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■77 虎、来る

この数話のエピソードが繋がります。

 その日のうち。

 私がギルドホームに行くと、皆んな集まっていました。


「皆んなこんばんは」

「ばんはー」


 ちなっちが片手を上げて返答する。

 スノーは相変わらずの様子でホイッと手をさっと上げては、紅茶を飲んでいた。

 それからKatanaに至っては武器の手入れをしている。気合十分と言った具合だった。まあ、別にこれからすぐにでも戦うような相手はいないんだけどね。


「ねぇねぇ皆んな。聞いてよ!」

「なんだ」


 最初に食い付いたのはスノーだった。

 スノーは食い気味に尋ねる。


「今日ね、リアルでタイガーに会ったよ」

「本当か」

「うん!仲間になってくれるみたい。もうすぐ来るって言ってたよ」

「そうか」


 スノーは本当に相変わらずの返答っぷりだった。

 でも少し口角が上がり、目を落とした時に見せた視線が穏やかだったのを私は見逃さなかった。

 こう言うことに関しては私はちょっとだけ皆んなよりも上手いらしい。まあ、上手い下手とかわかんないだけどね。


「でもこれでやっと五人かー。なんだかギルドっぽくなってきたねー」

「うん!」


 ちなっちの意見には賛同する。

 何だか賑やかで楽しい。私はそう思う。

 皆んな個性的だし、カッコいいし。私にはもったいないぐらいの大切な友達だった。

 まったりムードの中、ギルドホームの扉を叩く音がした。


「おーい、来たぞー」


 それはタイガーの声だった。

 タイガー曰く、これからもキャラ付けは続けるらしい。そして如何やら初めてキャラブレを起こして、そのことに気付いたのも私達だったらしい。

 そのことを、後から聞くことになるのだがまあここで銘打っておく。


「タイガーだ!いいよ、入ってきて」

「おう」


 タイガーはそう言いながら扉を開けた。

 そしてそこに現れたのはタイガーの姿。真っ白な髪。虎のような鋭い眼光は琥珀色。

 白くて長いマフラーを巻き付け、私と同じで動きやすい軽装だ。コートの分があるので、私よりもだいぶ身軽だったけどね。


「ちわっち!やっほー、タイガー!」

「あん?なんだ、その挨拶」

「これが私なりのこっちでの挨拶なの。改めてよろしくね、私はちなっち!南千夏だよ!」

「南さんですか……」


 瞬時にリアルの彼女と同じに戻る。

 リアルの話題だったり復唱する時は本性に戻るのもタイガーらしい。


「千夏でいいよ!」

「千夏さん」

「ちゃんでもいいよー」

「じゃ、じゃあ千夏ちゃん」


 まだぎこちない感じだけどこれから慣れていけばいい。

 そうこうしている間に、次はスノーの番らしい。


「私はスノーだ。ノース・アレクシア・高坂。それが本名だ」

「ノースちゃん(・・・)?」

「おい!」

「ひいっ!」


 タイガーが完全に弱気モードだ。

 一方のスノーはいつもの妙な癖が発症している。

 ピリピリした雰囲気が伝わってきた。


「スノー、そんなに怒らなくてもいいでしょ?タイガーはまだ知らないんだから」

「し、知らない?」

「ああそうだったな。いいか、私は友人から敬称で呼ばれたくないんだ。わかったな」

「え、で、でも……」

「わかったな」

「ううっ。の、ノース……やっぱり無理だよ!私はノースちゃんって呼ぶから!」


 タイガーはここで宣言した。

 それは固い決意のような感じで、スノーもこれ以上言うことはなかった。


「仕方ないか」

「ご、ごめんね」

「構わない」


 スノーはすぐに撤退した。

 私はそれを聞いて一つ思う。


「じゃあ私もノースちゃんって」

「マナは駄目だ」

「えっ、なんで!?」


 途中まで言いかけたところでスノーは押し留めた。

 すぐさま疑問が湧くが、スノーは何も言ってこなかった。それどころか、次の話題に切り替える模様だ。


「とにかく、これでギルドメンバーは五人になったな」

「そうだね!それで今日は何をするの?」


 私は尋ねる。

 スノーはそれに対して少し考え込む様子だ。


「正直な話、〈リムルト〉周辺でやるべきことはほとんどやったからな」

「だったらー適当に今日はモンスター倒しに行こうぜー」


 ちなっちはそう提案する。

 確かに最近マンネリ化してきたのは私も感じていた。

 別にやることがないとかじゃない。

 見つけようと思えば新しいクエストにだって引っかかる。けど、戦闘と採取しか基本的にやっていないからか、そんな運びにはならなかった。

 だからそこにタイガーが新しく提案した。


「だったらよ、ちょっと強めなモンスターでも倒そうぜ!」

「ボス戦的なやつ?」

「そう言うことだ」


 タイガーからの提案は直接的だった。

 ここで気合を入れ直すのと、自分を含めた連携の取り方の兼ね合いも考慮しての算段らしい。


「ボス戦か。確かに〈リムルト〉周辺にも一つあるが……」

「スノー、私やりたい!」


 机をバンと叩く。


「ボス戦とかカッコいいよ!私はやりたいなー!」

「そうだな。今のところ、イベント機会もないらしい。次の街(・・・)を目指す前に挑戦するのも悪くないな」


 スノーも色々計算してくれた。

 その末、答えを出した。


「そうだね。ボス戦、悪くはない」

「やった!」

「ただし、だ。まずは準備をすること。それから……」


 スノーの資産がタイガーに移る。


「タイガーを加えた連携を上等かする方を優先だ」


 そう発するスノー。

 そのことは皆んな頭の片隅に置いていたようなので、私達の今日の予定は連携を取ることとなった。

 とりあえず今日やることが決まり、いつも通り準備を整えているとKatanaはふとタイダーに声をかけていた。


「よかったですね、タイガーさん」

「ああ」


 あれ?

 私はそこで不思議に思った。Katanaとタイガーが妙に親しげだったからだ。


「Katana、タイガー?二人とも仲良いね」

「そうですね。とは言いましても、友人となったのは最近なのですが」

「ああ。なんたって、同じ学校でクラスメイトだったからな」

「えっ?」


 何だろ。

 さらさらと流れていく新事実達。その掴み所のない様に私の思考は追いつかなかった。


「ホント?」

「ええ。間違いありませんよ」

「タイガーも?私と喫茶店で会うよりも早く?」

「おう!」


 えっとですねー。これはですねー……


(む、無駄手間じゃん!)


 そのままぎこちない笑顔で固まってしまった私。

 だけど二人はそんなこと気づく様子一切ないのでした。とほほ……。



評価してくれると嬉しい。

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