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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第1章 アルべリオン大陸編

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17限目「村の言い伝え」

「村長のリーナも落ち着いたら顔を見せに来るそうだ。楽しみに待つといい」その言葉を聞き、ゼトはやっと実感が出てきたのかようやく心から安堵したようだ。


「中に入ってくれ。話を聴きたい。今飲み物を用意するから座って待っていてくれ」

「僕手伝う!」例によってシェステが彼の所へ駆け寄る。

「ありがとう。ならそのお菓子を器に盛ってテーブルに持って行ってくれるかい?」

「うん、任せて!」シェステが焼き菓子を運んでくると、続いてゼトがお茶を淹れて持ってきた。

 お菓子とお茶を口にし始めると、ゼトが話し始める。


「改めて礼を言わせてくれ。本当にありがとう。今日はくつろいでいってくれ。報酬のこともある。わしが知っていることは全て教えよう。その前に」彼は書斎から手帳らしきものを持ってきた。


「これを渡しておく。約束していた報酬の地図だ。携帯用に手帳サイズにまとめておいた。詳細地図となると量が膨大になるのでな。

 少し範囲が広くなっているが、各地域はもれなく収めておいた。詳細地図が欲しい場合はギルドに申請するといいじゃろう」


「これは素晴らしいな!持ち運びしやすい。うん、この地図はシェステが持っててくれないか」焼き菓子を口いっぱい頬張っているシェステが唐突な指名に慌てる。

「ぼふが?」頬張り過ぎだよシェステ君。


「ああ。シェステにとっては初めての本格的な旅だ。この世界のことをもっと知るためにも地図を見ながら色々考えて欲しいんだ。

 未知のものに触れる経験が増えると同時に、危険や重要な局面で大事な決断を迫られる時もあるだろう。普段から色々と考えておいた方が良い学びにもなるし、何よりこの旅を楽しめると俺は思う」


「分かったよ。大事に持ってる。そして旅を楽しめるように色々考えて思い出もたくさん作る!」ゼトと俺は微笑みながら、シェステの決意表明を聴くと今後の成長を想像しながらしきりに頷くのであった。


「で、何が訊きたい?」そうだな、時間が惜しい。今訊けることは全部訊いておくか。

「やはり世界で今何が起きてるかってところから訊きたいんだ。

 ジャン達から、と言ってもほとんどツェンからだが、悪魔の活動が世界各地で活発化してるってことだった。今後の旅のためにも知っておきたい。ざっくりとした質問で申し訳ないが、ゼトのペースでいいんでどうか頼む」


「どこから話すべきか……。『竜魔大戦』は知っておるかね?」


「ああ、確かこの世界の神と言われる竜族とそれに対抗した悪魔族との全面戦争だったか。しかし神話級の昔話で真偽のほどは不明だと読んだ本に書いてあったな」


「確かに神代の話らしいので本当の事は分からない。伝承によれば、勝敗は不明じゃが竜族も魔族も姿を消し、竜神の加護を受けられぬ世になってしまったが、それでも人間はここまで繫栄できた。

 ただ実際に存在が確認されるのは魔族のみ。実際は竜族が負けたのではないかという説が最近優勢になっておるな。竜族の存在自体を怪しむ者もおる。


 学説の話はさておき、大事なのは近年、ここ20年ほどなんじゃが世界各地で魔族が大量に出現して人族との小競り合いを繰り返すようになってのう。何かの前触れかと話題に上っておった。

 魔族の出現は以前から確認されてはいたのじゃが、この数年はなりふり構わずといった感じでな。かなりの被害が出ておるらしい」悪魔が大規模な活動をしているのは間違いないらしい。


「悪魔達の目的は分からないのか?」

「お主たちの話を聴いた後じゃから余計にそう感じるのかもしれんが、おそらく何かを探しておるようじゃな。それが何なのか分かればのう」

「そういえば。ゼト、これを見てくれないか」ラザックで村長から譲り受けたものを彼に見せる。


「これは……!」驚きと好奇の目が注がれる。

「リーナはこれを『竜鱗鉱』ではないかと?」

「ああ。見たことのない鉱物だし、その光沢というか風格というか、村の言い伝えが頭に浮かんだそうだ」

「確かに。この何とも言いようのない美しく深い緑は《竜鱗鉱》と言われても信じてしまうな」


「すまん、その『言い伝え』というのは?」顔を近づけて熱心に見つめていたゼトに詳細を訊いた。

「長生きするもんじゃな。見惚れてしまったわい。ああすまん。『言い伝え』じゃな。

 簡単に説明するとじゃ。この大陸に住む竜の親子が大喧嘩をしてな。大陸中を飛び回りながら激しいぶつかり合いをするもんじゃから、お互い傷を負っての。ちょうどラザック辺りで父竜が舞い降りてしばし傷を癒したそうだ。

 村の者総出で竜の世話をしたそうで、その礼にと魔力のこもった自らの鱗を村に与えたと言われておる。


 非常に硬く鱗と言うより鉱物に近いという理由から《竜鱗鉱》と呼ばれとる。加工がとにかく難しいが最上級武具の素材としてかなりの高額で取引されるんじゃ。世界でも保有しとるのは各大陸の王家ぐらいだと聞くな。


 もちろん、村としては売ることはせずに裏山に祠を作って竜鱗鉱を祀っておったが、大地震で祠が埋まったんで発掘作業が行われたのが、村の鉱山業の始まりらしい。祠は見つかったが、肝心の竜鱗鉱は発見できなかったと言う話だった。だったんじゃが……」ゼトは改めて竜鱗鉱と目されるものを覗き込む。


「信じられん。爺さん達の与太話とずっと思っておった」信じてなかったんだな。


「しかし、竜鱗鉱と断言するにはまだ早いんじゃないのか?」一応最終確認してみる。

「わしが主都で司書をしておったという話は聞いておると思うんじゃが、当時の館長と話した事があっての。館長も一度だけ王家所有の竜鱗鉱を目にしたそうで、吸い込まれそうな深い緑色をしておったそうじゃ。


 実はこの大陸を守護していた竜神様の身体は❝風の加護❞を象徴する深い緑色の鱗で覆われていたという伝承があるんじゃよ」

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