■8 スノー
10話ぐらいまでは頑張りたい。
私は今し方会ったばかりの可愛い女の子、スノーちゃんから鋭い眼光を向けられ挙句の果てには首に鎌の刃を当てられ完全に脅されていた。
死刑宣告みたいな雰囲気を醸し出す。
怖い。マジで怖い。
「あのね、スノーちゃん」
「それだ」
「えっ?」
私は変な声が出た。
一体スノーちゃんは何を怒ってるんだろ。わかんない。
「何怒ってるのスノーちゃん?」
「何度言ったらわかるんだ」
「何も言われてないけど?」
「態度で分かれ」
「わかんないって。だって今会ったばっかりなんだよ?それにこんな短い言葉じゃ地雷何て想像できないからね」
私は猛抗議した。
するとスノーちゃんは鎌を下ろす。
私は首をさすった。
「うわービックリしたー」
「そうだった。私は貴女とさほど仲良くなかった」
「それ酷いよー。鎌突き付けられて脅された仲なんだよ!」
「それは仲がいいとは言わない」
「じゃさ今からなろ!」
「はい?」
「今から友達になろうよ!私このゲーム初めてでよくわかんないから、色々教えて欲しいな!」
「どうして私が。ほかに仲のいい友達かネットでも使って攻略サイトを覗いてみればいい」
「うーん、調べても出てこないことあるでしょ?それだったら先人の知恵を頼るってのも手だよねー!」
「はぁ。強引な人だ」
「そーお?」
とぼけた様子で返す。
溜息前回のスノーちゃんは仕方ないというか、それにしては何処か嬉しそうに口元をにやけさせ私にフレンド申請を送ってきた。
「わかった。これが私のIDだ。それから一つ忠告だ。私のことはスノーと呼べ。いいな」
「如何して?私呼んでるよね、スノーちゃんって」
「そこだ」
「ふぇっ?」
意味が分からない。
困惑する私にスノーちゃんは付け加えた。
「私は仲のいい相手から敬称を付けられて呼ばれることが一番嫌いなんだ。わかったか」
「敬称って……」
「“さん”とか“くん”。それから“ちゃん”もそうだ」
「そっか。だから怒ってたんだ。でもどうして?仲のいい子の間でも“ちゃん”付けすると思うけど?」
「私はそれが嫌いなだけだ。いいな」
「うん分かった。すのーちゃ……」
その瞬間私の喉元に鎌が突き付けられた。
どおどお。流石に凝りま流石に
「わかったから。鎌を下ろして、スノー」
「わかればいい。ちなみにリアルで本名を口にする時も、呼び捨てで頼む」
「リアルで?」
「ああ。私は今日は別だが、パーティーを組む気はない」
パーティーとは一種のグループみたいなもので、仲間同士で助け合ってともに協力していくものだ。
ギルドっていうそれよりも大きなチームもありけど、最初はパーティーからだった。
パーティーだ仲良くなって同じギルドに入ったり作ったりする。それ定番だった。
「どうして組んでくれないの?私今から誘おうと思ってたのに」
「私は基本ソロだ。協力はするが馴れ合いはしてこなかった」
「馴れ合いって」
「私は友人を作るのが昔から苦手だ。だから今まで一人でやって来た。だから私は一つのルールを作った」
「ルールって?」
私は尋ねる。
するとスノーは答えた。
「リアルで私を捕まえられたら、パーティーに入ってもいい」
「なにそのちょっと怪しい台詞」
含みのある言い回しで気になった。
しかし本人は首を横に振る。
「そんなことはない。私をリアルで見つけられたらパーティーに入る。それが条件だ」
「条件になってないよ。そんなの普通見つかんないって」
「だからだ。無理だから私はそんな枷をつけた。悪い?」
「悪くはないけど……うーん、でも諦めないよ私!」
「えっ?!」
スノーは驚いた様子で私の顔を見た。
私はまじまじと答える。
「折角会えたんだもん。きっといつか会えるよ。あっ、そうだ!今度私のリアルの友達がこっちに来るんだけどその時は一緒に遊ぼうね!」
「マナの友達?」
「うん。すっごい元気な子だよ!」
「元気すぎても困るが、まあいい。わかった。ただし私を捕まえられたらな」
「うん!絶対だよ」
私はこうしてスノーと出会った。
それからスノーと古城跡を探索して回り、お互いの腕を磨き合った。スノーは何でも使えるらしく、魔法は見せてくれなかったけど弓の腕前と大鎌の接近戦は目を見張るものがあった。
そんなこんなで私達は遊びまくり、街に戻る。
「結構やったね!」
「ああ。思った以上にいい成果だった」
「えへへ。やっぱり二人だとはやいよね」
「マナの友人が加われば三人になってより効率が上がる」
「効率厨って奴?」
「私が?いや、違うが」
そんな感じでそっけない態度ばっかりだけどそこがまた可愛かった。
そんな感じで街に戻ってくると、何故かいろんな人達からの視線が飛び交う。何処かおかしなところでもあるのだろうか?
「ねえスノー、何かいろんな人達がこっち見て来てるけど?」
「気にしなくていい」
「気になるよ」
「はぁー」
スノーは溜息を吐く。
そしてじろっと目線を向けた。視線が消えた。睨みつけたのだ。
「スノー……」
「これからは気にしなくていい」
「う、うん」
そんなこんなで私達は街に戻り、それぞれ別行動になった。
私はログアウトしたのでその後は知らないが、多分スノーはもう少し遊んでいたのだろう。