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■81 VSスプリガン

今日は個人的に疲れました。

後ここからしばらくボス戦の流れが続きます。ちなみに今、100話目を書いていますよ。

 私達は神殿の中に入った。

 中の様子としてはしっかりとした造りになっており、中でも目を引いたのは一番最奥にある巨大な扉だった。


「この扉なんだろ」

「なんだろねー」


 私とちなっちはポワポワした反応をする。

 しかしスノーは呆気なく答える。


「この先だな」

「あっ、言っちゃうんだ」

「当たり前だ。今更引き返すのも(しゃく)だからな」

「スノーがそんなこと言うの珍しいね。よーし、じゃあ皆んな行くよ!」

「OK!」

「はい」


 ちなっちとKatanaはすぐに相槌をくれる。

 スノーとタイガーは黙っていた。

 スノーはまあそのままだがタイガーはこんな時までキャラを守っているのだろうか?チラッと視線を向けると、何故か小さくなっていてぶつぶつ「あ、相槌合わせないと」とか喋ってる。


「別に気にしなくてもいいよタイガー。普通にやろ」

「う、うん」


 そんなタイガーを(なだ)めつつ、私とちなっちは一緒に扉を押し開けた。


 扉の奥は通路になっている。

 さらに先にはかなり広い敷地面積を壁で覆われていた。その先に窪みもあるので多分あそこから現れるのだろう。

 で、この通路からあのエリアに出ればボス戦開始。

 ゴクリと唾を飲み、気持ちを切り替えて頑張るのだ。


(いけるよね、〈麒麟の星雫(スター・ドロップ)〉)


 麒麟の頭の形をした鍔を軽くて撫で、ボスの待つ間に踏み込んだ。

 すると急に雰囲気が一変する。

 ゴゴゴゴゴーー

 起動音が響き渡った。壁に反響してその音はみるみるうちに大きくなり、その音を聞きつけた私達は固まって行動する。


「く、来るよ」

「だろうな」

「もうスノー!そんなあっさり言わないでよ」

「そうだぜ、もっと雰囲気ってもんがあんだろ?」

「そうだな」

「まあまあ皆さん落ち着いてください。そろそろ出て来ますよ」

「うん」

「来たよ!」


 ちなっちが叫んだ。

 小さな窪みには扉がありそれが開く。

 ゆっくりと開いたその先には何やら異様な姿があった。人型。それだけはわかる。そしてとてつもなく巨大だった。


「お、大きすぎじゃない?」

「来るぞ。アレがスプリガンだ」

「アレ、が?」


 扉が開き、そこから現れたのは巨大な鬼。

 黒く禍々しい雰囲気を放ち、顔の部分は分厚い。

 強靭な肉体に加えて、両手には斧をそれぞれ一本ずつ持っている。ヤバすぎるでしょ、アレ。


「黒く鎧のような体。長い角。二対の斧。それからあの面頬(めんぼお)。調べた通りだ」

「そ、そうなの?でもさっき言ってたことと」

「確かにな。だがあれはあくまで伝承のもの。ゲームや小説に登場する同盟生物でも見た目は異なるのがセオリーだろ」

「そんなものかな?」


 首を傾げながらも私は目の前から迫り寄るスプリガンを凝視した。

 それにしても大きい。

 腰には鎧のような物と腰蓑でしっかりと覆っている。

 爪は銀。まさにボスに相応しい風格を持ち合わせていた。


「グゥォォォォォォォン!!」

「うわぁ」


 スプリガンのけたたましい咆哮が炸裂する。

 コレはあの時と同じだ。【咆哮】のスキルで私を苦しめたあの熊と同じ。だけどその射程距離も範囲も桁違いに広い。

 瞬時に耳を塞ぎ難を免れたが、スプリガンは隙だらけの私達に敵意を剥き出しにし上から目線で覗き込む。

 両手の斧を物騒にも振り下ろす瞬間、私の前でKatanaが刀を抜刀し構えた。


 ガキーン!


