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転魔教師~異世界転移した魔王、元の世界に戻るため召喚者の家庭教師になる~  作者: d-side
第2章 海洋国家オルヴァート編

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107限目「多足水精(ダゴン)」

 ダゴンとの戦闘が始まった。ダゴンはこちらに敵意を振り撒きながら両手を広げると魔法陣を複数展開し、《濃酸槍アシッドジャベリン》《氷結弾フロストショット》を放ち弾幕を張る。

 厄介な攻撃をしてくれる。氷結弾はまぁ固体だし、避けたり叩き落とすなど相応の対処はできる。


 問題はアシッドジャベリンの方だ。液体なので叩き落とせない。触れると大火傷を起こし、避けたら避けたで地面が融解し足場が悪くなる。そして火属性で対処してしまうと、酸性の有毒な気体が発生してしまう。

 それが分かっているのだろう。アスラ達は回避に専念している。


「シェステ、❝火❞は使うなよ!《氷嵐ブリザード》!」俺はアシッドジャベリンを凍らせつつダゴンの弾幕ごと押し返す。が、ダゴン本体は凍り付くことはない。未だに魔力が充実しているようだ。

「シェステ!ブリザードを維持してくれ!」

「わかった!」シェステが俺の代わりにブリザードを放つ。


 まずはダゴンの魔力を削らなければならない。ダゴンを弱体化しないと動きを封じる❝隙❞を突くことができないのだ。

「《氷結魔法付与エンチャント・フロストマジック》!」アスラとハヤトの刀に、《氷龍》と同等の能力、氷結魔法を付与した。


 カーラ、アスラ、ハヤトの3人はタイミングを合わせて多数の斬撃を飛ばす。ダゴンの攻撃を徐々に押し戻し、距離を縮めていく。

 己の不利を悟ったのか、ダゴンが身を縮めると泉の水を吸い上げ、身体を大きく広げ巨大化した。こうなるとブリザードが全く効いていないようだ。

 ダゴンは巨大な触手の先端を槍のように高速で繰り出してくる。一転して今度はこちらが防戦一方である。ジリジリと前線が押し戻される。だが。


「よし、作戦通りだ!ダゴンが泉から離れたぞ!《大樹精召喚サモン・ドリアード!》」俺は待っていたとばかり土属性の大精霊、ドリアードを5体呼び出す。3体を泉付近に配置し、2体がダゴンの相手をする。


 土属性は水属性に対して優位性を持っている。特にドリアードは水の魔力を吸い上げて成長する特性があるのだ。

 水の精霊は水場の近くでは無類の力を発揮する。ダゴンも例に漏れず、水場である泉の近くに陣取られると、本体の魔力を削るのは非常に難しい。なので、水場から誘い出すのが勝利への絶対条件だった。


 2体がダゴンの相手をしている間、泉付近の3体は根を伸ばし、急速に泉の水を吸収していく。吸収する度に身体が大きくなり葉が生い茂り、精強な姿へと変化していく。泉の水を吸収しきると強力な魔力を放ちながら、ダゴンへと攻撃を開始する。


 ダゴンは天敵でもあるドリアードへと標的を変える。精強になったドリアードは、さらにダゴンから魔力を奪うために絡みつこうと根を伸ばしていく。

 必死に抵抗するダゴンは、身体の形を変化させながら繫茂する根を回避していく。

 

「皆、追撃を頼む!」4人が氷属性の攻撃を始める。

 同じ水属性ではありながら、氷と水では状態が違う。水は不定形であり❝柔❞の攻防が可能である。打って変わって氷は定形であり❝剛❞の攻防が可能である。


 だが現在のダゴンは攻撃よりも防御、特に回避が重要な局面であり、❝柔❞の様相を強いられている。従って、凍結させ動きを封じる氷属性攻撃は極めて有効なのだ。


 剣士であるカーラ、アスラ、ハヤトは氷結の力を宿した斬撃を飛ばし、魔法使いであるシェステは《氷槍フロストランス》を打ち込み、ダゴンの触手や身体の各部を凍結させ切除していく。すぐさま回復はするものの、急速にそのスピードを鈍らせる。


 そしてついにドリアードの根がダゴンを捉える。急速に魔力を吸い上げられ、焦りが見える。このまま行けるかと思ったが、相手も黙ってはいない。

 ボワっと根に黒い炎が纏わりつく。あれは《黒炎ダークフレイム》か!アルバレイのやつ、闇属性を付与していたな?


 ドリアードの根が燃え落ちていく。だが負けずに次々と根を張り巡らせていく。やがて5体全員が根を巡らせ魔力を吸い上げ身体を成長させる。対照的にダゴンの身体が縮んでいく。

 ドリアードの身体が大樹へと成長させ、美しい花が咲き始めた。待ち望んだその❝時❞がやってきた!


「皆、引け!」俺は指示を出すと全員が後方へと退く。



「シェステ!!」

「竜の巫女が願い奉る。クシナを依り代に紺碧竜よ、顕現せよ!!」シェステの言葉と共に、クシナが竜鱗鉱を天に捧げた。

 クシナの身体に青く輝く竜のオーラが重なる。


「うん、成功したね」クシナの声だが、話し方は紺碧竜そのものである。

 本来ならば紺碧竜本人に顕現して欲しいところなのだが、シェステの魔力が規定値に及ばないということで、今回は紺碧竜がクシナに❝憑依❞させることにしたのだ。

 これならば魔力も大幅に節約できるし、効果も抜群である。


 覚えのある懐かしい竜気を感じたのか、ダゴンの身体が反応し完全に止まった。

「長いこと寂しい思いをさせたね、ダゴン。今しばらく待ってておくれ。必ず僕は戻ってくる」リヴァルダスが言葉を紡ぎ、掌をダゴンに向けると青い光がダゴンを包む。その隙に、俺はダゴンの霊核に触れ、直接魔力を流し込む。


「《解呪デモリッション》」禁呪《魂隷術こんれいじゅつ》によって操られていたダゴンの赤く血走っていた目が、青い輝きを取り戻していくのであった。

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