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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第1章 アルべリオン大陸編

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18限目「竜と悪魔についての考察」

「竜鱗鉱自体は存在しているし、王家が所有しておるのも事実じゃ。竜の存在については確証がないが、これを見てしまうと信じたくもなるわい」ふぅ~と一際大きな息を吐くと天井を見上げながらしみじみと語るゼトであった。


「となるとだ。悪魔達はこの竜鱗鉱を探していたというのは、筋としてどう思う?」

「そうじゃな。確かにそれを加工して強力な武具はできるが、全世界でそれだけのために悪魔を総動員するとは考えにくい。もちろんそれ専門で行動する部隊が来ていたとするなら話は別じゃがな。わしとしては別の目的で来ていたような気がする」


「もしくはこいつ(竜鱗鉱)に別の使い道があるとかな」ゼトが目を見開く。


「なるほど!それは盲点じゃった。超一流の素材というだけで希少価値があったからのう。さらなる力が隠されているのであれば目的としては十分考えられる。じゃが、今度はまた別の疑問が出てくる」


「そうだ。そんな重要なものを、何故辺境伯が諦めたのかってことだ。もしくは存在さえ確認できればよかったってことか?」

「危険を冒してまで入手する必要はなかったと?まぁ、どちらにしても今の時点では想像の域を出んな」これに関してはやはり情報不足だ。一旦保留しておこう。


「この竜鱗鉱、俺なんかが持ってて本当に大丈夫なのか?村に返すとか王家に献上するとかしなくてもいいのか?」正直これを手放しても全然構わない。金にも困ってないし、武具も正直必要ないからな。魔法使いだし。そもそも魔王だし。


「村長から譲り受けたのだからそれは問題ない。わしも正直与太話だと思ってたくらいじゃ。今更崇めるというのは虫のいい話だ。王家が所有しているというのは発見者や所有者から高額で買い取っているからで、正当な取引じゃからお前さんが手放す意思があるのなら交渉すればいい。

 だが、もしも今後主都へ向かうのなら、機会があれば今の館長にそれを見せてやって欲しい。きっと喜ぶじゃろう」


「わかった。それくらいお安い御用だ。必ず立ち寄ることにするよ」

「逆に気を遣わせてしまったな。だが感謝する」笑顔で二人は握手をする。

「さて、先程『大陸を守護していたのは❝風の加護を象徴する竜❞』と言っていたが、ひょっとして他の大陸にも同種の竜がいるのか?」❝竜の加護❞よりも❝風の加護❞と言っている以上、各魔法属性の加護がありそうな気はするのだが……。


「そうじゃな……。よくよく考えると、もし言い伝えが本当で竜族が存在していたとするなら、他の大陸にいてもおかしくなかろう。じゃが残念ながら他の大陸の伝承まではわしも知らん。お前さん世界地図を持っておったじゃろう?ちょっと広げてくれんか」

 地図をテーブルに広げると3人で覗き込む。


「この南の大陸が今いるアルべリオン大陸。伝承通りなら❝風❞の守護竜がいることになる。さらに北にあるこの世界最大の大陸がブランデン大陸。火山が多いことで有名じゃからもしかすると❝火❞の守護竜がおるのかもしれんな。


 となると大陸に挟まれたこの海、サリジャ海には海洋国家オルヴァートがある。当然❝水❞じゃろうな。こうなってくると魔法属性的には他にも❝土❞、❝光❞、❝闇❞の守護竜がいそうじゃが、北西にあるプロディス大陸も含め後は分からんな。プロディスは古い歴史がある。何か情報があっても……。


 いや、仮定に仮定を重ねてしまっておる。わしとしたことが柄にもなく熱くなってしまったわい」未知の存在がいるかもしれないという可能性を感じた時の高揚感は、俺にも覚えがある。それには抗えぬものだ。


