■91 和薬草を食べてみた
ここしばらく疲労をため込んでいました。
その日、ギルドの中で私は一人でいた。
この間の和薬草ことヨモギミントを食べてみたいと思ったからだ。
ヨモギミントはヨモギとミントの特徴を併せ持つらしい。だが元は回復用のアイテム素材なので味の方は如何様かと思ったのだ。
「まずは天ぷらか」
私は鍋に油を張った。
軽く素揚げにしてみるのもいいかもしれはい。
天ぷらや素揚げ等の揚げ物は揚げる時間と取り出す瞬間、音の変化と香りの変化それらを全てを見繕う必要がある。
正直ミントは苦手な人が多いが、私は嫌いじゃない。
ヨモギはあまり馴染みがないが、青臭さが残るらしい。
「どれどれ」
私は軽く素揚げにしてみた。
パリッとした食感が口の中に含まれる。白い毛が少しモサッとはしたが肝心なのは味の方だ。
「少し苦いな。青臭いと言うのは、ミント臭が強いのかもしれないな」
正直味の方はリアルのそれとは程遠いようで近いとも言えた。香りはミントらしく味はヨモギっぽい。
青々としたと言う表現もあるが、まあ美味しくはある。けど苦手な人にとっては苦い顔をしてもおかしくはない。あっ、これはあくまでも個人の感想だからね。
「なにしてるのタイガー?」
「ん?ああ、この間のな」
そこにふらっとやって来たのはマナちゃんだった。
「あっ、和薬草だ!」
「素揚げにしてみた。食べるか?」
「食べる!」
マナちゃんは揚げあった和薬草の素揚げを手に持つと口の中に放り込んだ。
パリッといい音ともにムニャムニャと鳴る。
「うーん」
「どうだ」
「ゴクリ。うん。私はミント嫌いじゃないから全然美味しいよ。素揚げもバッチリだし」
「いや今肝心なのは味なんだぜ」
「味?うーん、好きな人は好きかも。でも嫌いな人は……」
「なにしてんのー」
そこにまたしてもフラッとやって来たのはちなっちちゃんだった。
ちなっちちゃんは私の揚げた素揚げの匂いを嗅いだ。
「ふんふん。あっ、ミント?」
「そうだ。食べてみてくれねえか?」
「OK!味見なら任せといてよ。どれどれ……」
「あっ、ちなっち待って!」
何故かマナちゃんは止めようとした。
しかしちなっちちゃんは構わず口の中に投入する。すると目をカッと見開き舌を出した。
「に、苦い」
「えっ!?」
思ってもみなかった反応だ。
もしかしてこれは……
「ちなっちは駄目だった。ミント食べれないでしょ」
「げっ!?ミント」
「ん?もしかして、ちなっち駄目なのかよ」
「そうだよー」
如何やら本当らしい。
ちなっちちゃんは今まで如何やった回復薬を飲んでいたのか微妙に気になる。
「あはは。ちなっちは回復薬は飲めるのにね」
「うるさいなー。アレはアレで慣れたの」
「あっ、慣れか」
なるほど。
慣れは重要だ。慣れておかなければこんな代物食べられないのも無理はない。これは困ったな。まだまだ要改良が必要だ。
「ふん。どうする」
「タイガー。胡椒とか塩とかかけてみようよ」
「なるほどな。そりゃいい」
私はマナちゃんのアイデアを使うことにした。
と言うか普通に胡椒とか塩とか砂糖は並べて出しておいたのだ。
天つゆもあらかじめ用意しておいたのでこれなら行けるだろう。
「食べるね」
「ああ」
「なんかスノーみたい」
「アイツと一緒にすんなよ!」
「あはは。ごめんね」
そんな軽口を叩きながらもマナちゃんの意見は的確だった。
「はむはむ」
「どうだ」
「うん。天つゆが美味しい!」
「そうじゃねえだろ」
「うーん。和薬草はね普通に蓬餅とかにした方がいいと思うよ」
「はあっ?」
いやまあそうだろうけどよ。そう言うんじゃないんだよねー。
ちょっと違うんだけどね。まあいいや。
「それならもう作ってある」
「あるんだ!」
「当たり前だろ。ちなっち、これ食えよ」
「えー」
「いいから食え!」
私はちなっちの口に無理やり押し込んだ。
するとちなっちは仕方なさげに蓬餅を食べる。
今度の反応はどうだ。さっきとは違ってきな粉とかも使っているから甘いはずだが。
「うん。これなら食べれる」
「結局普通なんだな」
「普通でいいよ。普通でー」
ちなっちちゃんはそう口にする。
結局和薬草の天ぷらを食べれたのは私とマナちゃんとそれからKatanaちゃん。後意外にもスノーちゃんも行ける口らしい。
結果、ちなっちちゃん以外には好評だったのでした。まだ改良の余地は十分あるけどね。




