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■67 久々の草原で

もう少しで2章(最初の街編)が終わるかも。

 7月も半ば。

 私達は今日も今日とて〈ライフ〉に広がるエリアの一つ、草原エリアに来ていた。

 ここは一面を綺麗な若葉色をした草が綺麗に生え揃っている。さらには奥の方を見てみると深い色味をした木々が生い茂る。何だろ。これまた草原って感じがするのは私だけだろうか?


「なんか草原らしいねー」


 と思っていたがちなっちも同感らしい。

 確かにこの景色を見たらそう思うだろう。それにしても静かだ。本来ならモンスターの一匹や二匹いてもおかしくないはずなのに、涼しい風が吹いているだけで敵の姿は一切なかった。


「静かだね」

「ああ。妙にな」


 スノーもそう言うぐらいだ。

 それにしてもこの風は気持ちいい。今日はちょっと違う草原に来ている。

 今私達がいるのは〈スウェイト草原〉。地形的な関係か、涼しくて過ごしやすい風が常に吹き続けているのがこのエリアの特徴にある。それ故に草原に生える草も少しだけ背が高いのだ。


「そう言えばさ、今日はここに何しに来たのさ」

「特に予定はない」


 ちなっちの質問をバッサリ切り捨てたスノー。

 そうなのだ。今回、私達は何か目的があって来たわけではない。ただ単純に面白そうな場所とか変わった場所はないかと思って来ただけなのだ。


「まあいいじゃん!こんな風にモンスターがいないのも」

「そうですね。確かにここなら安心して休めそうです」

「確かにな。トレーニングには使えそうだな」


 と言うわけで今日はまったりすることにするのでした。



「ふぅあー、でもホントに静かだねー」


 私は独り言を吐いた。


「ホントホント。こんなに静かだとは思わなかったよなー」

「うん。それにしてもこの辺りにモンスターとかって普通たのかな?」

「どう言うこと?」


 ちなっちが聞き返す。


「だってさ、こんなモンスターがいないエリアが無人って普通なのかな?普通こう言う場所ってスノーが言う“旨み”はないかもだけだ、休憩には使えるんじゃないの?」

「あっそう言えば確かに!もしかしたら、ホントは近くにいるのかもね、モンスター」


 ちなっちのフラグ的発言。

 私はそれに引っかかってしまった。


「ちょっとちなっち!フラグとかやめてよね!」

「あっ、ごめんごめん。でも、こんなのがフラグになったりなんて……」

「するだろうな」

「「えっ!?」」


 スノーが立ち上がりそう言った。

 その手には大鎌が握られていた。


「スノーどうしたの?武器なんて持って」

「気づかないかな?」

「えっ?」


 私は首を傾げる。

 しかし奥の方を見てみればKatanaが刀を構えている。

 そのただならぬ様子に私も警戒態勢に入ったのだが、それとほぼ同時。地面がガタガタと揺れ始めた。


「えっ、なに!?地震!」

「いや違うな」

「えっ!?」


 スノーは即答した。

 私とちなっちは背中合わせになって警戒を最大限MAXにする。


「ちなっち、これヤバそうだよ!」

「うんうん。まあそれはわかってるんだけどねー。で、スノー敵は?」

「既に私達に近づいている」

「えっ!?」

「地下です。敵は……」

「「地下!」」


 私とちなっちは慌てた。

 私とちなっちが下を向くと同時にゴゴゴと言う音に変化し加速する。

 そして真下から現れたのはーー


 ◇◇◇


 それにしても、こんなにまったり過ごしていいのか。

 私は深くそう考えていた。

 自然と周囲を警戒しながら、大鎌である私の愛武器〈黒夜の大鎌〉を手入れする。


「ふぅ」

「良い武器ですね」

「ん?」


 ゆっくり刃先を手入れする私に声をかけたのはKatanaだった。


「手入れもよくされています。本当に良い武器です」

「コレか?確かにコイツは私がまだこのゲームをやりたての頃に手に入れたものだからな。相棒みたいなものだ」

「思い入れが強いんですね。ちなみにどのような経緯だったかお伺いしても?」

「簡単にならな」

「構いません」

「そうか。ならどこから話すか。簡潔にわかりやすく。あれは私がまだレベル10の頃だった。私は黒夜天ナインテールと戦っていた。レベルは55。到底私が勝てるような相手じゃない……はずだった」

「はずだった。と言うことは倒したのですが、お一人で」

「まあな」


 私はあの時のことを懐かしく思う。

 別にあのモンスターを倒すことが目的じゃなかった。ただ面白そうだったからやっただけだ。

 周到に用意した罠を張り巡らせナインテールの翼をもぎ、九つある尻尾を一つ一つはたき落とす。そうすることで敵の弱点である赤い尾が出現し、低レベルの私でさえ容易に倒すことが出来た。

 その時手に入った素材を適当な鍛治師に手渡して完成したものが、コイツだ。


「あの時、誰がコイツを作ったのかは知らないがコレだけのものだ。かなりいい奴だったんだろうな」

「相手のことを知らなかったのですか?」

「ああ。売り物として適当に投げたら、勝手に帰って来たんだ」

「巡り合わせと言うことでしょうね」


 Katanaは楽観的にそうは言うが、最も私としては不思議で仕方なかった。

 何故手放したものが、しかもなんの脈絡もなく私の手元に戻ってくると言うのだ。システムのバグか、あるいは仕組まれていたことなのかどちらにせよ、難しい話ではない。奇妙な話と捉えるべき事柄だった。


「不思議なこと、か。……ん?」

「どうなされたのですか?」


 私は地面に軽く手が触れた。

 変な感覚があった。妙な声を出してしまいKatanaが反応する。


「今、振動がなかったか?」

「振動ですか?地震でしょうか?」

「いや……」


 私はもう一度地面に触れてみる。

 微かにだが振動をキャッチした。神経を集中させ、より細かく感じ取る。振動の脈がゆったりゆったりではあるが、着実に近づいてきている。近づいたり遠のいたり。まばらにだがかなり長い振動が短いスパンで起こる。


(マナ達は……気づいてないか)


 チラッとマナ達の方を見るがまるで気づいていなかった。

 それにKatanaが何事もなさげな対応をしていることからこれは自信じゃない。それは確信した。


(となるとこれはなんだ……考えられる線は……はっ!?)


 私は瞬時に立ち上がる。

 その慌ただしい動きにいち早く気づきたKatanaは何事かと言う反応を見せるが、その手にはしっかりと刀の柄に手を添えられていた。


「どうしましたか、スノーさん?」

「どうやら私達はまんまとや何ハマったらしい」

「罠ですか?しかし他のプレイヤーの姿は……」

「違う!この地形自体が罠なんだ。つまり敵は地下にいる!」

「地下ですか?」

「ああ。地下に生息するモンスター。ソイツが今ここにいる」


 私はそう伝えたのだった。

 

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