39限目「いざ主都へ!」
これで準備はほぼ終わりだ。カーラ愛用の刀も修復が終わり手元に戻っていた。様子を見ると満足のいく仕上がりのようだ。刀か……。直剣が一般的だとばかり思っていたが、珍しいな。
不謹慎かもしれないが、刀の戦闘には興味がある。果たしてその機会は訪れるのだろうか。
まぁそれはそれとして、スタンレーの所へ出立の報告へ行く。
「グレン、シェステ、カーラ、準備はできたようだな。すぐに発つのか?」
「あぁ。色々と世話になった。メイゼルの復興を最後まで見届けられないのが残念だが、その分の仕事はするつもりさ」この町の人々は見ていて心が安らぐ。復興を果たし、笑顔で毎日を送る……そんな様子を見たかった。
「何を言う!世話になったのはこっちの方だ。でもあのゴーレム達、本当にもらっていいのか?」俺が召喚した6体のゴーレムはそのままメイゼルに置いていくことにした。メイゼルはまだまだ復興へ道半ばだ。いろんな場面でゴーレム達が役立つ場面が出てくるはず。俺の代わりに頑張ってほしいものである。
「魔石を埋め込んである。破壊されなければ永久的に動くぞ?この町のために働かせてやってくれ」指令用の魔石をスタンレーに手渡す。魔石を持って念じれば指示通り動くので操作は楽だ。
「分かった。この町の一員として丁重に扱おう。復興した暁には是非また足を運んでくれ」
「楽しみにしておくよ。その時のためにも新しい肉料理のレシピを用意しておこう。シェステにはこの重要な任務を任せようじゃないか」
「うん、任せて!スタンレーさんに飛び切り美味しいの食べてもらうね!」部屋は温かい笑い声に包まれる。すると、スタンレーは机の引き出しから何かを引っ張り出す。
「お前たちの出発に間に合ったんでな。これを渡しておくぞ」俺とシェステにそれぞれ渡したのは俺には金製プレート、シェステには緑色のプレートだった。
「おめでとう!グレン、シェステ。正式にグレンはAランク、シェステはEランクに昇格だ!」
「ほんと?やった~!グレンおめでとう!」シェステが満面の笑みで祝福の言葉を俺に送る。
「シェステもな!おめでとう!」シェステを両手で持ち上げた後抱きかかえる。
「2人ともおめでとうございます!」カーラも祝福する。
「今回の一件、2人の働きは目を見張るものがあった。グレンは防壁修理に物資調達、悪魔の討伐。シェステは復興支援もだが、襲撃時の広範囲守護結界を展開してくれたこと。あれは住民たちの心の拠り所だった。本部の承認も降りたから、今後は胸を張って開拓者を名乗り行動してほしい」
「そうさせてもらうよ」そう言うと、俺達3人はスタンレーに別れを告げいよいよ主都へと出発することにした。
ギルドカウンターでは、受付のモネとジェイドに挨拶をし、商工業ギルドの受付にも防壁修復と物資調達の礼を言われた。そしてこっそり書いておいた設計図を渡す。簡易的だが、公衆浴場の設計図だ。復興中何かと心の安らぎとなるものが必要だろう。深々と礼をする受付さんだった。
町の人達からも声を掛けられつつ北門へと向かうと、町長のデリスが待っていた。
「スタンレーからも言われただろうが、私からも一言言わせてもらうよ。本当にありがとう。特に嬢ちゃん。ゴルドーへの言葉、胸の空く思いだったよ」小さな英雄に握手を求めるデリスであった。
「デリスさんも元気でね!また必ず来ます」
「あぁ待っている。カーラも道中くれぐれも気をつけてな」
「はい!行って参ります」
町長が手を振り門番が敬礼をする中、我々は出発した。
次の目的地は、いよいよアンバール公国主都サフィール。何が待ってるか分からないが、上手く立ち回って見せようじゃないか!心の中で俺はガッツポーズを決めた。そしたら現実世界でも決めてしまったので、ごまかすのが大変でございました。
さて、心配はしていないのだが今回の道中、囮という使命も負っている。襲撃対策を想定しておかなくてはいけない。ということで。
「シェステ、今回は囮作戦だ~!って話したよな。それで、危ない事がないとは言えないから、これを渡しておく」
アイテムボックスにある俺のコレクションの中から直接あるものを取り出して、シェステに見せる。
「わっ!これ魔法杖だ!僕のってことでいいの?」濃い青色をした宝玉を埋め込んだ短い魔法杖であった。
「いいぞ?この杖の性能は《詠唱速度上昇》だ。魔法使いにとっては破格の性能と言える。詳しくは明日説明するが、この魔法杖の性能を超えることが主都につくまでの目標だ。今後の精進を期待しているよ」
「はい、先生!ありがとうございます」教師としての言葉と捉えたシェステは、両手で大事そうに受け取る。所持者の契約をしたことで、シェステの意思でいつでも実体化と収納ができるようになった。
「あ、あの……私もお願いがあるのですが……」カーラがもじもじしている。何か普段の感じとイメージが違うな。
「その……ですね。もしもグレンが良ければ、私にも戦い方のアドバイスをしてもらえないかと……」ふむ、これはこれで可愛らしい、ゴホン。ま、いいんじゃないでしょうか。
「俺は魔法使いだ。それでも良ければ構わないよ?」
「ええ!むしろ是非お願いします」耳を真っ赤にしながら喜びを声に込める。いや、今は考えないことにします。
「では、改めて出発しよう!いざ主都へ!」




