第67話、再度、求婚されたが。③
お互いしばらく見つめあった後、アリスはアーノルドから視線をそらし、頬を赤く染めた状態のまま、アーノルドが見られなくなる。
そんな姿を、アーノルドが楽しそうに笑った後、その場に片膝をついた。
「アリス・リーフィア嬢」
「……え?」
突然フルネームで呼ばれた事に驚いたアリスが振り向くと、そこには片膝をついているアーノルドの姿があり、何をしているのか全く分からないアリスは慌てるように声をかけようとした。
しかし、声をかける事よりも、まず行動に出たのがアーノルドだった。
彼は無防備になっているアリスの右手を優しく掴み、優しく握るようにしながらアリスに視線を向けていた。
「私は、あなたの事が好きです」
「え……」
「将来、あなたと永遠に過ごしていきたいと願っております」
「……あの、えっと……」
「――どうか、俺の妻になってくれないでしょうか?」
まっすぐな瞳で、はっきりと、アリスにそのように言った。
周りには誰もおらず、居るのはアリスとアーノルドのみ。
どうしたら良いのかわからず、慌てる素振りを見せ、同時に恥ずかしくなってきた。
顔面が余計に真っ赤に染まりながら、返事がうまく出来ない。
(……ただ)
アリスは、そのままアーノルドを見つめる。
(――嫌では、ないんだ)
この人ならば、信じていいと思ってしまった。
アリスは何も言えないまま、アーノルドの手を強く握りしめる。
間違いなくこれは求婚で、返事を今言わなければいけない、と言う感じだったのだが、アリスは発言が出来ないまま、唇を噛む。
しばらく黙ったまま、アリスは再度、気持ちを落ち着かせるために深呼吸をした後、再度アーノルドに視線を向けた。
「……アーノルド様、一つだけ、お願いがあります」
「……なんでしょう、アリス・リーフィア嬢」
「もし、私が十八歳から、生きる事が出来れば――」
「私を、妻としてもらってください」
慌てる事なく、まっすぐな瞳でそのように発言したアリスの姿に、アーノルドは一瞬声を喉に止めてしまった。
つまり、全てが終わったらと言う意味だ。
彼女が十八の誕生日を迎える事が出来れば――と言う発言にアーノルドは何も言えなかった。
まっすぐなアリスの瞳に目を向けたまま、アーノルドは静かに笑いながら答えた。
「ええ、もちろん」
そのように発言した後、アーノルドはアリスの手の甲に静かに口付けをするのだった。
口付けをするとは思っていなかったため、アリスの真面目の表情は数十秒で終わりを告げる。
「ひぇあ!?」
変な声を出したアリスは、先ほど以上に顔を真っ赤にしながらアーノルドを睨みつける。
「あ、アーノルド様!と、突然このような行動はやめてください!!」
「なんだ、唇じゃなかったんだから別に良いだろう?」
「唇の方がもっと悪いですけど!け、けど、手の甲にキスは慣れていないのでやめてください!!」
「え、ダメなのか?」
「ダメです!!」
叫ぶように返事を返した後、アーノルドは残念そうな顔をしながらアリスに視線を向けたが、アリスは顔を膨らませながら背を向けて歩き出す。
早くシファとカルロスの所に行かなければと言う気持ちを思い出しながら早歩きで歩き出すアリスに視線を向けながら笑いだす。
彼女に聞こえないような声で、静かに呟いた。
「……そうさ、絶対に俺は……お前を死なせるつもりはないから」
誰にも聞こえないような声で、アーノルドは静かに呟いていた事を、彼女は知らない。
これにて三章完結になります。
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