■71 当たり付き自販機
予約投稿です。
今回は日常回。
別の日。
私と千夏ちゃんは一緒に帰っていた。
昨日は〈WOL〉で色々あった。
「うわぁー、暑ぃ。いやー、暑いねー」
千夏ちゃんはぼやいた。
確かに今日はいつもより少し暑い気がする。
まあもう夏なので当然と言えば当然だし、そうでなかったらおかしい。
「確かにちょっと暑いよね」
「あー、駄目。喉乾いたー」
「お茶飲む?」
「ん?いいや、いいよー。だって、ほら!」
「えっ?」
千夏ちゃんな指を指す。
そこにあったのは白い大きな箱。
そんな古臭い例えしなくてもわかると思うけど、まあ自動販売機だった。
「あそこで買うからいいよー」
「そっか」
私もあっさりさっぱりスルーすると、千夏ちゃんは自販機を前にしてポケットから財布を取り出した。
そう言えば今更だけど、うちの高校とノースの通う高校では制服がまるで違う。
うちは男子は学生服だけど、女子はブレザーだ。ブレザーと言ってもネクタイではなくリボンで色は赤い。夏服は真逆で制服は白くなる。ちょっと変わった学校だ。
逆にノースの学校は冬服の色味は深緑の制服。
垂れ下がったリボンが特徴的だった。
って、なんの話ししてんだろ私。
「コーラでいいか」
「炭酸飲むの?」
「ああ」
ガチャリン。ガチャリン。
百円玉達が投入口に入れられる。
ゴトン!
ちょっとした物音を立てて商品が落ちた。
すると……
「おっ、回った!」
千夏ちゃんはそう言った。
見ればどうやらこの自販機当たり付きらしい。
クルクルクルと赤い点滅ランプが回る。だけど、如何やらハズレのようだった。
「ざんねーん!また買ってね!」
可愛らしい声。
「そう言えばさ愛佳」
「なに?」
「当たり付き自販機って、当たってことある?」
そんな質問をされた。
コーラのプルタブをプシュと開け、中身を一気に飲み干した。
「ぷはぁー!」
「珍しいね、千夏ちゃんの炭酸飲むなんて」
「そっかなー?で、で、愛佳はある?」
「うーん。何回か?」
私は思い出しながら答えた。
思い出しながらなので正確なことは言えないが、一、二回は当たったことがある。
でもそれでも確率は相当低いのもしれていた。
現に千夏ちゃんは今、その話をしてくる。
「マジでー!私、当たったことないよー」
「そ、そうなんだ。うーん、でもこう言うのって確率だよね?」
「まあな。って、確率ならなんパーセントぐらいあるんだろうねー」
「し、知らないよ。あっ、でもでもノースなら知ってるかも」
「あっ、確かに!愛佳、電話してみようぜ!」
「うん」
私はスマホを取り出してノースにかけた。
するとしばらくしてからノースは出てくれた。
「なんだ」
「あっ、ノース。少し聞きたいことあるんだけどいいかな?」
「ん?別に構わないが。急なことなのか?」
「ううん、違うよ」
「ならなんだ」
「えっとね、当たり付き自販機の当たる確率が知りたいって千夏ちゃんが……」
「そんなこといちいち電話して来なくてもネットで調べればいいだろ!それか、後でLONEで送ってこい」
「ご、ごめんね」
確かにその通りだ。
やっぱり昨日のことが刺さっているのかもしれない。
昨日のことというのはアレだ。タイガーの勧誘に失敗したことだ。
皆んなは了承してくれたけど、タイガーは首を縦に振らなかった。「俺は一人でいい」とか言ってそれっきり耳を傾けてもくれなかったのだ。
やっぱり私がしつこかったせいかなと後で反省した。
けど、私はまだ諦めてはいないのである。そう、私はしつこいのだ。
「はぁー、まあいい。結論から言えば2パーセントらしい」
「2パーセント?」
「ああ。あくまでもネットの海に転がる一つの考察と記事だがな。あくまでもそう唱えられている限りで、信じるのも信じないのも自由だ」
「そうなんだ」
「ただし、これはあくまでも五十本に一本は当たるらしいと言うもので確実じゃない。台によってはメーカーが確率をいじることで、システム的に一定数もしくは極端下げられている可能性だってある。まあこれも、あくまでも噂の産物なのは重々承知しろよ」
「うん。ありがと」
私はそう言って通話を切った。
そっか。そんなものなんだ。
じゃあ昨日のこともゲームだと捉えて確率だったことにしよ。そのうち上手くいく。私はそう思い込むことにした。
と言うわけで私も何か飲み物を買おうと思い、ポケットからお財布を取り出す。
お財布の中から小銭を取り出し、何を飲もうか選ぶ。
「何にしよっかなー」
お水にお茶に炭酸飲料。色々あるけど、私はスポーツドリンクにした。
暑いし熱中症対策にも効果的だしね。
ゴトン!と音を立てて落ちてきたペットポトルの飲料を手に取る。するとまた赤いランプが点灯して、回り始めた。
「おっ、今度は当たるかー?」
「どうだろうね。あっ、止まるよ」
赤ランプは点灯しながら回転した。
ゆっくりと音を立てながら止まり、そして……
「おめでとう!ボタンを押して、好きなものを取ってね!」
如何やら当たったみたいだ。
「当たったね」
「ま、マジかよ」
私は何となく千夏ちゃんの顔色を窺うと驚愕の表情を浮かべていた。
私はそんな千夏ちゃんを一瞥してから、適当に買うことにした。私のなったのはメロンソーダだ。
ゴトン!音を立てながら落ちてきた黄緑パッケージのソレを手に取りながらふと思う。
「そうだ!ねえねえ千夏ちゃん。確かノースもこの時間に帰ってたよね?」
「確かなー」
「コレ持っていこうよ!」
私はそう言ってメロンソーダを突き出した。
すると千夏ちゃんは瞬時に意図したことを悟ったのか了承する。
「OK!じゃあ行こうぜ」
「うん」
私と千夏ちゃんはノースが通りそうなあの橋の上を目指して走った。
とりあえず迷いや悩みは吹っ切れた。
洒落たことを言うなら炭酸の泡みたいに。的な感じで。なんかポイでしょ!そうでしょ、ねえ!




