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25限目「復興支援① 外壁修理」

「さて、せっかく開拓者になったんだ。初仕事といこうじゃないか。街の中の様子を見たが、俺達も手伝えることがあると思うんだ。できることは協力させてほしい」

「実に嬉しい申し出だ。町に来たばかりだとは思うが、早速お願いしたことがある」本当に嬉しそうだ。


「さっきの模擬戦闘でも見せてもらったが、あのロックウォールで町の防壁を覆ってほしいんだができるか?実は大量の魔獣に襲撃されてな。内側もなんだが特に外壁の損傷が激しい。すぐにどうこうということではない、とは思うんだが、早目に対策はしておきたいんだ」


「わかった。町の人々もその方が安心するだろう。時間もそんなにかからないだろうから早速取り掛かろう」

「ありがとう、よろしく頼む」スタンレーが頭を下げる。


「災害の時もそうだが、こういう場合まず必要なのは《生活物資》《生活スペースの確保》《人手》といったところだろう。どんな感じなんだ?」

「そうだな。《生活物資》はそれなりに備蓄はあったんだが、そろそろ厳しくなる可能性があるな。前回の襲撃で水場が破壊された影響で水が足りていない。それと食料、あと暖を取るための木材、住居建設の資材も不足している。


《生活スペース》は今対応が遅れているな。まず破壊された家屋の瓦礫ごみの撤去がまだ済んでいない。無事だった家屋や教会などで今は生活してもらってるが、自分の家が気になって離れられない者もいる。商工業ギルドを中心に今作業を進めているところだ。


《人手》だが、先の戦闘で負傷者も多数出ていてな。結果人手が圧倒的に足りていない。今動けるものが昼夜問わず動いているが、休んでもらわないと倒れてしまう。町長のデリスも部屋に籠って書類の山と格闘中だ。


 これが今の状況だ。全く頭が痛いよ」思っていたよりもかなり厳しそうだ。

「公国やギルド本部からの支援は?」

「今支援の準備をしてくれてるそうだ。公国からある程度距離があるからやはり物資の運搬が大変らしい」それは仕方ないか。早く届くといいな。


「わかった。俺は防壁の方を片付けたら、木材の調達をしよう。周囲の木々は伐採しても構わないか?」

「構わないが、できれば街道や防壁周りにスペースができないようにしてもらいたい」

「魔獣対策だな。なら少し離れた場所で調達しよう」魔獣が大挙して来た場合スペースが狭いほど渋滞して身動きが取れなくなる。防衛には良い判断だ。

「人手に関しても瓦礫撤去と運搬要員として《石像巨兵ストーンゴーレム》を召喚しよう。指示を出してくれたら動いてくれるから大丈夫だ」


「それは非常に助かる!存分に働いてもらうことにしよう。

 さてシェステの方はどうしようか……」思案を巡らせる支部長に俺から提案する。

「それなら、町の中を巡って困ってる人にできる範囲で手助けをするってことでいいと思うぞ?」シェステがきょとんとしている。

「皆の役に立ちたいなら少しでも人手が多い方がいい。俺とシェステは別行動で今回は頑張ろうじゃないか」シェステが少し不安そうに俺を見つめる。


「町の外には出ないように。そしてできないことはできないとはっきり相手に伝えること。

 自分にできることをしっかり考えて、自分なりに頑張ればいい。できなかったとしても気に病む必要はない。手伝える人がいればきっと手伝ってくれるから、声をかけて見ればいい。一人で全部やろうなんて思う方が無理な話だからな。これも一つの修練だと思って、やれるだけやってみなさい」


「うん、分かった!」

「お前は魔法が使えるんだ。きっとみんなの役に立てる」頭を撫でながら言うとシェステは笑顔で頭を縦に振った。


「では始めよう。シェステには誰かつけようか?」

「いや、頼もしい❝相棒❞がいるからな。心配ない」すると、シェステの指輪からアルスが姿を現す。一声鳴くといつものようにシェステの肩に留まる。


「なるほど、そういうなら大丈夫なんだな。何かあれば中央のギルドで声をかけてくれ。職員誰かが相談に乗ってくれるはずだ。シェステもよろしくな。頼りにしてるぞ」


「よし!それではケガに注意して頑張ろう!」

「おー!」シェステが元気よく拳を上げて返事をした。


 部屋を出ると、受付のモネが笑顔で声をかける。

「グレンさん、シェステさん2人とも開拓者登録おめでとうございます!」そう言うと隣接するハンターギルドと商工業ギルドの受付も笑顔で拍手をしてくれた。何か少し恥ずかしいぞ!シェステは全然嬉しそうだ。手を挙げて応えている。


「じゃ、シェステ。俺は早速防壁修理と資材調達に行ってくる。何かあればアルスを通じて思念を飛ばすように」

「うん、気を付けてね。行ってらっしゃい!」手を振って送り出してくれた。

 よく考えると別行動というのは初めてになるか。うまくできるか心配ではないと言ったら嘘になってしまうが、自分で考え行動をするというのはとても大事なことだ。今は信じて後で話を聴くのを楽しみにしよう。


 門番に銀製のプレートを見せると喜んでくれた。外壁の修理をする旨を伝え、町の外に出ると早速行動に移す。

「(防壁ということだが、対象は魔獣が中心だ。町の様子を見る限り地上を移動する魔獣のみだったからな。ならば飛行魔獣のことは一旦忘れよう。

 後付けの部分は今後町の者に任せた方がいいな。よし、外壁の強度を上げて可能な限り頑丈にしておくか)」


「《岩礁壁ロックウォール」巨大な一枚岩を発生させると同時に《浮遊フロート》をかけ宙に浮かせる。周囲に注意して次の魔法を詠唱する。

「《重力圧縮グラヴィティプレス》」高重力の力場を発生させ岩を圧縮して強度を上げる。そして仕上げだ。

「《火炎旋流フレイムサイクロン》」岩を包むように高火力の火炎で包み込む。陶器を焼く要領だ。本当の陶器なら釉薬を塗って再度焼くことが必要なんだが、今回はこれでさらに強度が上がる。

 よし大丈夫だろう。試してみるか。


「《岩槍ロックランス》《炎槍フレイムランス》《氷槍フロストランス》《竜旋撃トルネードショット》」出来上がった岩に4つの魔法を撃つと見事に防いでみせる。魔法防御の術式も組み込んでおいた。俺からのサービスだ。これなら防壁としては十分な性能だろう。


 同様の壁を複数同時に作成しつつ、冷却が確認できた分から外壁の外側を覆うように配置していく。大きい音に驚いたのか見物客ができていたが、門番から説明を受けていたらしく、配置していく毎に拍手が起きていた。いやぁ、照れるな!

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