第14話 とある話者の躊躇
和平を結ぼう。
魔王が口にしたのは、そんな驚くべき言葉だった。
どうやら魔王は、以前からその考えを持っていたらしい。
そして人界の代表たる勇者、俺との対峙でそれを提案した。
言われてみればなるほど、それなら俺が何事もなく魔王の元に辿り着けたのも納得だ。
魔王も最後まで迷っていたそうだけど、どうも俺とスライムの間に芽生えていた友情らしきもの(?)を見たのが最後の決め手となったらしい。
ちなみに以上の話は、コモドさん(俺が老人魔族と呼んでた魔族である)を交えた話し合いの中で明らかになったことだ。
なにせ魔王は、ほぼ「ククク……」しか言わないからな……あれの意図を正確に読み取るとは、流石魔王軍の参謀といったところか。
◆ ◆ ◆
というわけで、最後はちょっとだけ拍子抜けだったけど。
これで俺も、勇者としての役割を果たした……と、言えるのかな?
微妙か、はは。
けどなんにせよ魔王軍と事を構えることもなくなったわけで、俺はお役御免だ。
やれやれ、やっと元の世界に帰れるよ。
短いような長いような異世界生活だったなー。
………………。
…………。
……。
……はー。
うん、いやいや。
チビたちに会うのも久々だ!
って、五年も経ってたらもうチビとも言えないか。
ていうか、見た目はもう同い年くらいになってるのかな?
それとも、俺の成長が止まっているように元の世界の時間も止まってたりするんだろうか?
なんにせよ、いやー楽しみだー。
楽しみだー。
………………。
…………。
……。
……うん。
元の世界に帰れるのが嬉しい。
それは、嘘偽りない本心だ。
けど。
だけど俺は、まだ……。




