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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第1章 アルべリオン大陸編

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42限目「侍」

「せっかくだ。鑑定してみよう」甚だ唐突ではあるが、精神的に大きい変化を見せる時、それはジョブが開花するきっかけになる。

 剣士という職業クラス、これは初期の大きい括りでの職業区分である。さらに特殊技能スキルなどを発現させ上級の能力を得たものを職域ジョブと言う。細分化された上位職というイメージでいいだろう。


 通常はギルドで鑑定スキルや鑑定アイテムを通じて判定される。基本自己申告なので定期的に鑑定する習慣をつけておかないと、万が一ジョブが発現した場合に気付けないという非常にもったいないことになる。


「私ですか?そんな……まだそんな段階ではないと思うのですが」カーラさん不信感丸出しです。


「俺は鑑定スキルを持っている。ははは、別に金を取ろうってわけではないよ?変化が無くてもいいじゃないか、受けるだけ受けてみても」突然の申し出にしばらく迷っていたが受け入れてくれた。


「ではいくよ?《鑑定アプレイザル》」俺の右手がぼんやり光ると一瞬で鑑定が終了する。

「どうですか?」特に異常ないでしょ?と言わんばかりの疑いの眼差しで見てくるカーラに、勝ち誇った様子で、彼女を見つめる。

「カーラ君、新しいジョブが発現した。今日から君は《さむらい》だ」


「え、え~~!!」カーラの声に気が付いたシェステが駆け寄ってくる。

「どうしたの?」いや、きみはちゃんと修行してなさいよ!ま、いいか。


「カーラがな。新しいジョブに目覚めたんだ。今日から侍カーラ様ですよー」

「ええ、ほんと?侍カーラ様おめでとう!」彼女に飛びついて喜ぶシェステだった。

「ありがとう!って、その呼び方やめて下さい!」

「いいな~!新しいジョブ、僕は?僕は?」聴きたいのは分かります。羨ましいよね。


「シェステはな、まだだ。魔法使いのままです。修練を頑張ってくださいねー」

《魔法使い(メイジ)》のクラスは意外と敷居が高い。肉体的な強さと精神的な強さ、どちらが得難いものかと言うと後者である。さらに体内にどれだけの魔力を保有できるかにも大きく左右される。


 魔法使いというクラスは得るだけでも相当レアなのだ。さらにその上のジョブともなれば到達が難しいのは分かってもらえるだろう。

「そんなぁ~」残念そうだな。こればっかりはどうしようもないから、我慢してもらうしか……。あ、そうだった!


「そういえば、シェステに伝えておかなければならないことがあった」そう、とても大事なことだ。びっくりするかな?

「❝アルス❞のことだ。実はアルスにもジョブが発現した。《上位守護者ハイガーディアン》になったんだ」


 これは大きい。ガーディアンでも十分な能力を持っていたアルスだが、さらに強力なスキルを獲得している。防御系統の究極形も見えてきた。全てはシェステの能力上昇によるものだ。誇っていいぞ。


「ええ?ほんと?やったぁ!」

「これはな、シェステが強くなったからだぞ?だからジョブも、ちゃんと精進すれば近いうちに開花するかもしれん。頑張れよ?」クラスの性格上、次のジョブまでに到達する労力はかなりのものだが、シェステなら大丈夫だろう。

「うん、頑張る!」そう言うと自分で修練の続きを始めた。真面目でいい子だ。


「これで強力な盾と矛が揃ったことになる。実にめでたい!」

「はぁ……。私が侍ですか。何か実感湧かないんですけど……」


「《さむらい》というのは、一刀で全てを切り伏せる、剣士の中でも精神力・機動力に長けたジョブだ。さらなる上位ジョブもあるから、精進を欠かさぬようにな」これは楽しみだ。次の上位ジョブ《剣豪けんごう》になれば、超一流の剣士になれるだろう。まだまだ高みはあるが、今はそのジョブを使いこなすことが大事だ。


「ええと……」首をかしげながらカーラが質問してきた。

「次は何をしたらいいんでしょう?」


「ま、いいだろう。今回はサービスということで。そこにある岩を斬ってみてくれないか?」近くに背丈の倍ほどの岩があった。手頃だし、❝侍❞になった実感を持ってほしいという俺からの餞別である。


「この岩ですか?あの……さすがに岩は斬れないのでは……」カーラは常識人だな。

「確かに常識ではそうなるが、カーラはさっき❝侍❞になった。その能力ちからを試したくないかい?

 俺が意地悪してると思って疑わないならそれでもいいが、最初から斬れないと思うのは今後成長できないと断言しよう。まぁ騙されたと思って斬ってみなさい」


 さぁどうぞと俺が右手で勧めるポーズをとると、さすが剣士である。カーラは構えを取り、岩に向かって一閃を叩きつける。音もたてず岩は綺麗に2つに分かたれた。


「え、斬れた」ねー、言ったでしょう?今のあなたには簡単なことです。


「分かってくれたかい?」黙って何度も頷く彼女であった。


 俺は2本の指ををくいっと上に曲げるとカーラの周囲に様々な大きさの水玉が浮かび上がる。

「おめでとう、固体に関してはほぼほぼ何でも斬れる域に達した。

 さて、次はその水玉を全て❝半分❞に斬ってくれ。いいかい?❝半分❞だよ?では始め!」いきなりの指令で混乱する彼女ではあったが、静かに抜刀すると手頃な大きさの水玉をじっと見定めると、切り裂いた。

 はずだったのだが、また元の水玉に戻っていた。


「あれ?」拍子抜けしたように水玉を見つめる。


「今のは真芯を捉えていなかったってことさ。真芯とはどこか、いかに早く捉えるか。その修練ってことになる。まぁ時間も水玉もたくさんある。自分のペースでやるといい。因みにその水玉は半分に斬れないと消えないよ?」


 全てを一刀に切り伏せると言っても、個体もあれば流体もある。そして実体を持たぬものさえある。その全てを斬るのは容易なことではない。やり方の良し悪しのみを捉えるというトライアンドエラーというよりは、考え方の良し悪しを取捨選択し整理するというスクラップアンドビルドの連続であろう。


 全てを教えることはできるが、それでは面白くないし、一番は問題が生じた時に自分で解決できる能力が育たない。自己解決できる能力は全てのクラスにとって必須と言っていい。アドバイザーが常にそばにいるとは限らないのだから。

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― 新着の感想 ―
おおお。カーラさん、お見事でございます♪ これはぜひ剣豪を目指しましょう~♪
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