■68 巨大ミミズ
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地中から姿を現したもの。
それは巨大なミミズだった。
「うわっ!」
「おっと!」
私とちなっちはそれぞれ〈雷光の長靴〉の力と【加速】で間一髪のところをギリギリ回避した。
「危なっ!間一髪だったねー」
「うん。でも、コレって……」
私の視界の先。
そこに映るのは……
「おっきなミミズだね」
「うん。こう言っちゃなんだけどさー、キモくない?」
「う、うん。言っちゃダメだけどね」
今私達が対峙しているこの巨大なミミズは全長10メートル近くあるんじゃないだろうか?
しかも色合いも現実のミミズのものとほとんど同じで褐色が良すぎて気持ち悪い。って、ミミズが好きな人には悪いけどね。客観的に見ても気持ち悪かった。
「ジャイアントアースワーム……長ったらしい名前だな」
「ですね。ですが、ミミズは土壌にとっては良い土を育んでくれる宝ですよ」
「それはそうだがコイツはモンスターだ。しかもどうやら……」
スノーが何か言っていた。
しかしジャイアントアースワームは私とちなっち目掛けて突っ込んでくる。目が見えないのだろうか?感覚と音をキャッチして向かってくる。その攻撃モーションも特殊で、単純に突っ込んでくるだけの一点張りだった。
「おっと!」
「うわぁー!」
私とちなっちばかり狙ってくるジャイアントアースワームはやっぱり突撃してくるだけだった。
しかしその圧倒的な巨体の前に、私達は逃げ続ける他なかった。
「うわぁ!ちょっと!二人共見てないで助けてよ!」
「そうしたいのは山々なのですが……」
「こっちも狙いにくいんど」
スノーはそう言い放つ。
確かにスノーは大鎌から弓に持ち替え狙いを定めている。
しかしその圧倒的な巨体の前には単純な弓矢での一撃は効果ないと見て弱点を探しているようだった。
(二人が駄目なんじゃもう私とちなっちで打開策を見出すしかないよね)
そう考える。
「ちなっち!とりあえず逃げてばっかりじゃ疲れちゃうから、なんとか攻撃してみよ!」
「OK!じゃあまずは私から行くぜー!」
ちなっちは〈赫灼相翼〉を抜くとワイヤーを上手く利用して剣の側面を叩きつけた。
しかしジャイアントアースワームはまるで痛みを感じていないのか、びくともしない。それどころか逆に体勢を崩したちなっちを狙うように襲いかかるのだがちなっちはそれすらも利用して躱す。
しかしそれだけではない。
私の体を支えるようにして抱き寄せてその場を離脱した。
「おっと!」
ちなっちはスノー達の元に着くと私を下す。
「ありがとちなっち」
「いいっていいって。そんなことより、どうするのー?」
「どうもこうもない。こうなると逃げるか、倒すか」
「やろ。どうせ逃げてもあのモンスターは音を感知して襲ってくるみたいだから」
「音?そうか。なら話は早い」
スノーはそう告げる。
何か策があるのだろうか?って、私がそんなの聞いても上手く動けるわけないけどね。
「まあマナが作戦通り確実に動くとも考え難い」
「ひ、酷い!」
「まあ簡単なものだ。コレを投げつける」
「それって?」
スノーが取り出したのは変な丸い球だった。
手に収まる程度の小さなもので、手榴弾みたいな形をしている。ちゃんとピンも付いていてまさにそれっぽい。
「それなに?」
「音爆弾。酸素と水素を特定の割合で混ぜた混合気体で爆発するやつだ。爆鳴気とも呼ばれることもあるが、それを元にして私なりにアレンジして作ったものだ。とは言っても、使っているのはモンスターの鳴き袋におんなじ容量で混合気体を閉じ込めたものだがな」
「うーん、わかんない」
「わからなくていい。とにかく投げるぞ、耳を塞げ。吹き飛ぶぞ」
「「「えっ!?」」」
パンを外してスノーは手榴弾型の音爆弾を投げつけた。
地面に転がるとコロンと音を奏で、そしてーー
パァーーーーーン!!
私達は全員耳を塞いだ。
それでも微かに音が聞こえていた。だけどなんだろう。すっごく変な感じだ。
しかしジャイアントアースワームには如何やら効果的面らしい。
「す、凄い!ジャイアントアースワーム、こっちに気付いてないよ!」
「当然だ。とにかく今のうちに叩くぞ!」
「よーし!じゃあまずは私から行くねー!」
ちなっちはグッと歯を噛み締めた。
息をしっかり溜め込んで、突撃する。多分聴覚感覚を麻痺しないようにするためだろう。
「せーのっ!」
ちなっちは片手ずつ握り込む〈赫灼相翼〉をジャイアントアースワームに突き刺した。
よろめくようにジャイアントアースワームは苦しむが、さらにはそれに加えスノーが弓矢を放つ。
無言で射続けるその機械的な動きにもゆっくり着実に起動と狙いを集中的に変更する。
「龍蒼寺流剣術。陸ノ型辻風!」
Katanaも衝撃波の刃で応戦する。
私もそれに倣って〈波状の白星〉を抜いた。
「行くよー!」
大振りで放つ衝撃波の刃はKatanaの放った衝撃波と混ざり合い強力な一撃に成り代わった。
そんな一撃はジャイアントアースワームに多大なダメージを与えたように見える。しかしまだ倒れない。今はのたうち回っているが、その内猛攻を仕掛けてくるだろう。
だったらここで倒す!
「ちなっちが二刀流なら、私もやるぞー!」
「待てマナ!」
スノーが叫ぶ。
しかし私は重さも長さも全く違う二つの剣を同時に振るった。
しかし二刀流には慣れていなかったので、すぐに転けてしまう。
「うわぁっ!?」
盛大に転んでしまった。
それは丁度音爆弾の効果が切れるタイミングだったらしく、運悪くジャイアントアースワームは私の方に向かって襲って来た。
「あれ、ヤバい?これ」
「マナ!」
ちなっちが叫ぶ。
彼女は【加速】を行使するが、狂ったように突撃してくるジャイアントアースワームの巨体と速度には敵わなかった。私も今さっき〈雷光の長靴〉の力を使ってしまったのでそんなに速くは逃げられなかった。【幸運】スキルも何故か発動せず絶体絶命のピンチ……かと思われたその時だった。
「せやはっ!」
私の視界に黒い影が映る。
人の形をした影だ。そしてそれは私前に盾のように立ち塞がると、ジャイアントアースワーム目掛けて拳を振るうモーションを見せるのだった。
(いや、誰ですか?)
そう思う私を背にしていた。