 振り下ろされた斧の片方をKatanaが必死に受け止める。

 歯を食いしばっていて辛そうだ。


「Katana!」

「マナさんスノーさんの下へ!今フリーです」


 私はチラッとスノーを見ると弓を構えている。

 私はすぐさまスノーの元へと走り込み、それに合わせてKatanaも攻撃の先を折ってその場を離れた。

 【ジャスト回避】のスキルを【咆哮】でめちゃくちゃにされたのが痛い。

 出鼻を挫かれた私だったが、ちなっちとタイガーは違った。

 お得意の撹乱とたたみかけるような攻撃の連続で織り交ぜられ、もう片方の斧を凌ぐと共にスノーの弓を射る瞬間を作る。


「スノー!」

「マナ。私が射たら飛び込むぞ」

「うん!」


 ちなっちはスプリガンの腕を伝い背後に回り込みながら首筋を狙って双剣を落とす。

 タイガーもタイガーでガントレットの装甲をこれでもかと活かして、敵の攻撃を引き受ける。

 そんななか待望のスノーの弓矢が放たれた。狙いは左目。片目を潰せばこちらに有利に傾く。そう睨んだのだ。


「その目を寄越せ」


 スノーの厨二的発言。

 しかしながらそんなことに構っていられる余裕は私にはなく、Katanaも技を怒涛の勢いで繰り出した。


「龍蒼寺流剣術、陸ノ型辻風!」


 陸ノ型辻風が空を斬る。

 駆け抜けた旋風がスプリガンに襲いかかると、エフェクトがスプリガンから溢れた。

 ダメージ演出。

 どうやら少しだけダメージがあったらしく、総HPの一割が削れていた。だけどこれだけ皆んなでたたみかけたのにこれじゃあいつまでやってもきりがない。


(なにか方法を考えないと)


 私の考えるだけ考えて、結局何も出てこない頭ではよくわからなかった。

 だけど今私ができることをする。

 スノーは飛び込めと言った。だったら攻撃をとにかく避けて少しでもダメージを稼ぐ!


「行くよ〈麒麟の星雫〉!」


 私は〈麒麟の星雫〉を抜刀した。

 さらに空いた手にも〈波状の白星〉を構える。今度こそちゃんとした二刀流だ。しかもどっちも色物の剣。


「せーのっ!」


 私は〈雷光の長靴〉で加速し、それに合わせて〈波状の白星〉を振った。

 ギューン!

 風を切る音。〈波状〉によって巻き起こった波状攻撃がスプリガンを襲う。


「今だよスノー!」

「わかっている」


 私の送り出した風に合わせ、スノーも弓矢を放つ。

 追い風によって加速し狙い通りスプリガンの今度は右目を奪いにかかる。

 だけど今度は上手くいかず、スプリガンの攻撃は私に迫った。


「【コットンガード】!」


 ボワァ!


 私の周りに羊の毛のようなものが溢れていく。

 それは私の体を包み込むと、おんなじ形になった。

 スプリガンの攻撃は私の偽物にまんまとヒットし私は無傷でいられた。


「よーしこのまま」

「待てマナ!」

「えっ!?」


 突如地面に突き刺さっていたスプリガンな斧が横に靡かれた。

 驚いた私は【ジャスト回避】でバックステップを繰り出し何とか躱すが、頬を掠め鮮血が飛び散る。


「痛っ!」


 急な攻撃モーションの変化。

 私は呆気に取られる。

 しかしこの間にもタイガーは攻め立て、ちなっちは撹乱し続ける。Katanaとスノーも援護に回っている。

 後は私が皆んなの間を中継して、スプリガンにダメージを蓄積し続けるだけだ。


「行くぞ!」


 私は再び〈雷光の長靴〉の効果で加速。

 雷の如き怒涛の稲妻がスプリガンの股の下に滑り込み、そのまま二本の剣でアキレス腱を斬った……はずだった。


 カキーン!


「えっ!?」


 あまりにも硬すぎて攻撃がヒットしなかった。

 しかもそのせいでスプリガンは私を睨みつけてくる。


「あれ、これヤバくない?」


 【ジャスト回避】を使って避けようとした。

 だけどその瞬間、再び咆哮が放たれる。今度も逃げきれない。

 【コットンガード】もそれから〈雷光の長靴〉な効果も使い果たし、今はインターバル。よって移動手段と真っ当な防御手段を失ったことになる。

 そんななす術のない私にスプリガンは一際睨みつけ、両手に持つ斧を振り下ろした。

 

 


 

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