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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第1章 アルべリオン大陸編

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30/107

30限目「副支部長の帰還」

――夕刻、中央広場にて。

「さて、では調理担当の皆さん。手筈通りに!」俺の合図を確認すると、各自の持ち場で夕食の調理が始まる。ジュウジュウと肉の焼ける音、コトコト煮込まれるスープの匂いに釣られて広場に人が集まりだす。

 今日の夕食は肉をメインにした炊き出しを行うという連絡が、ギルド職員を通じて既に告知済みだ。食べたいものを思う存分食べていいとの知らせに、まるで❝お祭り❞騒ぎである。


 今日のメイン料理はもちろんレッドボアを使った肉料理である。

 まずはそのまま串焼きにして提供する。肉の旨味を直接感じられるし、弾力があって食べ応え十分である。塩を振っただけのものやマスタードを好みに合わせて塗ったもの、スパイスを使ったタレに1回だけ(※二度付けは厳禁である)潜らせて食べるものを用意した。


 そして柔らかくなるまで煮込んだ野菜たっぷりのシチュー。体の芯まで温まること請け合いだ。

 あと、以前もシェステに好評だったハンバーグ。ひき肉のたねをギルドの腕自慢に思う存分捏ねて貰ったので、美味いものができただろう。


 他にも大量のチーズが保管されていたので、料理にトッピングしたり、蒸した野菜を溶かしたチーズに潜らせて食べる物も用意した。どちらかというと女性や子供達中心に大人気である。

 時々レシピも聞かれたので、ギルドの方からレシピを公開してもらうことにした。食材を焼く・煮込む・蒸すだけの基本簡単な料理だ。食材さえあれば、自分でも作れるだろう。


 見慣れない料理が多かったようだが、一様に幸せな顔で料理を頬張る姿を見て俺もシェステも大満足である。

 後で聞いた話だが、巡検使様もその旨さに驚いていたとかいないとか。どっちなんだ?



 おかげさまで料理は全て町民達の胃袋に収まり、肉祭りは大盛況のうちに終了を迎えた。町民達が帰宅し、後片付けを終えたその時であった。


「伝令!伝令!スタンレー様いらっしゃいますか!」北門から伝令が届く。

「何事だ!」真剣な表情で伝令の元へ駆け寄る。

「副支部長以下2名が戻られました!が、いずれも深い傷を負っておられて」

「カーラ達がか?分かった、すぐに教会で治療してもらんだ」

「いえ、それがどうしても支部長に伝えたいことがあると。今すぐ北門までお越しいただけますか!」

「分かった、行こう!すまん、グレンも一緒に来てくれるか!」俺は頷くとスタンレーと共に急いで北門へと向かった。


 程なくして北門に到着すると、スタンレーが副支部長カーラ達の元へ駆け寄る。

「カーラこの傷はどうした?」

「不覚を取りました。それよりも、お伝えしなければいけないことが……ぐっ」かなりの深手だ。だが承知の上でスタンレーは話を聴いている。

「治療はダメです。この傷は伝染します。それと……町が危ない。すぐに防衛の準備を……」最後の力を振り絞ったのか、カーラは力なく気を失ってしまった。



「どう思う?グレン」

「辺りを探ったが、確かに数匹いるようだ。本隊がいても不思議ではない。

 それとその傷、❝呪い❞の類かもしれない。どちらにしても場所が悪い。2人を移動させよう」

「早く2人を教会へ運べ。それと鐘を鳴らせ!俺は先に中央広場に戻り指示を出してくる」


「魔獣接近!警戒態勢!」門番は鐘を激しく叩き、緊張感が一気に高まる。

 予め決められていたのか、付近の住民が声を掛け合いながら中央広場へと向かう。

「俺が2人を運ぼう。教会で治療を手伝う」俺がそう言うとスタンレーは少し安堵の顔を見せる。

「ありがたい。2人のことを頼んだぞ」そう言って駆け出して行った。


 俺は2人を《浮遊フロート》で浮かせるとスタンレーの後を追う。


「本隊は確認していないが、副支部長からの進言で魔獣の脅威を警戒してのことだ!皆万全の警戒で事に当たるように!」皆の前で凛とした姿勢で言葉を発する。

「はいっ!」一同が心を一つにして返答をする。


「ギルド職員は至急人数とここに不在の者がいないかの確認を。町の皆はその協力とテントの設営の手伝いを頼む。開拓者は南北の門周辺で魔獣対応だ!それと盾役タンク回復役ヒーラーは、中央広場と南北の門付近に分かれ待機!もちろん働きに応じて報酬を弾むから存分に日頃の鍛錬の成果を見せて欲しい!」

「おぉっ!」開拓者の皆が歓声を上げる。

「では行動開始!」各自散開すると俺も俺の姿を見つけたシェステと教会へと入り、2人の治療に立ち会う。


「この傷、かなり深いようですな。ですが傷の割には出血がない」教会の司祭が傷の様子を見る。

「物理的な傷のように見えるが、指摘の通り肉体的なダメージがそれほど見受けられない。精神ダメージの可能性が高い。本人も『治療はダメです。この傷は伝染します』と言っていた。私は❝呪い❞系統のスキルによるものだと思う」俺は見立てを話す。


「傷が伝染する?そのようなもの聞いたことがありませぬ。ですが」

「うむ、着実に体力が失われている。副支部長はまだ少し余裕があるが、もう一人の方は衰弱がひどい。治療を急ぐ必要がある」思ったよりも厄介な呪いのようだ。

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