22限目「メイゼルの町」
さて、メイゼルの町に到着したわけだが……。先の事件?で思ったより被害が出ていたようだ。町を取り囲んでいるだろう防壁も、見える範囲ではあるがあちこち崩れていてかなりダメージを受けている。
やはりどのような事件だったかについては、一通り調べておいた方がいいな。それはそれとして。
「町が大変な時に済まない」ゲートのそばに立っている門番に声をかけた。
「いや、大丈夫だよ。何か用かな?」笑顔で対応してくれて助かる。
「開拓者登録をしたいと思って来たんだが、もし可能であれば町への入場を許可してもらいたい。ちょっと待ってくれ。推薦状をもらっているんだ」懐から推薦状を出すと、門番に渡す。
「おぉ、ラザック村長からの推薦状か。うむ、問題ない。こんな有様だが歓迎するよ。ようこそメイゼルへ!」2人とも握手をすると、ゲートを開き中へと進む。
「このまま道をまっすぐ進むと中央にギルド支部の建物がある。受付にその推薦状を見せればスムーズに手続きができるはずだ。頑張れよ!」
「ありがとう!」後ろを振り返りながらそう言うと、言われたようにまっすぐ建物を目指す。
「町の内側も結構被害が出てるな」
「ねぇねぇ、あそこの家に引っ掻き傷みたいなのが見えるよ」シェステも気になるようだ。
「あの爪痕……魔獣かもな。防壁を突破したとするとかなりの規模の襲撃に会ったようだ」
「心配だね」いつも元気なシェステも町の様子を見て浮かない顔だ。
「でも、決して腐ってはいない。みんな力一杯動いている。笑顔も見える。そこまでの心配は必要ないと思うぞ」お互いに声を掛け合いながら近所同士で助け合っている。良い町だ。
そうしている内に中央の建物へ到着した。なかなか立派だ。それとギルド職員だろうか。あちこちへ飛び回っている様子だ。実に忙しそうで気が引けるな。
「何か御用ですか?中で伺いますよ」おっと、立ち止まっていたら心配されてしまった。さっさと登録を済ませて何かできることをやった方がよさそうだ。
「ギルド支部はここで合ってるだろうか?開拓者登録をしたくて来たんだが」
「そうですか!今、町がこんななんで猫の手も借りたい状態なんですよ。助かります!こちらへどうぞ」そうなのか!歓迎されてるようだ。これは頑張らないとだ!
中に入るとテーブルが両端に配置された空間があり、正面奥にカウンターが並んでいる。中央がギルドの総合受付、その両隣にハンターギルドと商工業ギルドの受付がある。
「ようこそ開拓者ギルドメイゼル支部へ。私は受付担当のモネと言います。まずはこちらの受付用紙に記入をお願いします。あと推薦状をお持ちならお見せいただけますか?」はきはきとしゃべる活発そうなお嬢さんだ。
受付用紙への記入を終え、推薦状を合わせてモネに渡す。
「記入事項に問題ありません。こちらは、ラザック村長の推薦状ですね。ということは、村解放の立役者と言うのはあなたですね!本当にありがとうございました。我々としても支援が困難だったので……。解放の知らせを聞いた時は皆で喜んだんですよ」
「そうだったのか。町の様子を見る限り、確かに難しかっただろう。役に立ててよかったよ」
「あなたのような方に開拓者登録して頂けるのはとてもありがたいです。仲間として働けるのを楽しみにしています」
「ありがとう。頑張るよ」
「ではまず筆記試験を受けて頂いた後、実技試験を行います。試験官ですが……。ちょっと今こんな状況なので少しお待ちいただいても」
「俺がやろう」後ろからやってきた男性が、落ち着いた様子で声をかけてきた。
「支部長!戻られたんですね。でも大丈夫ですか?見回りでお疲れでは?」
「将来有望な奴らしいからな。自分の目で確かめておきたいんだ。今からでも大丈夫かい?」
「ああ、俺は問題ない。俺の名はグレンだ。よろしく、支部長」右手を差し出す。
「俺の名はスタンレーだ。こちらこそよろしく」がっちりと握手を交わす。
「ところで、開拓者というのは年齢制限はあるのか?」不思議そうにスタンレーが見つめる。
「そうだな。明確な制限はないんだが、危険が伴う仕事もあるから15歳以上という暗黙の了解がある。あぁ上限はないよ」彼は笑顔で説明してくれた。
「15歳か……。実はこのシェステは子供だが俺の弟子でな。俺としては経験を積ませるためにも、全ての現場に同行させたいんだ」
「シェステという名なんだな。今何歳なんだ?」
「僕8歳です。グレン先生に鍛えてもらってます!」
「元気でいい挨拶だ!まぁ、いいだろう一緒に試験を受けて見ろ」お、いいのか?
「支部長!さすがに8歳は……。モネが不安げな顔を見せる」
「力があれば認める、なければ認めない。それでいいじゃないか。不合格でもいい経験にはなるだろう。それに満更見込みがないわけではないんだろう?」少し興味を持ってくれているようだ。
「ああ、合格できるかは別として俺の自慢の弟子だからな」シェステの肩に手を置き優しく見つめると、任せとけと言わんばかりに力強く見つめ返す。
「そういうことでしたら、今回は特別に。ではシェステさんも受付用紙へ記入をお願いします」モネは近くのテーブルにシェステを案内してそこで記入させる。ははは、あの顔は女の子だったんだって顔だな。
記入が終わったようだ。それを確認するとスタンレーが呼びかける。
「では、まず30分くらい筆記試験を受けてもらうぞ。こっちはそこまで難しくない。本命は実技試験と思ってくれていい。こっちの部屋に入って待っててくれ」
右奥の部屋へと案内されると、そこで筆記試験をシェステと2人で受験した。
筆記試験が終了し、答案を回収したスタンレーは頭を掻きながらどこか難しい顔をしている。何かまずいことでも書いたかな?
「すまんが採点は時間がかかるかもしれん。先にこのまま実技試験に行きたいがいいか?」
「大丈夫だ」そのまま奥の通路を抜け、修練場だろうか。広い場所へ出た。
いよいよ本命、実技試験の開始だ。