28限目「復興支援④ 食料調達と招かれざる客」
翌日、俺達は朝食後町の様子を見ながら歩いて中央区画を目指す。
「昨日シェステが頑張ったおかげで水は足りてるようだな」水は生活において必要不可欠なものだ。水の不足はかなりのストレスになるため、シェステの頑張りはかなり評価される。
「へへへ。良かった」
「今日やるのは建築資材を中心にってところか。あと食材も何とかしたいところだ」水の次は食材と生活スペースの確保が急務となる。これも不足すると不安になる。早急に補充したい。
「美味しいご飯をたくさん食べて欲しいよね」
「そうだな。うちにも食いしん坊がいるからなー。機嫌悪くならないよーに何とかしないとなー」棒読み口調で話すと、シェステが頬を膨らませ抗議する。
「僕はそこまで食いしん坊ではありません!」
「ははは、すまんすまん!グルメなだけだよな」声を上げ笑いながら、腹をポンポン叩く。
「もう~。でも、食料も足りないって言ってなかった?」
「そこら辺はスタンレーに聞いてみよう」中央広場が見えてきたところで、スタンレーの姿が見える。
「やぁ、2人ともおはよう!昨日はぐっすり寝れたか?」支部長の元気の良さを見れば、さすがモンクだけあって体の鍛え方が違う。
「あぁ、おかげでゆっくり休めたよ!」
「それは良かった。さて、今日なんだが」本日のお題の話だな?
「あぁ、俺は建築資材というか、使い勝手がいいレンガを用意しようと思ってな。暖炉にしてもいいし、焼却炉や煮炊き用の窯も作れるし、もちろん家屋の補修にも使えるだろう?ささっと作ってゴーレムに運ばせようと思う。」
「そいつはいいな!生活レベルが上がって皆の笑顔も増えるだろう」
「あと、食料の件なんだが。うちのシェステがみんなに美味しい料理を食べさせてあげたいって言っててな。食料の備蓄ってあとどれくらいなんだ?」
「そうか、シェステありがとう。備蓄だが、あるにはあるが日持ちのするものくらいでな。味気ない食事が続いている」幸い気温が下がった今の時期なら、すぐには食材も悪くならないだろう。
「なるほどな……」ちらっとシェステを見る。彼女はなんで見られたのか気付かず不思議そうな顔をしている。
「やはり肉だな」俺がそう言うとスタンレーが、続いてシェステが目を輝かせる。
「だよな!」
「だよね!」スタンレーとシェステが腕を組んで気合を入れる。全くこいつらときたら。
「ならば、レンガを作り終わったら食料も調達してこよう」
「でも町民全員分となると結構な数が必要だぞ?大丈夫か?」
「あぁ、任せておけ。今日の晩飯は肉祭りといこうじゃないか」
「おお~!!」2人のやり取りを聴いていた周囲の人間も歓声を上げる。美味い食事は人を元気にするからな。こんな時こそ必要ってもんだ。ははは、2・3日は夢に出てくるかもしれん。
「よし、レンガは今ここで作ってしまおう。みんなを少し下がらせてくれ」
俺は昨日の防壁修理と同じ要領で巨大な一枚岩を発生させた後、圧縮し器用に切り刻みレンガの形にすると炎で一気に火を入れる。するとあっという間に大量のレンガが出来上がる。
「すごいな、初めて見たが手慣れてる感がある。以前にも経験が?」
「あぁ、地震の多い地域でな。大きな地震が来た時にレンガがとても重宝したんでな。俺もその時よく作ったんだ。火が使えるってのはメリットが大きい。一定数常備しておくことをお勧めしておくよ」
「そうだったのか。あぁ、今後は備蓄しておくようにするよ」
「よし、こんなところだろう。では食材調達に行ってくる。シェステも来るか?」
「僕は色々行って水とか他に困ってることないか聞いて、お手伝いしてくるよ!」
「俺もそんなに長くはかからないから、戻ったら食事の準備を手伝ってくれ」
「りょーかい!」シェステは今日も元気だ。
南門の門番に挨拶をし町の外へ出ると《透明化》で姿を消し、さらに《飛行》で空中を移動する。そして《気配感知》スキルを用い、魔獣の群れを見つける。
「(あれは、レッドボアか。確か食用可能だったはず。いいぞ、あれだけあれば当分備蓄もいけるだろう)」
気付かれず群れの中央へ降り立つと、
「時よ凍れ。《時間凍結》」呪文を唱えて魔獣の動きを封じる。そして間髪入れず風魔法を使い、止めを刺していく。
「時よ動け。《時間解凍》」周囲の時が動き出すと血が噴き出し魔獣は倒れていく。血抜きをしばらく待つ間に下処理をすると、大量の猪肉を入手した。
「美味しく戴くからな、安らかに眠れ」俺は手を合わせる。
正午を少し回ったぐらいだろうか。北門に到着すると、何やら騒がしい。煌びやかな馬車が1台止まっている。何か嫌な感じがするぞ。
案の定、馬車に乗ったままの誰かが門番と言い争いになっている。
「だーかーらっ!今連絡とってるんで少しだけお待ちくださいと何度も言ってるでしょう!」
「馬鹿者!わしを誰だと思ってるんだ!いいから早く中に入れろ!魔獣に襲われたらどう責任とるつもりなのだ!お前のような下の者と話しても仕方ない!上の者と代われ!」
「私はここの責・任・者です!何度も会ってるでしょうが!顔をいい加減覚えて下さいよ!」
あれは貴族か?やだやだ、ああはなりたくないもんだ。そんなことを思いつつしばし様子を見ていると、門番は視線を変えずに右手で俺に(早く中に入れ)と合図を出す。気付いてくれたようだ。
馬車を挟んで門番とは反対側からそ~っと町へ入ろうとすると、高齢の人物が馬車の中から済まなそうに頭を下げたので、こちらも笑顔で会釈して通り過ぎた。服の感じからすると執事だろうか。これは苦労してるだろうな。同情します。
中央広場へ向かう途中、慌てた様子で向かう人とすれ違う。そのまま一目散に北門へ走っていった。
「中央広場に到着すると人だかりができていた。俺が肉を持ってくるのを待ちわびた、って感じではないな」
「あのバカ、また来やがったんだって?」
「この前来たばっかだろう!」この言われよう。あぁ、これは駄目なやつだな。