「好奇心というのは人を饒舌にし、無口にもする。老いた身体に鞭を打ち、乾いた心に大雨を降らせる。ひどく厄介な代物だ」

「はっはっは、お前さん大した詩人じゃないか。全く厄介じゃのう。わしも色々と知りたくなったわい。個人的に情報を集めることにしよう。何か分かったら連絡するぞ」


「ああ頼むよ。頼りにしてるぞゼト」

「この片田舎で調べるのはちと大変じゃな。もう一度主都へ行ってみようかのう」爺さん嬉しそうだ。単調な生活だとつまらないからな。巻き込む形になってしまうが楽しい毎日になってくれることを願ってるよ。


「他に訊きたいことはあるかね?」

「竜に関しては大丈夫だ。後は悪魔だな。悪魔と言うのは組織立って行動しているのか?」ラザックでの一件でも悪魔族は階級社会で組織化されているのは明らかだが、より具体的な情報があるのかどうかが気になる。


「お前さんの話もそうだが、魔族に関しては確かに組織化されているようだ。町や村が襲撃された時も必ず指揮官がいるとの報告もある。それに、各地域にさらに上位の司令官が指揮を執っているという噂もある。今まで表に出てきていないらしく素性は皆目分からんがな」

「司令官が各地域と言うことはそれを束ねるトップもいると考えた方がいいな」


「考えたくないが、おそらくな。お前さんの言う話じゃと貴族階級と同じ構造をしとる。司令官が最高位の公爵とすればその上のトップはおそらく爵位を与える者、すなわち王。言うなれば《魔王》じゃな」こちらとしても考えたくはないが、どうしてもそういう呼び名になる。同じ《魔王》だが、正反対の立場として相対することになるとはな。


 シェステが心配そうにこちらを見ている。俺は大丈夫だ。気にするなという気持ちを込めつつ笑顔で彼女の頭をなでる。


 その様子を見ていたゼトが少し不思議そうな顔で見ていたが、何か思い当たることがあったようだ。

「そういえばお前さん、先程から魔族とは言わず悪魔という言葉を選んで使っとる気がするが、それには理由があるのかね?」むきになっていたわけではないが、拘ってしまったかもしれないな。


「気に障ったならすまない。前もって言っておくが俺は決して博愛主義者ではない。ただ人間にも善人がいれば悪人もいる。だから他の種族だってそうなんじゃないかと思ってな。

 魔族を一括りにして悪とはせずに、悪さをする魔族のことを悪魔と呼ぶようにしているし、シェステにもそう教えているのさ。甘いと言われても仕方がないことだし、ただの理想論かもしれないがな」


「なるほどのう……」少し俺が言ったことの意味をかみしめるように目を瞑って考え込んでいたが、ゼトは再び話し始めた。


「そうじゃな。その通りかもしれん。変に情けをかけるわけにもいかんが、お前さんの言う事には重みがある。希望も含めてわしも今後は魔族ではなく悪魔と呼ばせてもらおう。一緒に茶を飲める魔族がおるかもと考えると面白いかもしれないな」とゼトは少し苦笑いをしながら茶をすする。ま、目の前にいますけどね。いやそもそも魔王ですけどね。


 ともかく彼がそう考えてくれるなら俺としては正直嬉しい。俺としても素性を明かしても変わらず共に茶を飲めるような画を思い浮かべると、このお茶同様心が温まる。


「貴族と言うのはとにかく気位が高い。何よりもメンツが大事だ。今後大規模な戦闘が起きて重要な局面になれば必ず上位悪魔は顔を出すだろう。いずれは確度の高い情報も出てくるから、それまでは地道に旅を続けるさ」

「ということは、やはり今回の旅の目的に❝悪魔❞が関係していると踏んでるのかね?」


「必ずとは言えないが、こいつ(シェステ)の両親の旅立ち方が慌ただし過ぎて普通じゃない。何か急用と言っても子供を一人残す理由がない。ラザックのような村まで子爵級の悪魔が現れることを考えれば、もはや『排除すべき悪いやつ』というのは悪魔の可能性が高そうだ。


 だから、今後は悪魔に関する情報は本腰を入れて探すつもりだ」

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― 新着の感想 ―
シェステさんのご両親が急いで行かれた理由なども徐々に明らかに……。 物語の真相に迫る心境です!(鼻息 だんだんとカッコいいが増量されてきてワクワクしてます。 d-sideさん、今後とも宜しくお願い致…
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