その7(18)
登場人物
僕 (ニブイチ)→主人公。穏やかな生活を望むも、結局はアクシデントに巻き込まれる不幸体質。ヘタレ。
テルテ→ニブイチの造った人造人間。ニブイチの幸せを願う一方、溢れんばかりのエネルギーで理不尽に暴れ回る衝動に駆られることがある。
役人→作中ではA、B、Cの三人が登場している。金さえあれば何でもいい人たち。
ネーテ、ルタ→小悪党の兄弟。ニブイチから物を盗んだルタはテルテに懲らしめられた模様。その腹いせかネーテは役人を連れてニブイチの家を訪問した(その2(6))
さて、僕、テルテ、役人たちが宿に着いたところから話を再開しよう。早朝という時間帯でありながら宿のテルテの部屋には吟遊詩人の男が待っていた。羽根つき帽子に灰色のマントを羽織っていた。テルテによると彼から贋てるての攻略法を聞いたのだという。彼の素性について、本人はファスの元を離れたとだけ伝えたのだとか。僕にしてみれば初対面の相手の発言をよくも鵜呑みにできたものだと思った。
役人は三人とも詩人の姿を見て驚いていた。
「あんた、噂に聞く裏切り者じゃないか」
役人Aがそう言うと、
「裏切り者とは酷いな。ファスとは立場が違うだけだよ」
ファスという言葉をここでも聞いた。僕は詩人にいくつか尋ねた。
「ルタとネーテについて知りたい。ここの役人たちが押し寄せた時はネーテがルタは死んだなんて言ってたんだが」
「あのガキ二人ならそういう手口はよく使うだろうね。ファスの組織の一員でもあるからね。ただし、贋てるてが暴走して手にかけた可能性は捨てきれないけど」
「ファスという人間が贋てるてを造ったのか?」
「そうとも。作業のできる人造人間が大量生産できればいい商売になると踏んだんだろう。実際は凶暴さを排除できていない失敗作が多くて参っているようだがね。比べてこれは君のてるてだよね?聞き分けはいいし、中々の行動力をしているものだから感心したよ。君なら本物と見分けが付かないように演じられるだろうね」
これに対してテルテは、
「私はオリジナルになるために造られたんじゃない」
「そうなの?見た目がそっくりなのは本物を造りたいという欲望の表れだと思ったけど」
確かにそう思われても仕方ない。僕の考えた理想の女性というのが、たまたまてるての容姿をしていたのだと僕の方から説明した。
「よく分からんが内面は本物のてるてでは物足りないと言うことか」
「そもそもてるてという女性を僕は見た目以上に知らないんだ。本物を目指したところで偶然の一致でもない限り、贋物しかできるはずはない。僕のテルテは馬の姿をしていながら羊の鳴き声が聞こえるような存在なんだ」
これを聞いた周囲は混乱して沈黙した。ファスより奇妙な考えだと思われたのだろうか。テルテは怪訝な顔をしながら馬?羊?と呟いていた。しばらくして役人Bが沈黙を破った。
「こいつは参った。ニブイチのてるては本物になり得ないのか。だから諦めて別の人間にしてやろうとな。誰なんだよ内面のモデルはさ」
僕は明確な答えを持っていなかった。具体的な一人を意識して魂を造ったのではないのだ。それだけを言うと、彼は考え込むようにして、
「君に危害を加えたファスという男はね、本物のてるてを造ろうとしているんだよ。だけど君の考えを基にすると、今のあの男にはそれはできないね。てるてに執着しているようであまりてるての気持ちを汲み取ろうという姿勢は皆無だから」
「僕とテルテはこれからもファスに追われる?そうだったら何かいい手段はないかな?」
彼は帽子の鍔を指の腹で擦りながら渋い顔をして、
「無理だろうね、死ぬまで追ってくるよ。それに今のことが事実だったとしてもファスは信じないだろう。誰も考えない、理解できないことを思いついては発明してしまう男なんだ。だから誰も口出しできないし、ファスもそれが分かっているから話を聞こうともしなくなった。プライドも高くなってね。自分と同じことを考えた奴がいる、不愉快だとか言って君のことを嫌っていると思うよ」
会ったこともない人間に恨まれているらしい。迷惑である。これでは僕は穏やかな生活ができないじゃないか。
「お困りのようだね。占ってあげようか」
別の部屋から男が入ってきた。途方に暮れる僕に付け入るようなタイミングなので断ってやろうかと思ったが、詩人が勧めてくるので占ってもらうことにした。すると占い師は必要だからと言って僕の髪の毛を一本引き抜き、端から端まで真剣な目つきで観察していた。当然痛みはあるし、苛立ちもある。占いの結果次第では懲らしめてやろうと待ち侘びていたら占い師はその毛を放り捨てて、
「夕暮れの街に行きなさい。そこなら理解者を得られるはずです」
と告げた。
次から新章に入ります。準備のためしばらくは投稿できませんが、これからもよろしくお願いします。




