第15話 初めての寮生活でお風呂と学食
ガイダンスや施設の説明が多かったけど学園生活の初日は無事に終わった。
私は女子寮の自分の部屋に入った。木製のちょっと重々しいドアが歴史を感じさせてくれるね。
はぁ、疲れた。
元の世界の学校だって覚えることはいっぱいだけど、この世界の学校は初めてだからね。最初から全部受け入れられるほど柔軟じゃないってこともあるけど。
ついでに言うと一応グレインからミッションとしてアリスティアのお目付け役的な立場を仰せつかってるし。別に彼女が誰と恋をしたっていいと思うんだけど、逆ハーレムルートだけは断固阻止しないと。
こっちの世界の王室含む貴族社会の序列や規律みたいなものを乱しまくっちゃうことになっちゃからね。
寮の部屋は基本的に一人部屋になっている。元の世界換算だと10畳くらいあって大きなベッドもあるし、作り付けのクローゼットがあるから一人暮らしの部屋としては十分に満足(元の自分の部屋より大きい)なんだけど。
貴族出身のお嬢様はこの部屋は狭いって文句言っていそうな気がする。
たまに物語で一部屋に二人入って共同生活する寮生活とかあるけど、あんな感じじゃなくて一人部屋なのは本体が猫である私にはメチャクチャ助かる。
一人だったら猫の姿に戻ることもできるし……
いや、魔力はほぼ無尽蔵(from ご主人様)だから変身しっぱなしで大丈夫なんだけど。
『念話』は現在、目を見ての直接しか使えないから遠隔での連絡方法をご主人様が準備してくれるらしい。スマホがあれば一発なんだけどね。
コンコン
部屋のドアがノックされる。扉を開けてドアを出るとアリスティアがいた。
「ミーヤさん。お風呂に入って一緒に食堂に行かない?」
「行きます」
部屋に調理用のコンロはないし、お風呂は大浴場に入りに行くことになっているからアリスティアが誘いに来てくれた。
なんだろう、メチャクチャ嬉しい。アリスティアにとってとりあえず今の時点で一番仲が良い友達認定して貰えてる感じ。
今転生してきて良かったなぁって思っちゃったよ。庶民派美少女のアリスティア最高!
なにしろ周りは乙女ゲーの世界だから美形に美少女ばっかりで、しかもお貴族様の子女だからちょっと気後れしていたのだ。
いや、美少女度数で言ったらアリスティアがぶっちぎりなんだけど、この子はゲームで見慣れてし私から見た親近感の湧く性格してるから。
荷物は少ないから寮の部屋に置いて、大浴場に移動するために寮の玄関ホールまで行く。大浴場と食堂は渡り廊下で繋がっている別の建物になっていて男子と共用になっている(もちろん浴室は別だけど)。
こういう所はゲーム世界のはずなのに凄く効率的にできてる。女子寮と男子寮にそれぞれ食堂とお風呂を作ったら料理人さんをたくさん雇わないといけないし光熱費が倍かかっちゃうもんね。
…
……
………
ちゃぷんっ
「あ、あの、ミーヤさん」
お風呂に2人で使っているとアリスティアが話しかけてきた。しかし、天は残酷だ。アリスティアは入学年齢の16歳のはずだから私の方が一歳年上なのに……カップ数だと二つくらい負けてる?
(見栄を張ってます)
「ん?」
「その、さっきはありがとう。私、緊張しちゃって声が上ずっちゃって」
アリスティアが途中で言いよどんだが、自己紹介の時に隣に座っていた私がこっそり手を握ったことを言っているんだろうと思う。
「ふふ、気にしなくていいよ。アリスティアさんから見たら周りは貴族ばっかりなんだもん。緊張しちゃうのは当たり前だよ。それに私も緊張していたから隣にアリスティアさんがいてくれて心強かったよ」
二人でえへへと笑いあう。ああ、やっぱり学校内ではアリスティアと一緒にいるときが一番ホッとする。この子のことはよく知ってるもんね。親戚の子と一緒にいるくらいの感覚で付き合える。
二人で背中を流しあってもう一度湯船に戻ると何か丸いものを踏んづけた。
「痛っ!」
誰だよ……湯船の中に変なもの入れてるのは!?
お風呂を上がって制服姿に戻り(学園内は基本制服だ)、食堂に入るとやはり騎士学科のシルヴァとアルフレッド、魔法学科のメルヴィンが目立っていた。
広い食堂に大きなテーブルがいくつも並んでいるが、遠巻きに女生徒が攻略対象と相席できないか狙ってけん制し合っている感じ。
あと女子で騒いでいるのも三人いる。こっちはおいおい紹介するね。
あれ? そう言えば悪役令嬢ポジションの子が私たちと同じAクラスにいるはずだったのにいなかった?
「ミーヤさん。あそこの席が空いてます。とありえず食事のトレイを受け取ってあそこに座りましょう」
アリスティアに言われるままに席に座る。
って、ここメルヴィンの真正面なんだけど……女子同士のけん制が分からないの?
う~ん、総天然色ヒロイン。
とりあえずメルヴィンに挨拶しよう。友達になるんだ。
「ミーヤ・キャンベルです。よろしくお願いします」
「君か……あの挨拶の後ですぐに僕に接触してくるってことは君の方も僕に対して思う所があるってことかな?」
メルヴィンがスープをすくうスプーンを持つ手を止めて私を睨めつけてくる。
ええ!? 私なにかしちゃいました?




