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第06話、アリス・リーフィア③


 窓の外に人間がいるなんて、誰が想像しただろうとその時アリスは思った。


 固まっているアリスの前に笑顔で窓から侵入してきた人物、アーノルド・クライシスは侵入を終えた後、そのままアリスに近づき、彼女の手に触れ、そっと口付けをする。

 本来、普通の女性たちだったらきっと甲高い声を上げて喜ぶかもしれない。しかし、アリスはそこらへんの女性たちじゃない。


「こんにちわ、アリス……早速なのだが、返事をもらっても大丈夫だろうか?」

「……」

「……アーノルド、固まっているぞ」


 リアムが呆れたような顔をしてアーノルドに答え、アリスは固まったまま徐々に顔を赤く染めながら目の前の男を凝視する。何故、どうして、逃げたいと思っていた男がここに居るのかわからない。

 同時に、何故窓の外に普通に居るのだろうかと思いながら、アリスは慌てる素振りを体で表現しており、再度その姿を見てリアムは頭を抱える。

 アーノルドは何処か楽しそうに笑いながらアリスに再度近づき、指先に触れる。


「ひぇぇッ!?」

「そんな事ないですよねアリス。俺はあなたの事をこんなにも愛しているのですから」

「わ、私は愛してないです!す、少なくとも出会って数日しかたってません!!」

「一目惚れってあるでしょう?」

「絶対ないですぅ!!」


 まるでアリスの反応を楽しんでいるかのように、アーノルドは答えている。一つ一つ反応するたびにこの男は笑っているのだ。

 涙目になりながら、リアムに助けを求める目を向けたのだが、リアムも助ける事が出来ないのかその場から動けない。

 なすがままの状態になっている彼女に目線を送りつつ、リアムはアーノルドに声を再度かけた。


「……アーノルド、いい加減放してやれ。本当、彼女が困っている」

「俺はもうちょっと堪能したかったのですか……」

「しなくていい……全く、お前はアリスのどこに惚れたのかがわからない」

「あれ、殿下は気づかないのですか?」


 フフっと笑いながら、いつの間にかアリスの肩にアーノルドの大きな手が置かれており、アリスはこの世のモノとは思えない形相をしてアーノルドに視線を向けている。そんな顔も出来るのかとリアムは思ってしまった。

 同時に、この『悪魔』は厄介すぎると。


「――可愛らしいではないですか?」


「……黙れ、クソ『悪魔』」


 いつの間にか火花が散っているように見えたのはアリスだけなのか、青ざめた顔をしながらアリスはその場から距離を取る。とりあえず逃げたい、とにかく逃げたいアリスは泣きそうな顔をしつつ、後ろに下がった。


「……まぁ、所でアリス。授業をサボるとは、真面目そうな恰好して以外に不良なのだな?」

「あ、あはは……そ、それよりもく、アーノ……いえ、クライシス様だって授業抜け出してきているではありませんか!」

「『アーノルド』で構わないぞ、アリス……それに付け加えるなら、殿下もサボっているな。ねぇ、殿下」

「……」

「うう……ッ」


 確かにアリスも授業を受ける気がなかったのだが、それ以上に第三王子であるリアムも授業をサボっている。目の前のアーノルドだって授業を出ていない。つまり、三人ともよからぬ事をしている、と言う事になる。

 アリスにとって、この学園の授業と言うものは楽しいモノもあれば、楽しくないモノもある。因みに今回の授業はアリスにとって楽しくないモノだ。

 涙目になりながらそのままゆっくりと後ろに下がりながら、この場から逃げてしまおうかと考えていたのだが、アーノルドはどうやら逃がすつもりはないらしい。

 彼女が一歩後ろに下がれば、一歩前に出てアリスを追ってくる。泣きそうな顔をしている彼女を見ていられなかったのだが、リアムが真ん中に入った。


「アーノルド、彼女をこれ以上いじめるのはちょっといただけない……一応、純粋な女なんだ、こいつは」

「一応って何ですか一応って!?」


 余計な言葉が聞こえたのは気のせいだと思いたいが、アリスは涙目で訴えるが、リアムは何も視線をそらしただけだった。

 アリスにとって、目の前の二人は敵でもなければ味方でもない。涙目になりながらも今この場で逃げようと、何か策がないか考えていた時、アーノルドは不敵な笑みを見せながら言った。


「そう言えば、聞いておきたいことがあるんだけど、良い?」

「え、あ……は、はい!?」



「――さっき言っていた、『魔導書』って何かな?」



 ――この男は一体どこからどこまで聞いていたのだろうと、アリスは思った。


 アーノルドが言っている『魔導書』と言うのは、先ほどリアムと話をしていたことだろう。前回初めて会った時の『本』の話ではない。

 しかし、アリスはそれについては言葉を出す事が出来なかった。


 だってアリスは、まだ目の前にいるこの人物の事が信用出来なかったからである。


(……いつか、バレるのだとわかっていたけれど、それはまだ、今じゃない)


 全校生徒たち、家族全員たちに知られてしまったら、アリスはこれからこの学園で、いや、この国で生活出来るかわからない。まだ見せるつもりではないと思いながらも、アリスは鋭い瞳をこちらに向けているアーノルドに目を向けた。

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