27限目「復興支援③ 夜に向けて」
通りを歩くと、日が傾いてきたせいか家屋のダメージ具合がより目立つ。
まだ瓦礫が撤去しきれてない場所がある。壊れた家財道具を通りに山積みにしているところもあった。
すると少し先で木材を拾い集めているおばあさんを見つけた。
「おばあさん、こんにちは。一緒に手伝うよ」近くの木材を一緒に集めるシェステ。
「あらあら、ありがとね~。年取るとこういうのは腰が痛くて困るわね」と豪快に笑うおばあさん。
「これ薪にするの?」
「そうだよ。もう冬も近いし、寒くなってきたからね」
「僕火魔法使えるから火つけてあげるよ」
「若いのにすごいね~。じゃ頼もうかしら」
「任せて!」
おばあさんの家に到着すると2階建ての家が半分削られた様な姿になっている。シェステは敢えてそのことには触れず、笑顔で焚火の準備を手伝う。
「んじゃ、火つけるね。《火球》」拳1個分の炎を出すと薪に着火する。
「これは楽だね~。今日は暖かくして寝られるよ、ありがとう」焚火の方に手を出して暖を取るおばあさんだった。
「僕は他の人の焚火のお手伝いしてくる。良かったら明日も来るよ」
「無理しなくていいよ。でも来れるんならお願いしようかね」
「うん、またね!」
すると、火をつける様子を見ていた他の人達からも声を掛けられる。
「なぁ、うちの火もつけてもらっていいかい?」
「うん、いいよ。任せて!」順に着火をしていくと周囲に暖かい火の明かりが灯っていく。
「本当にありがたい。またできる時は頼むよ」感謝の言葉を口々にする町民達。シェステも温かい気持ちで通りを後にする。その後も可能な限り薪への着火や水の配布などをしながら中央広場へ向かう。すると、すでにグレンが戻って来ていたらしく、スタンレーと話をしていた。
「グレン、おかえり!」嬉しそうにグレンの元へと駆け寄る。
「シェステもおかえり!聞いたぞ?よく頑張ったな」近寄ってきたシェステを抱きかかえる。
「グレンは仕事全部終わったの?」
「あぁ、防壁の修理と木材調達が終わって、今ゴーレム達に薪を配布に行かせた。建築資材分は明日配布しようってスタンレーと話したところだよ」
「良かった!今日行ったおばあさんの家とか半分壊れてたりしたから、早く元に戻ったらいいなって思ってたんだ」
「まだまだこれからだろうが、今日1日だけでもかなりの進み具合だ。お前達が来てくれて本当によかったよ」スタンレーが感謝の言葉を述べる。
「困った時はお互い様さ。シェステにも良い経験になった。こちらこそ礼を言うよ」
「ははは、全くお前さん達には敵わないな。明日もよろしく頼むよ。今日はもう大丈夫だ、休んでくれ。場所はどうする?何ならギルドの部屋を提供するが」
「いや、俺達は今日通ってない北通りを通って、北門近くでテントを張って休むことにするよ。北門の様子も聞いておきたいしな」
「分かった、何かあればいつでも言ってくれ。じゃあまた明日な!」
その後、北門へ向けて歩き出した俺達は、個別行動になった時のシェステの様子を詳しく聞き、大きな学びになったことを俺は嬉しく思った。途中で見かけた人に水が必要か、暖を取れているかの声をかけつつ、北門に到着する。
「おっ、あんたは。今日は防壁修理とゲート新調世話になったな!」今日の作業場所は南門付近だったが、外壁修理の途中北門にも当然二重ゲートを新調しておいた。
「こんな立派なゲートだと、言うのも変だが主都を守ってる気分だ。気合入るぜ!はっはっはっ」南の門番もそうだったが、立派なものを守る❝誇り❞ってのは万国共通だな。頑張ってくれ。
「それはそうと、もう日が落ちる。何かやり残しでもあったのか?」
「いや、今日はもう休んでいいってことだったんでな。まだ通ってない北通りの様子見ついでにこの辺で休もうかって思ってるんだ」
「そうか。今日は天気もいい。星空も綺麗だろう。ゆっくり休んでくれ」
俺達は北門付近の空きスペースを借りて、テントを張って休むことにした。シェステの慣れた手つきを横で眺めながら、簡単な食事を用意する。夜になると随分冷えてくるので、ひき肉を団子状にして野菜と一緒にスープを作る。
匂いに釣られた人達がいたので、お裾分けをしながらしばしゆったりとした時間を過ごした。
「あったまるね~!」シェステが嬉しそうに肉団子を頬張る。
「しっかり身体をあっためとかないと風邪をひくからな。明日も頑張れるようにきちんと寝るんだぞ?」
「うん!明日も頑張ろうね!」
――その頃。メイゼルから離れた山の麓。小声で話し合う2人がいた。
「どうやらあそこみたい。でもそんな大きなダンジョンではないはず。ひとまず戻って支部長に報告を」
「分かりました」
「グルルル……」
「いけない、このままでは囲まれるわね。町まで一気に駆け抜けるわよ!」
完全に日が落ちるとこちらの分が悪い。せめて町の近くまで行ければ十分対応できる。2人は力の限りに走り、町を目指す。支部長に早く❝あのこと❞を伝えるために。