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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第1章 アルべリオン大陸編

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12限目「開拓者と革新者」

 話はまとまったわけだが、もう少し話をしておきたい。

「ところで俺は『地図を見せて欲しい』と言ったんだが、なぜ爺さんの依頼を俺に勧めたんだ?」よくよく考えると変な話だ。俺としては別に構わないのだが。


「これは説明不足でした。実はそのゼトって爺さんから依頼を頼まれた時、地図を広げて色々説明してくれたんです。この地域以外の地図も持ってたようだし、グレンさん達の役にも立つかもしれないと思いやして。

 それにその爺さん以前図書館に勤めてたらしいんで、旦那が依頼を達成したらきっと色々と知りたい情報を教えてくれるかもと。


 正直旦那たちを巻き込む形になって申し訳ないってのはあるんですが、旦那ならあの爺さんを安心させてあげられる、そういう気がするんで」これはまた随分と買い被られたもんだな。しかし地図を持ってるというのは正直ありがたい。明日向かってみるか。


「それはありがたい話だ、感謝する。では、こちらからも何か礼をしないとな」良い出会いとなったし、ここは奮発するか。懐から取り出した小さな袋をジャン達に渡す。


「これは?」

「中を開けて見て欲しい」中身を見て3人は驚いて顔を見合わせている。


「旦那、これは❝きん❞じゃないですか!」

「ああそうだよ。昔とある鉱山で採掘したものを製錬してもらったものだ。困った時の足しになればと思って持ってたんだが、お前たちの話を聞いて渡すのを決めた。どうか感謝の印として収めて欲しい」


「ですが旦那、さすがにこれは、」と言いかけたツェンを左手を向けて制止する。

「もちろん全部を渡したわけじゃない。手持ちは十分確保しているから気にしなくていいぞ。それにな、今は何より情報が欲しい。直接ではないが、情報を持ちそうな、最低でも地図は持っている者との仲介をしてくれてとても感謝してるんだよ」


 まぁ、半分は嘘だ。十中八九俺が持っているコインはこの世界では使用不可だろうと思ったので、予めコインを煮潰して粒状にしておいた。金なら大抵は高価なものとして取引してくれるはずである。

 色々理屈はつけたが、こいつらのことが気に入っただけのことだからここで納得してほしい所だ。でもこれだけだとちと弱いか?ここはダメ押しということで。


「俺からも一つ依頼をしたい。その前払い金と思ってもらってもいい」釈然としないようだったが、ひとまず依頼を聞くようだ。

「お前達これからサフィールに戻るんだろ?俺達もすぐというわけはないが、いずれ主都を目指すことになるだろう。その時までに情報と到着した際に案内を頼みたいんだ。どうだ?俺達にとってはそれだけの価値がある。ここはそれで納得してくれ」少し考えていた様子だが、覚悟を決めてくれたらしい。


「分かりました。正直もらいすぎだと思いますが、これだけ頂ければ頭の負担もかなり減ると思いやす。ありがたく頂戴します。依頼の件、確かに承りました。必ずお役に立って見せますぜ!」両親の特徴はシェステに説明してもらい、明日から小屋まで案内してくれることにもなった。

 その後は談笑しながら食事をして過ごし、片付けの後各々が床に就いた。


「あの人達いい人だったね。お話聴けて楽しかったよ」寝袋に入ってすぐシェステがそんなことを言った。親以外の人と話すのは初めてだったし、その人が気の良い奴らだったのは僥倖である。何事も最初が肝心だ。コミュニケーションを取ることに変な苦手意識を持たなかったのは良かった。


「もっと話したかったんじゃないか?ジャンとも仲良さそうに話してたし」歳が近いこともあってか、盛り上がっていたようだ。シェステはアルスの話、ジャンはこれまでのことや孤児院での暮らしなどの話でお互いとても良い顔をしていた。


「うん、お話いっぱいできたよ。また主都に言った時にたくさんお話しようって約束したんだ!楽しみだな~」友達ができて良かった。

「いっぱい土産話ができるといいな。よし、明日は早めに出発するからしっかり寝ておこう。おやすみシェステ」

「うん、おやすみグレン」



――そして翌朝。簡単な朝食をとると、早速爺さんの住む小屋へと出発し、2日後の昼前に小屋の近くまで到達した。後は道なりに進めば小屋に辿り着くということで、3人と再会を約束して別れた。


 屋敷を出てから魔獣などの脅威に一切出くわさなかったのだが、どうやら悪魔の影響が原因のようだ。小屋と言うより村へと近付くにつれて、悪魔の気配が少しずつ強くなってくる。

 人族にはなかなか感知できないだろうが、悪魔は瘴気というオーラまたは波動を発していることが多い。個体差はあるものの、瘴気に長く触れると抵抗力や体力の低いものから何らかの異常が生じる。

 魔族である俺にはこの肌に纏わりつくような❝嫌な気配❞が徐々に濃厚になっていくのが分かる。この感触……、まったく村には何匹いやがるんだ?


