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■98 ちょっと難儀な依頼

ここから3話の続きもの。

 その日私達はちょっと難儀な依頼に直面していた。

 と言うのもこれがギルドランクを上げるために必要なもので、その依頼と言うのがギルドによって異なるらしい。

 で、今回のクエストなんだけどそれが厳しかった。


「オーガの討伐?」

「ああ」


 スノーにそう告げられた。

 オーガと言うのはなんだろう。

 まあ何となく想像は付くけれど、要するに鬼だよね?って、鬼ってヤバくない!


「スノー。オーガって」

「ああ。知っての通り、相手は鬼だ。しかもこれが私達のDランク昇格クエストらしい」

「割りに合わないよね?」

「まあな。だがこれもランダムで。その都度(つど)発生するこの世界のルールに則っているにすぎないからな」

「それはそうだけど……(ゲームなんだけど、そういうとこ妙にリアルなんだよなー)」


 そう言うところが無駄にリアルなのがまたいい。

 何だろ。ゲームって感じが最初の頃、随分と早い段階で感じていたけどもしかしてそのせいでズレてるのかもしれない。けど皆んなの顔色を見ると、特にちなっちとスノーが渋い顔をする。


「どうしたの二人とも?」

「いやなんでもない」


 スノーは早々に話を切る。

 しかしちなっちは素直だ。


「うーん、ゲームっぽくないなーってさ」

「あっ、そうだよね。私もそれ思ってた」


 如何やらちなっちもらしい。

 もしかして何かしらのバグなのかな?と思うが、私達だけ固有で起こるバグなんてそうそうありえない。

 それを鑑みると、こう思っちゃうのは私達がゲームにのめり込みつつあるからなのかもしれない。良いことではないけど、それだけ楽しんでいることになる。


「よーし!じゃあ皆んなで行こっか」

「はい!」

「よっしゃ!とっとと片付けるぜ」


 Katanaとタイガーが相槌を入れた。

 さてさて、目指すはオーガの根城。〈空蝉の森〉。



 私達は〈空蝉の森〉にやって来た。

 この森の特徴は蒸し暑く、そしてーー


 ミーンミーンミーンミーン


 めっちゃミンミンゼミの鳴き声がすることだった。


「ねえねえスノー?さっきからミンミンゼミの鳴き声が聞こえるんだけど気のせいかな?」

「いや聞こえるぞ。だがこれは蝉の鳴き声じゃない」

「どういうこと?」

「重なり合った葉っぱ同士が擦れて鳴いている音ですよね。つまりは摩擦音と言うことになります」


 スノーより先に教えてくれたのはKatanaだった。

 確かにそう考えれば納得がいく。

 でも何でミンミンゼミ?


「おそらくこの森はこの音と蒸し暑さが同調することにより、常に夏場と同じ環境にあるんだろうな」

「それってどんな意味があるの?」

「単純に考えれば中に入ってきたプレイヤーやNPCの感覚を麻痺させることにあるだろうな」

「それって……」

「つまり入って来た人間の思考を妨げることに特化している空間なんだろうな」


 スノーはそう説明してくれた。

 あんまり言ってることはよくわかんないけど、つまりこの森は常に夏みたいな状態で、蝉の鳴き声とか暑さのせいで気持ちが乱されると言うことになるんだろうね。うん。知らないけど。


「でもさスノー。私オーガについてよく知らないんだけど、鬼なんだよね?」

「ああ鬼だ。巨大な鬼。そう言う認識で構わない」

「構わないって、例外がいるの?」

「ゴブリンやトロールも見方によってはオーガだ。これらを鬼という悪魔と認識するのであればそう言った見方も間違いではないことになる」

「うーん。難しいね」

「ああ。だが私達のやるべきことは単純だ」

「ん?」


 私は首を傾げる。

 そんな私にちなっちが堂々と答える。


「倒せばいいってことだよマナ」

「倒せばってそんなに簡単なのかな?」

「簡単じゃねえだろうな。もしかしたらこの間のスプリガンみたく苦戦するかもだな」

「うーん。それはちょっと怖いなー。私魔法使えないし、皆んなの役に立てるかな?」

「役に立つ立たないではないありませんよ、マナさん。適材適所と言う言葉があります。必要な場面で必要な行動を率先して出来るマナさんにはうってつけの役割じゃないですか」


 タイガーの不安な発言をKatanaが一蹴した。

 流石はKatana。水の流れみたくサラサラと不純物を洗い流してしまう。私はそんな頼れる仲間達と共に森の中を進んだ。

 そして一際広い場所に辿り着く。


「ここは……」

「ポイな」

「だね」


 スノーが短く呟く。

 それに合わせてちなっちも頷くが、確かにそんな雰囲気がある。

 まああくまでもポイってだけで、そこに何も居ないんだけどね。


「入ってみる?」

「しかないな」


 スノーは渋々と言った具合だ。

 まあ自分から罠に飛び込むんだもん。そうなるのも仕方ないよね。でもこれはランダムエンカウント?的な感じじゃなくて、ボス戦とかと同じ扱いっぽいので私達は一度気を引き締めてから足を踏み入れるのだった。


「皆んな行くよ!」

「「「「おー」」」」


 やる気に満ち満ちた声。

 やる気を感じない仕方ない感ダダ漏れの声。

 落ち着いた声音、ハキハキとした言葉。それらが入り混じり、皆んなの顔を流し見る。うん。いい感じに皆んな引き締まってるみたい。

 私も何だか元気が出て来た。そんな気分で向かうのでした。

 

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