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■74 刀香の日々①

今回は珍しく刀香パート。

 私はその日、彼女と出会った。

 いや、前から出会っていたのですが改めて(・・・)出会ったのです。



「おはようございます」

「あっ、龍蒼寺さんおはよう!」

「はい間宮さん、おはようございます」

「龍蒼寺さん、はいコレ。昨日預かってたプリント」

「ありがとうございます。一ノ井さん」

「ううん。ごめんね、手伝ってもらっちゃって」

「いえ、昨日は特に用事はなかったので大丈夫ですよ」

「本当ありがと、龍蒼寺さん!」


 私は朝からこんな感じでした。

 皆さんとても優しいですし、頼りにもしてくれて私も頼りになる。そんな良きクラスメイト達に囲まれていました。


「おーい龍蒼寺、ハンカチ落としたぞー」

「あっ、すみません」

「いいって、んじゃな」


 私はハンカチを受け取りました。


「龍蒼寺さん、さっき保健室委員の人が呼んでいましたよ」

「わかりました」

「またあの先生は倒れられたのですか?貴女も大変ですね」

「いえ、大した問題ではありませんよ」


 こんな感じです。

 と言うことで私の日々は目まぐるしくことが起こるのではなく、私の捌ける範囲でことごとく何かしらの問題(トラブル)が発生することがあるのですが、ここ〈緑峰高校〉では生徒数もかなり多いので、個性が詰まっています。

 それらの問題にも適任者が自主的に解決にあたれる。

 それがこの学校の良いところなのだと私も思うのです。


「あっ、そうだそうだ。龍蒼寺さん。今日数学の課題の提出日なんだけど。今出せる?」

「数学ですか?はい。もちろんやって来ていますよ」

「龍蒼寺さんはやってるよね。私、先生のとこ持って行かないといけないから」

「わかりました。では、こちらを」


 そう言いながら私は課題のノートを係の人に手渡します。

 もう既に大半のクラスメイトのノートを集めているようでしたが、まだ何人か集まっていないようです。

 それを見た私も少しはお力添え出来ないかと思い、周りを見回していると教室の端、窓際の席でノートを握りしめている子を見つけてしまいました。


(あの方は……)


 確かクラスでもあまり交流のない方です。

 如何したのでしょう?何故ノートを提出しないのでしょうか?確か私が記憶している限りでは、成績優秀者だったはずです。

 クラスでは確かにあまり目立っていない印象ではありますが、クラスの人から忘れられているわけではありません。現に今もノートの提出を促されています。

 ですが、その動きは挙動不審というもので自ら距離を置こうと必死になっているのが見て取れます。


(愛佳さんなら、ここで自分から話しかけに行くでしょうね)


 私はそう考えます。

 ですから私もその意向に感化され、彼女に声をかけるのでした。


「西さん」

「えっ、は、はい!」


 彼女は私の声を聞くと驚いたように立ち上がります。

 しかしそれがクラスの皆さんの注目を一堂に集めてしまいました。

 顔を真っ赤にしています。


「落ち着いてください。ノートを提出して欲しいそうなのですが、渡してあげてはいただけないでしょうか?」

「えっと、こ、コレですよね。はい、すみません」


 そう言って係の人に手渡します。

 すると係の生徒は「気にしないでいいよ」と気さくに声を預けました。

 西さんはやり遂げると瞬時に着席してしまいます。まだ顔は赤いままでしたが。


(この方のこの挙動……もしかしたらなのですが)



 昼時。

 ちょうど授業が終わり、チャイムが鳴りました。

 それと同時にです。

 背後の扉を誰かが勢いよく駆け抜けていくのが気配と足音でわかりました。そしてこの気配と歩幅から発せられる音は彼女のものです。

 私は少し話がしたくなり、彼女の後を追いました。


「はぁー」

「溜息ですか?」

「えっ!?」


 そこは屋上です。

 ここ〈緑峰高校〉は屋上があります。

 本来立ち入り禁止にされていて、昔の建築物を改築したものなので当時のまま放置されているので鍵も壊れているのですが、少し工夫すれば開きます。

 それを知っている人はごく僅かでしょうがね。

 そしてそこにいたのは……


「西さん」

「龍、蒼寺さん?」


 そこにいたのは西大河さんです。

 彼女は屋上の端で弁当箱を片手に昼食を摂っています。


「隣いいでしょうか?」

「えっ、う、うん」

「ありがとうございます」


 私は礼をしてから隣に座りました。

 しかし私が隣に来た途端、西さんは少し距離を取ります。


「西さん?」

「えっ、そ、その……」

「距離を取られる理由はなぜでしょうか?やはり、私は邪魔でしたでしょうか?」

「そ、そんなことないよ。ただ……」

「ただなんでしょうか?」

「ううっ……」


 西さんはおどおどしています。

 この感覚はやはり……


「西さん。いえ、タイガーさん」

「にゃはぁ!」


 不思議な声を出しています。

 この突飛な悲鳴はやはり私の知るタイガーで間違いありませんね。


「た、タイガー?」

「はいそうですよ。貴女はやはりタイガーさんのようですね」

「ど、どういうこと?」


 西さんは首を滑らかに曲げます。

 そんな彼女に私は伝えます。


「申し遅れました。私はKatanaと申します」


 すると西さんの顔色は次第に曇っていきました。

 何故か。その理由は明確で、今あの時遭遇したプレイヤーがそこに姿を現したからでしょうね。


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