 と、俺が少し不快に感じてる間に小屋へと到着した。小屋と聞いていたが、それなりの大きさがあるな。煙突から煙が出ているので、中にいる可能性がありそうだ。

「シェステ。ゼトって爺さんはいい人だとは思うが、挨拶したらまずは俺が様子を見る。合図を出したら普通に話していいぞ?」3人のことはある程度認めているが、『初見の人物を信頼するほど俺は耄碌してないつもりだ』と一応言っておくことにする。


「うん、わかった」俺の言葉に少し緊張させてしまっただろうか。でも、全ての人がいい人ばかりということは絶対にない。まずはきちんと観察をしなくてはいけない。今後のためにも。


 コンコン。質素だがしっかりした造りの木製の扉を軽く2度叩く。


「こんにちは。ゼトさんの家で間違いないかい?数日前にここに訪ねてきた3人に勧められて来たんだが」少し間をおいてコツコツと足音が近付いてくる。


「3人組?名前は?」扉の向こうから声が聞こえてくる。

「ジャン、ツェン、バレンの3人だよ。お前さんの力になってほしいって頼まれたんだ。良かったら話を聴かせてくれないだろうか」


「あの3人か。分かった、今扉を開けるから待ってくれ」鍵を外す音と共に扉が開くと、眼鏡をかけ身なりの整った……、爺さんというよりも老紳士が立っていた。


「俺の名はグレン、こっちは姪っ子のシェステだ。よろしく」

「わしはゼトだ。2人ともよろしくな」それぞれ挨拶と握手を済ませて家の中に入る。


「冬が近いな。ここまで寒かっただろう。暖炉の近くで温まりなさい。今お茶を入れるよ」とても人が良さそうな爺さんじゃないか!いやいやまずは観察だったな、うん。


「食事時だったかな?タイミングが悪くてすまない」肉の焼ける良い香りがする。シェステが少しそわそわし出しているな。時間は持つだろうか。

「この歳になると一人の時間がつまらなくてな。ちょうどいい、もしまだなら一緒に食べるかい?そのテーブルの所に座って待っててくれ」


「いいの?食べたい!」あ~、持たなかったか。俺の合図も必要なくなってしまったな。

「じゃあ、ご相伴させて頂こう。姪っ子は肉に目が無くてな。何か手伝おうか?」

「僕手伝う!」シェステがゼトへと駆け寄る。


「なら、器を持っていってもらっていいかな?適当でいいからテーブルに並べておいてくれるかい?」孫に見せるような優しい顔と優しい声でゼトはシェステにお願いをする。

「うん!」手慣れた様子で食器を運んできれいに並べていく。


「昨日いい猪肉が手に入ってな」ドンと中央の大皿に猪肉のローストが置かれる。そして付け合わせに蒸した野菜を周囲に盛り付けた。色鮮やかでとても食欲をそそる。猪肉を切り分けて各皿に乗せると「「「いただきます!」」」という合図で食事を始めた。


 シェステは口いっぱいに肉を頬張り、ほっぺを押さえながら幸せそうに味わっている。どうやらほっぺが落ちないように両手で支えているようだ。カワイイな、おい!

 と、ふとゼトと目が合う。どうやら同じ感想だったらしい。少しだけ笑いながら食事に戻った。


 食事の合間合間にジャン達3人と出会ってからの経緯を説明し、食事の後に例の❝依頼❞について話をすることにした。

 


 食事の片付けも終わり、暖炉のそばの椅子へ腰かけると俺達はお茶を飲みながらゼトの話を聴いた。

「まず確認したいのだが、君は《開拓者》なのかね?」《開拓者》?初めて聞く呼び名だ。ここは正直に言っておくか。

「いや開拓者ではない。ずっと山奥暮らしでそもそも《開拓者》というものが何かを知らないんだ。よかったら教えてくれないか?」


「ふむ、雰囲気から熟練の開拓者かと思ったんじゃが……。いやすまんな。

《開拓者》というのは、❝未知のもの❞、❝困難な状況❞を切り開く者達という意味で、世界の至る所で敬意を持ってそう呼ぶんじゃ。


 世界中に開拓者組合、ギルドと呼んでおるが大陸ごとに本部、地区ごとに支部がある。ギルドといっても職業ごとに個別のギルドがあっての。ちょっと複雑ではあるが、普段から切磋琢磨し合ってるんじゃよ。

 開拓者には、さらに上の者達がおっての。伝説級の力を持つと言われるのが、《革新者》と呼ばれる者達じゃ。確か各大陸に1チームずつしかおらんらしいから……。世界で3チームのみってことじゃな」

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