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■88 和薬草

次は明日か明後日かには投稿するかも。

 私達はその日〈ミヤビ〉周辺に存在する山〈秋伏山〉にやって来ていた。

 如何してここになって来たのか?そんなの決まっている。

 ここに今回の依頼の品があるはずだからだ。


「和薬草ってどんな形してるのかな?」

「ヨモギとミントを混ぜて肥大化させたような形らしいな」

「な、なんでヨモギとミント?」

「知らん」


 スノーは即座に拒否した。

 流石にそこまでの情報はネットには転がっていなかったらしい。


「とにかく探しましょうか」

「OK!って、和薬草のモチーフって」

「ヨモギとミントだ」

「あんまり見たことないなー」


 ちなっちの言う通りだ。

 私も蓬は使ったこともない。

 そんな困った私達にタイガーが教えてくれた。


「ヨモギはキク科の多年生植物だな。葉っぱの裏側に白くて柔らかに毛がいっぱい密生してるぜ」

「へぇー」

「ミントはシソ科ハッカ属属するハーブの一種で、薄荷は聞いたことあるだろ」

「うーん、あるようなないようなー?」


 ちなっちはピンと来ていないらしい。

 困ったなー。これじゃあなーんにもわかんないよ。

 困りあぐねるが、Katanaはシンプルかつわかりやすく説明した。


「ちなっちさん。要は葉っぱの裏側に白い毛が付いていて、小ちゃくて可愛い植物を探せばいいんですよ」

「そっか。OK!」


 如何やらその説明で理解したらしい。

 ちなっちは基本、周囲の状況とかに合わせて行動するタイプだから簡潔な説明の方が掴みやすい。

 と言うことで私達は、例の薬草を探すのでした。



「とは言ってもねー」


 私は山の中を這うように探していた。

 皆んなもそれぞれ分かれて探している。

 その理由を裏付けるのはここが“山”だからだ。そのせいも相まってめちゃくちゃ広いし、鬱蒼とはしていないけどサバサバしていた。サバサバってなに?


「まあいっか。とりあえず探そ」


 私は四つん這いになって探していた。

 そもそもこの依頼はクエストボードに貼ってあった依頼のようでそれをたまたま通りがかったスノーが持って来ただけだ。

 報酬もまずまずで、ちょっと余ったら幾つか和薬草を貰うことにする。


「タイガーもそれが目的みたいだし」


 あの時のタイガーの目の輝きと言ったら新しいおもちゃが発売されてはしゃぐ子供みたいだった。


 それにしてもさっきはサバサバしてるとか言ったけど、結構過ごしやすい。

 まだリアルは夏なのにここは秋みたいだ。

 ただ紅葉はしていないので〈秋伏山〉の“秋”要素は何処にあるのかわかんないけどね。


 なーんてくだらないことを考えながらも目と耳とそれから手はしっかり目的を見失っていなかった。

 ここはチートすぎるスキル【幸運】の出番。こう言う散策は【幸運】スキルの十八番(おはこ)と言っていい。


「コレも違う。コレもアレもソレも違うのかー」


 一枚一枚葉っぱの裏側を見比べる。

 しかしどれもかれもソレっぽくない。

 困ったなー。このままじゃ日が暮れちゃうよ。


(流石に無理だったかなー)


 スノー曰く、和薬草には群生地があるらしくそこを特定出来ればかなり楽らしい。

 とは言っても山の中は広く広大だ。おまけに小さなものなので見つけるのは骨が折れる。


「って、こんなことで諦めちゃ駄目でしょ」


 頬を強く叩いて気合を入れ直す。

 正直誰からの依頼なのかわかんないけど、必要としているんだ。だったら早く届けてあげたい。そう思うのも悪くないでしょ。

 そんな思いで私は探し回り、気づけば山の中に鬱蒼と生える森の中に入ってしまっていた。


「あれ?もしかしてだけど、ここ森だよね?」


 うん。もしかしなくてもそうだよね。

 私、完全に森の中で迷子だよね。まさかこの歳で迷子になるとは思ってなかったけど……うーん。まあいざとなれば【幸運】とか【動物愛】を使えばなんとかなるでしょ。

 私は気楽に考えることにした。


「そんなことよりも群生地を探すのが手っ取り早いはずってことは……あれ?」


 私は下の方にチラチラ視線を動かしてみた。

 するとさっきとは違う葉っぱがある。

 ちょっと気になるなー。私はしゃがみこんで調べてみることにした。葉っぱの裏側には白い小さな毛がいっぱい付いている。コレだ。間違いない!

 私は採取して確認した。


「和薬草……別名がヨモギミント。そのまんまじゃん!」


 私は一人叫んでいた。

 ただこれで目的は達成された。見ればたくさん生えている。これなら少しぐらい多めに持って帰っても怒られないだろう。

 私はチャットで皆んなにメッセージを送る。


「えっと、“和薬草見つけたよ!”っと」


 手短かつ簡潔な文章を送る。

 するとちなっちよりも先にスノーから連絡が入る。


「なになに……“わかった”うん。バッチリ伝わってるみたい」


 ちょっと嬉しい。

 戦闘面や知識面だとあんまり活躍出来ないから、こう言うところで活躍出来るのは少し誇りに思う。

 私はさらにスノーから送られてきたメッセを見た。


「“気を付けろ”なにに?“和薬草の近くにはドクノコがいる”ドクノコ?」


 聞きならない単語に首を傾げる。

 そんな私は気にせずに手を動かしていた。すると何か妙な感触のものに指先が触れるのに気付いた。

 その鱗のようななんと言うかサバサバしている何かに指先が触れ、生暖かい体温を感じてすぐに腕を引っ込める。


「うわっ!」


 私はすぐに視線を指先が触れていたものに向ける。

 しかしその瞬間、私の顔目掛けて何かが飛びかかってきた。

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