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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第1章 アルべリオン大陸編

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40限目「修練②」

 翌日。朝食後に早速修練を始めることにした。

 シェステにはいつも通り日課の瞑想を。今回は風の瞑想である。風属性の魔法を想定したイメージを繰り返す。


 そして今回より新しく加わったカーラへのお題もまた瞑想である。

 剣士とは、迷いなく刃を振るう戦士である。心を鍛え心で刀を振るうということを自らに叩き込むという修行から始めることにした。


 最初は己の心と向き合うことから始める。何故刀を振るうのか。刀とはどういう存在かを己に問う。雑念を振り切り自分なりの答えに行き着くことができれば、それだけでも剣士としての格が上がる。

 そしてそれが対魔法戦闘への一つの究極へと至る道なのだ。


 だが、開拓者としてのカーラはすでにAランクを有しており、言うなれば先輩である。本来ならば偉そうな話をする立場ではないが、カーラは俺の膨大な経験値を感覚的に気付いているようである。俺の指示に素直に応じているのもそれが原因だろう。そのはずです。



 さて、シェステの方は瞑想が終わったようである。基本魔法の《風撃ウィンドショット》の練習に移る。四大属性魔法の中では水ほどではないが風魔法も難易度は意外に高い。原因は風魔法というのは目に見えにくい空気を操るという一点にある。

 難易度としては、水→風→炎→土と言ったところだろう。


 風は空気を操るという点で、ある意味水よりも厄介だ。水ならば目の前に水や氷が視認できるため、イメージや感覚の修正が容易である。

 空気は動かすことで草木の揺れ方や水面の波紋などで観測はできるが、あくまで事後的で間接的である。なので完全にイメージ修練の割合が高くなる。

 だが幸いにも不定形であることから、修練においては水属性魔法との親和性が高い。要は水に似た感覚によるイメージがしやすい。空気の性質を知り、空気を❝加工❞する理屈が分かれば後は訓練あるのみである。


 一番多いのは空気の圧縮。圧縮した空気を打ち出すだけで《風撃ウィンドショット》は完成する。しかしそれには精密なコントロールが必要である。イメージは弾丸。それに螺旋回転を加える。

 工程はこれだけなのだが、少しでも形が崩れたり、回転にムラができると明後日の方へと飛んで行ってしまう。最悪暴発もありうる。


 そして弾丸を丸鋸状に加工すれば、全てを切り裂く大気の刃となる。チャクラムを連想できれば訓練は割と容易になる。因みにチャクラムとは中心に穴の開いた、外側が刃に加工された円形の投擲武器である。


 最後に気圧操作。これは風属性の広範囲攻撃魔法にも言えるが、特記すべきは派生魔法《雷魔法》へとつながっていくことだろうか。だが、雷の扱いは指向性、つまり方向指示が難しいのでこれはまた別の難しさがある。習得はまた別の機会だな。


 開拓者実技試験が自信につながったのか、躊躇いなく魔法を撃てるようになっている。だが、現在は少し大味である。大きい魔法弾が撃てるようになり総体ダメージは上がっているものの、それでは効率・燃費が悪くなる。

 熟練の魔法使いならば、最小の威力で最大のダメージを稼がなくてはいけない。だが、その分尋常じゃないコントロールを必要とする。


 シェステは今その訓練中なのだ。今は大きさを小さく、拳3個分と言ったところだろうか。動かぬ的の中央を狙う訓練である。的は同じく拳3個分である。当たるには当たるのだが、当たり所が悪いと的自体が横回転してしまう。

 当然のことながら、的を破壊するには中央を狙わなければならないということになる。そしてコントロールには周囲の空気の流れにも注意を払わなくてはいけない。なかなかの鬼畜仕様である。


 しかし、そこはシェステ君。負けず嫌いに加え、早く次の段階へ進みたいという好奇心も手伝ってものすごい勢いで撃ちまくっている。

 まぐれであたっても合格認定はできませんよー。


 好奇心の源となっているのは、昨日彼女にプレゼントしたクイックキャストの魔法杖ワンドである。

 因みに魔法杖の長さとしては、長い順にスタッフ、ロッド、ワンドとなり、ワンドは短剣や指揮棒くらいの長さである。



――朝食にて。

「ねぇグレン、昨日言ってた『説明』って何?」今聞くんですか?ゆっくり朝食食べましょうよー。


「全くせっかちだねぇ~。昨日言ってたのは、今後の修練の目標のことだよ」ただの修練よりも、より楽しくより前向きになれるように目標を設定したい。

「目標?」別名ノルマとも言いますが、そこは言い方ですね。

「主都につくまでそんなに日数が多いってわけではないが、目指すのは悪いことじゃないと思ってな」


「何を目指すの?」シェステ君の目が輝いてます。

「俺が昨日渡した杖だが、所持者に詠唱速度上昇のバフが付く。だから、同じ魔法でも今までの2、3倍は撃てるようになるだろう」


「すごい!」

「ただな。シェステがそれに慣れてしまったら、もしも杖を手放した場合、例えば敵に奪われたり壊されたりしたらどうなる?」装備の性能はとても大事だ。だが、それに頼りっきりでは、いざという時に足元をすくわれる。常に最悪の状況は想定しておくべきだと俺は思う。

 例えば奪われたり、破壊されたり、無力化された場合などだ。


「悲しい……?」いや、それはそうだろうけど。

「僕が弱くなっちゃうってこと?」

「そうだな。なら弱くならないためにはどうすればいい?」

「杖が無くても強くなればいい?」


「その通りだ。さすが俺の弟子だ。よく分かってるじゃないか。昨日言った『その魔法杖の性能を超えること』というのは魔法杖の性能を魔法杖なしの状態で発動できるようになる。そういうことだよ。」


「要は訓練して今よりもっと強くなればいいんだね!」実力の底上げができれば、それでいいのだ。そして、武器破壊や装備破壊を目的にした攻撃にとって、この上ないカウンターになるだろう。

「そう、今日から内容が一段難しくなるからな。頑張って超えて見せろ!」

「はい、先生!」右手を元気良く挙げて宣誓するシェステであった。



――そして現在。

「シェステ、今左から弱い風が吹いている。それも計算して撃ちなさい。あと適当に撃ってまぐれで当たってもクリアになりませんよ?」ははは、悔しがっているな。その悔しさも成長の糧だ。どんどんおやりなさい。


「もう!先生の意地悪っ!」私は涼しい顔をしながら、「おりゃあ!《風撃ウィンドショット》」とシェステが大声を上げながら撃ちまくる様子を、生温かく見守るのであった。

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