第一話:目覚めたら…ぱっぱっぱらだいす!
「ぱっ!」
目覚めの瞬間、僕の口から自然に出た声。
目を開けると、目の前にはどこまでも広がる草原と、青すぎる空。それに空に浮かぶ三つの太陽。いや、これ普通じゃない。完全に異世界だろ。
「……ここ、どこだよ。」
昨夜の記憶を探ってみるけど、思い出せるのはガルバでのはしゃぎっぷりだけだ。酔いすぎて、調子に乗ってカウンターの上で踊ったことまで覚えてる。その後?覚えてない。完全にやりすぎた結果がこれだ。
僕には少し変わった過去がある。子どものころ、周りのみんなから「かっこよすぎすぎさぶろういやいやどんまい」と呼ばれていた。
カッコよくなりたい気持ちは人一倍強かったのに、必ずどこかでミスをして、最終的に「どんまい」で締められるのがお決まりだった。なんでこんな長いあだ名がついたのか、今となっては謎だ。
その頃の僕の夢は「サイボーグ宇宙忍者王子」になることだった。右手からはレーザーが出て、左手で忍者っぽい手裏剣を投げ、宇宙を駆け回りながら悪を倒す王子。今考えると、よくもまあ恥ずかしげもなく言えたもんだ。
そんな過去を思い出していると、背後から声がした。
「ねえ、君、迷子なの?」
振り返ると、青い髪の少女が立っていた。服はやけにひらひらしているが、手には魚が一本。その魚、ピチピチ跳ねている。いや、武器にする気なのか?
「ここはぱっぱっぱらだいす。君みたいな人が時々迷い込んでくるの。」
あっさり言われて僕は固まった。「ぱっぱっぱらだいす」ってなんだよ。ふざけた名前だが、周りの景色を見ると説得力がゼロではない。
「とりあえず村に行こうよ。説明はそこで。」
言われるがままについていくしかなかった。
村に着くと、そこではすでに僕を待っていたらしい。村人が集まり、興味津々にこちらを見ている。そして、一人の老人が前に出てきた。
「救世主殿、ついにお越しくださったか!」
救世主?いやいや、待て。僕、ただのつつつなんだけど?
「では、救世主殿。我らにその力をお見せ願いたい!」
力って何だよ。困った僕は、いつもの調子で勢いだけで言ってみた。
「ぱっ!」
一瞬の静寂のあと、村人たちが歓声を上げた。
「なんという力強さ!」「これが救世主様のオーラか!」
いや、ただ声出しただけなんだが?
こうして、僕の異世界での冒険が幕を開けた。未来のサイボーグ宇宙忍者王子にはなれなかったけど、救世主ならちょっと悪くないかもしれない。
(つづく)