修練を切磋琢磨してよく頑張った!2人とも見違えるほど上達したぞ。課題はクリア、合格とする!

 よって、以前言っていた❝模擬戦❞を2人にはやってもらう」


「「おお!」」2人は顔を見合わせると笑顔でハイタッチする。

「負けないよ!」真剣な表情でシェステが拳を突き出す。

「私こそ!全力で行かせてもらいます。先輩」挑戦的な笑みを浮かべてカーラが拳を合わせる。2人とも気合十分ですね。修練の成果をきちんと見守らせて頂きます!


「では、模擬戦のルールだ。2人にはそれぞれ防御術式をアルスが付与する。

 開始の合図とともにお互いを攻撃。シェステはアルスの補助魔法付与を許可。アルスの攻撃補助は不許可とする。

 アルスの防御術式は強力だ。ダメージは心配せず全力で攻撃していい。万が一危険な状況になったら俺が止める。

 シェステの魔法でカーラが直接被弾するか、カーラの刀がシェステに触れた時点で模擬戦終了とする。質問は?」


「先生!模擬戦は1回ですか?」シェステが挙手する。

「その通り、一発勝負だ。実際の戦闘では命を懸ける場合がほとんどだ。緊張感をもってこの一戦に臨んで欲しい」2人とも頷く。


「それでは2人とも離れてくれ」開けた土地でかなり離れた状態の2人。

「構え!」シェステが魔法杖を手に取り構え、カーラも前傾姿勢で静かに刀の束に右手を添える。アルスが2人に防御術式を付与する。

「模擬戦、始め!」俺の合図と同時にアルスが身体強化バフをかけ、シェステが杖の《詠唱速度上昇クイックキャスト》を利用して魔法詠唱し、掌2つ分の《火球ファイアーボール》を3個出す。カーラはシェステが火魔法を唱えたことに一瞬表情を変えるが、勢いを殺さず一直線にシェステへ向かう。


 するとシェステは3個の魔法を合体させて1つの大きな火球を生成しカーラ目掛けて放出する。

 カーラはそれでも走る勢いを殺さない。火球が目前に近付いたその時。一閃、刀を振り抜くと火球は綺麗に左右2つに離れていく。だが炎の合間から見えるシェステは両手を前に出し、次の一手を繰り出していた。


「「《風撃ウィンドショット》!」」そこで初めて動きを止めるカーラ。しかし、凄まじい速さで向かってくるウィンドショットの軌道は自分に向かって放たれたものではなかった。


「まずい!」カーラは後方へ素早く飛びあがる。先程斬ったはずの火球の燃え残りに2発のウィンドショットが重なると爆発が起こり、爆風がカーラを飲み込む。


 シェステがここぞとばかりに畳み込む。

「いっっけぇぇ~~!」ウィンドショットを6発、カーラ目掛けて叩き込んだ。

 カーラ付近に次々と着弾するものの土煙を上げるだけで当たってはいないようである。カーラは即座にその場で回転しつつ刀でさらに土煙を上げる。視界を遮るつもりだ。


 シェステもその間にウィンドショットを連続詠唱し、土煙が立つ場所へ向かってさらに叩き込む。が、それがいけなかった。

「《真空飛斬エアスラッシュ》」土煙の中から斬撃が飛んできたのである。


 残念ながらシェステはまだ防御魔法を覚えていない。このままでは直撃する。斬撃に驚いたシェステは思わず地面に伏せてしまった。カーラがそれを逃すはずもなく、高速移動でシェステまで一気に距離を詰め、背中をチョンと刀で触れる。


「勝負あり、そこまで!」そう宣言して2人の所へ移動する。


「あんなのず~る~い~!悔しい~~!」シェステはまた地面を転がっています。

「ごめんなさい、黙ってて」地面に膝を付け手を差し出すカーラに、ほっぺを膨らませつつ手を取り一緒に立ち上がる。


「カーラ、俺にも内緒にしていたな?この不届き者め」からかう感じでそう言うと、ばつが悪そうにしている。

「すいません。できるかどうかはわからなかったんですが、あまりにもシェステの攻撃がすごかったので、試させて頂きました」ぶっつけ本番だったのか。すごいな。やはり侍にジョブアップしてから集中力に加え、技の制御が格段に上がっているようだ。


「シェステも惜しかったな。アルスがいるから本来は必要ないんだが、防御魔法で斬撃を防げていたなら勝敗は分からなかっただろう。

 とにかくすごい模擬戦だった。見てて楽しかったぞ?改めて、よくぞここまで成長した。褒めてあげます」シェステを抱きかかえ、カーラとも握手をし、十分すぎる成果を称える。


 2人ともとても嬉しそうだ。実に有意義な旅となった。教え子の成長が間近で見れるのは、教師としての最大の特権だとしみじみ思う俺だった。

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― 新着の感想 ―
良い勝負でした! カーラさんお見事! シェステさん残念でした! 《真空飛斬エアスラッシュ》をここで決めるとは……。 カーラさんは本番や窮地に強いタイプなのかもしれませんね♪
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